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紙の本
北村薫の最高作
2014/01/19 17:27
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sakura - この投稿者のレビュー一覧を見る
北村薫の文章がとても心地よく、都さんを中心とした登場人物の設定も、日常の謎解きも素晴らしかった。
お酒のうんちくもバランスよく入っていて、ストーリーのよい脇役になっている。
読んでいて何度も声を出してわらってしまうくらいユーモアもある。
紙の本
酒の席の数だけ、物語が生まれる
2023/09/30 15:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あお - この投稿者のレビュー一覧を見る
出版社に勤める酒飲み編集女子・小酒井都を主人公に、これまた酒好きの登場人物たちとのやりとりから生まれる物語を描いた12編からなる連作短編集。全体的にコミカルなタッチで、酒の席にまつわるあれやこれやのエピソードが満載だ。実はこの本、5-6年前に一度読んでそれっきりだったのだが、今回訳あって再読するに至った。言いたいことが山ほどあるが、その中でも二つの短編に厳選したい。
4.指輪物語
仕事ができ、人当たりもいい、おまけにイケメンと三拍子揃った文庫部署の社員・池井が同業他社の社員と結婚した。その祝いの席の幹事を務めたのが≪文ネエ≫こと瀬戸口まりえ。池井の二つ年上で、同じ部署で長いこと彼とともに阿吽の呼吸で業績を上げてきた。その席に都も参加することになる。
まりえは酒が進むごとに池井に絡む。馴れ初めを語る会話に交ざってその細部に至るまで暴露したり、携帯に入った新妻の写真を晒させたり。しまいには、池井の嵌めていた結婚指輪を借りて自分の指に嵌めてみたりする。そして彼女はすっと席を外した…。
百歩間違えたら、自分のものになる世界があったかもしれない。そう思うほど、どうしようもなく手に入らないものを目の前にして、それを祭り上げる、元より自分の手は届かないのだと言い聞かせようとする。そういうことはないだろうか。一方で、≪自分は他人よりも、この人のことをこれだけ知っているのだ≫と、せめて限られた中でも優位に立ちたい気持ちの表れのようにも思う。その板挟みで苦しくなる。
都から見ると、「どちらかというと文ネエは完璧主義者だ。自分のミスなど、気取られたくない方だ」。まりえは学生の頃の失恋ですら、素面では人に話したことはなかったのだろう。
そして、池井が≪小せえ奴≫ではなく、大切なものを≪お釈迦に≫されてもおおらかに受け止める度量があるところが、この場合余計に辛い。前章では都が、私的な飲み会に経費を使いまくる先輩の高級ブランドバッグを酔った勢いでだめにしてしまうエピソードがあるが、ここに繋がるとは思いもよらず、いくらか戦慄した。
「文ネエの指に、池井の指輪は嵌まらない」
この一文ですでに読者のライフは限りなく0に近くなっていると思う。恐るべし、北村先生。
6.コンジョ・ナシ
まりえの学生時代の友人が、バリバリ働いていた証券会社を辞めて医師と結婚しニューヨークに移住するという。他の友人三人とともにこれまたお祝いをすることになった。その席で酒の入った件の友人は、「この中でわたしが一番幸せだ」と口にする。それに残りの四人がカチンとくる。
個人的に初読の折は、正直この発言の何がいけないのだろうと思った。自分の子どもやペットのことを理屈なしに世界で一番かわいいと思うのと同じ種類のもののように思ったのだ。そして、その後登場する月形の発言には全面賛成した。まあ、今回再読した時にこの一文に出会った時は、ちょっと嫌な気分にはなった。それでも月形の「結局、やっかみじゃないんですか」という発言への共感はなくならない。友達内で比較するのが許せない、ステレオタイプな価値観が見え隠れしている、とまりえは言うけれど、人間はどうしたって互いを比較すると思う。徹底的に社会的な生き物だからこそだと、『バカと無知』(橘玲著、新潮新書)にもある。何より、そのようなネガティブな反応を示していることこそ、自身が≪ステレオタイプな価値観による比較≫から完全に自由になれていないことの証左ではないかと、自分には思える。
そして傍観者の都が感じた哀しさは、人の繋がりの中にそういった人間の性が否応なく垣間見えること…ではないか。
紙の本
女性を描くのがうまいなあ
2018/05/31 20:23
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
酒好きの女性編集者を主人公にした『飲めば都』(これって、住めば都のもじりですよね)は、北村薫のワーキングガール小説。
女の世界を描いているので、女性作家の作品のような気分で読んでしまうのですが、北村薫は、れっきとしたおじさん。
私も、この人の作品を読み始めた頃は「薫」って男か女かどっちだろうと思いながら読んでましたが、 わかってても錯覚するぐらい、女性を描くのがうまいなあ。