紙の本
新年早々暗い気持ち…
2019/01/11 13:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コアラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
年末に八重洲ブックセンターに行ったら「勝谷誠彦追悼コーナー」があったので買ってしまった。「解説」で百田尚樹氏が書いているように純文学の名作だ。読んでいて本当に気持ちが暗くなる。たぶん東海村の事故(バケツで核物質を混ぜたら臨海しちゃったという笑い話。笑い話でも現場の人は悲惨な死に方をした。)に触発されての作品と思うが,多くの人(いわゆるエリートね。現場にはいかない人たち)が笑い話にしていた中で,これだけの作品を紡ぎ出していたとは知らなかった。ほんとうに惜しい人を亡くしてしまった。そして現在,フクシマ(カタカナで書くとあのこととわかるらしい)を経験したわれわれにはより切実に感じられるはずだ。だから読んでいてすごく落ち込んでしまった(株価が下がって大損していることもありますが…)。しかし百田尚樹氏が指摘しているように読んで楽しい本ではないので「本屋大賞」は取れない。彼が指摘していないことを更に言ってしまえば芥川賞も取れない。だって名作なんだもの。読者を感動させるような作品は,つまらない小説ばかり書いている選者の嫉妬心をあおるだけ。だから途中で投げ出したくなるような作品しか芥川賞は取れない。英訳されたらノーベル賞は取れるかも。日本が無くなる話なら白人は大喜びでしょう。でも死んじゃったらもらえないか…。やはりなんとしても長生きをしなければなりませんね。合掌。
紙の本
日本を大切の実感の仕方がわかる本
2017/07/30 08:01
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うさぎさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本における諸外国からの脅威を事実で表すと多くの説があり、解説が難しい。
本書は小説だ。だから、一方的に、ストーリーがつくられている。つまり、日本にこんな脅威があったとしたら、どうなるだろうと問題提起している。まったくの現実にないことではない。だからといって、大げさに書かれている。大げさに表現されることで、危機感を感じることができる。これぐらいの刺激剤がないと考えることをしない。日本を大切にしようと思う。
投稿元:
レビューを見る
2014/2/8 Amazonより届く。
2018/4/26〜4/28
原発事故で住めなくなった日本を脱出し、世界に離散した日本人を描く表題作の「ディアスポラ」、また汚染後の日本に留まり、目前のやるべきことをやり続ける人々を描く「水のゆくえ」。勝谷さんのロマンチストの一面が色濃く出た純文学。百田さんの解説も面白い。
投稿元:
レビューを見る
【日本人とは何者か? 比類なき予言の書】“あの事故”で国土を失い、世界各地の難民キャンプで暮らす日本人。確かな情報も希望もなき異邦の地で「日本人として」生きる人々。
投稿元:
レビューを見る
3
原発の事故で日本に住めなくなり民族離散(ディアスポラ)した話。チベットの難民キャンプと被曝しながら日本に残った人達の二本立て。生活に民族としての苦悩やその生活の中での苦悩が描かれている。百田尚樹の解説によると、純文学で売れないらしい。話に救いがなく読みやすいわけではない。
投稿元:
レビューを見る
コーマック・マッカーシー「ザ・ロード」に負けない日本の文学。スケールも大きいし悲しみもかけています。テレビの印象があるのかもしれないけれど置いて読んでほしいな。質の高い文学作品だと思います。日常についていろいろ思ったり日本酒が飲みたくなったり原発の向こう側の作品です。福島原発事故前に書かれた作品で踏まえて書いてない中で、これを書いたのはすごいなと思う。ただ、そういうの抜きにして日本に住んでいる文学好きには多く手に取ってほしい作品。
投稿元:
レビューを見る
入院した身内の見舞いに行ったら長時間待つ羽目になったので、待合の「院内文庫」にあった本のうちこれを手に取ってみた。チベットの地の鮮やかな描写に惹き込まれてよくわからないままに読み進めると、設定が次第に明らかになってくる。
原発事故で日本の全土が居住不能レベルに汚染されたとしたら―この作品は小説の形をとった思考実験なのである。
表題作はディアスポラ(撒き散らされた者)となりチベットの地に難民として暮らす日本人、同時収録作「水のゆくえ」はダム建設予定地だったとある地に残留する村人が仮定されている。
こんないい小説なのになぜあまり話題にならなかったのか不思議だなと思うくらい。著者のガラの悪さがために軽く見られてしまっているとしたらもったいない。それとも、著者は20年前の臨界事故に着想を得てこの作品を書いたらしいが3.11以降中途半端なリアリティになってしまったからだろうか・・・もっと読まれていい本だと思う。
P9 あの、日没時に分厚い大気を透過してやってくる夕日の叙情はこの地ではありえない。そのために万物は途方もなく長い影を持つ。
P71 ダライ・ラマはこの風の中にいる。土地にでもない、血統の中にでもない【中略】チベット人がいる限り、ダライ・ラマはその中に生まれる。そしてカイラスがあそこにあるように、風はなくならない。
P94 死ぬのに理由はいらない。しかし、死は理由なく訪れてきて、家族の永遠を断ち切るのだ。
投稿元:
レビューを見る
東日本大震災前に、原発事故を予言したかのような内容は、その事だけでも話題性があるだろうが、日本という国において原発事故をシミュレートした物語を創作するのは、そこまで奇跡的な事では無いような気もする。寧ろ、事故を切り口に中国やチベットの関係に絡めながら抜き出したトリミングが、勝谷さんならでは、だろうか。しかし、純文学に寄せている分、ノンフィクション性が薄れたのは勿体ない。