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人の「認識」と「思考」を実証的に科学した本。
体系的で、学術色も強くないため読みやすい。
この分野で土台になる一冊。
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プライミング効果やアンカリングが印象的。先行刺激やアンカーが無意識のうちに行動や判断に影響しているとは。知らず知らずのうちに自分も影響を受けていたのだなと思った。あと,物事に因果関係を見つけたがる性質も考えさせられた。
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人間の判断は概ね合理的で、強い情動(恐怖や愛情、憎悪)が絡むような場合に逸脱するとされてきたが、カーネマンらは人間の思考には本来的に系統的なエラーが入り込むものであることを示した。
とりわけタイプ1とよぶ速い思考に由来するヒューリスティックな判断や選択による誤りを扱っている。
システム1はバイアスがある。難しい問題を易しい問題に置き換えて答えようとするうえ、論理や統計はほとんど分かっていない。スイッチオフすることもできないため、例えば自分の国の言葉が画面上に出てきたりした場合は読まずにはいられない。意識して疑う、ということもそのレパートリーに入っていない。疑いを抱くためには相容れない解釈を同時に思い浮かべる必要があり、それには知的努力を必要とする、これはシステム2の守備範囲である。
システム2はシステム1を見張る役目ではあるが、例えば7つの数字を覚えておく、など認知的負荷の高い作業に忙殺されている時は誘惑に駆られやすかったり、利己的な選択、表面的な判断、などシステム1の影響が強くなる。システム2が他のことにかかりきりの時は、私たちはほとんど何でも信じてしまう
感情的な問題がからんでくると、システム1の批判者よりは擁護者になりやすい。気に入っているものの長所をあげて批判に抵抗したりする。
・認知容易性
注意を要するようなテストの問題を読みやすいフォント、読みにくいフォントの二種類で印刷すると、読みにくいフォントの方が成績が良かった。認知負担を感じたおかげでシステム2が動員されたため。
・ハロー効果
Forming impressions of personality (Asch, 1946)の実験では
アラン:頭がいい、勤勉、直情的、批判的、頑固、嫉妬深い
ベン:嫉妬深い、頑固、批判的、直情的、勤勉、頭がいい
の二人の印象が問われた。普通はアランの方に好感をもつ。頭がいい人が頑固なのは理由がある、とみなされるが、頑固な人が頭がいいのは一段と危険、と取られる。また、ハロー効果によって「頑固」は「頭が固い」とも「意志が強い」ともどちらでも解釈できるので、第一印象の文脈に合わせて解釈される。
人物描写の時にその人の特徴を示す言葉の並び順は適当に決められることが多いが、実際には順番が重要。
・置き換え
Priming and communication (Strack, 1988) の実験ではドイツの学生を対象に
あなたは最近どれぐらいしあわせですか?
あなたは先月何回デートしましたか?
と質問したが、デート回数と幸せの間には全く相関がなかった
しかし
あなたは先月何回デートしましたか?
あなたは最近どれぐらいしあわせですか?
と聞くと高い相関が見られた。しあわせという評価の難しい質問を恋愛ライフに置き換えたため
・少数の法則
小さいサンプルでの結果を過信しやすい
成績上位の学校は小さい規模のものが多く、過去には大きな学校を小さなものに分割することまで行なわれた。が、実際は小さい学校のほうがばらつきが大きいだけ。小さい学校の成績は平均を��回るわけではない。私たちはメッセージの内容に注意を奪われ、その信頼性を示す情報にはあまり注意しない。偶然の事象を因果関係で説明しようとすると必ずまちがう。
・アンカリング効果
世界で最も高いアメリカ杉は1200フィート(180)より高いでしょうか?低いでしょうか?
世界で最も高いアメリカ杉の高さはどれぐらいだと思いますか?
と聞かれる。アンカーは1200(高いアンカー)か180(低いアンカー)のどちらかが提示される。アンカーの差は1020。
高いアンカーを提示されたグループの平均は844フィート、低いアンカー群が282フィートで562フィートの差があった場合、アンカリング率は562/1020=55%となる。アンカーにそのまま沿った場合は100%、アンカーを完全に無視した場合は0%となるが、通常は55%程度になる。
アンカリング効果はかなり強力で、不動産業者の見積もる不動産価格や寄付の額(XXドル以上寄付するつもりがありますか?とか)などで影響が確かめられている。手がかりが全くないときに、わらをもつかむつもりでアンカーに寄せているのではなく、全くランダムに選ばれたアンカーだと分かっている場合でもアンカリング効果は見られる。
缶詰のセールの場合「お一人様12個まで」とすると平均7個売れ、「お一人様何個でも」という掲示の時の倍売れた。
・利用可能性ヒューリスティック
Ease of retrieval as information(Schwarz, 1991) の実験では
あなたが何かを強く主張した例を6つ書き出してください
次に、自分はどの程度自己主張が強いか、自己評価してください
と聞かれた。この質問の6つを12に増やした群と比較すると12のグループは自己主張が低いと評価した。こういう例は3−4個はすぐに浮かぶが12も思い出すのは難しいため。たやすく思い出せたという感覚の方が、思い出せる例の数よりも強力。
また、「自己評価をしなかった例を12書き出してください」と言われた群では自己主張が強い、と評価している。
UCLAのある教授は学生たちに講義の改良点を挙げさせた。この時、改善点を多く上げるように指示したクラスほど講義に高い評価をつけた
・平均回帰
フランシス・ゴルトンが見出した。
二種類の計測値の相関が完全でない(r=1でない)場合には必ず起こる。相関と回帰とは別々の概念ではなく、同じ概念を別の角度から見たにすぎない。
成績が悪くて叱責されると、次はよい成績になる
うつ状態の人にエネルギー飲料を飲ませるとよくなる
などは因果関係で説明されるべきでない。成績が悪い、うつ状態、など極端な集団が平均に回帰しただけ。確認するためにはきちんとコントロール群を置かないといけない
・妥当性の錯覚
私たちは過去についてつじつまの合った後講釈をする。今日、後知恵で説明がつくなら昨日予測できたはずだという直観を拭い去ることができない。過去を分かっているという錯覚が、未来を予測できるという過剰な自信を生む
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2002年に「プロスペクト理論」の研究により、ノーベル経済学賞を受賞したダニエルカーネマンの著作。行動経済学の始祖である著者のこれまでの研究成果が一通りわかる。
上巻では、早いが正確性に欠ける思考の「システム1」と、正確性はシステム1よりも高いが遅く怠け者である「システム2」の解説、判断の際に活用される「ヒューリスティックとバイアス」の解説がなされる。
著者は、「オフィスの井戸端会議で活用することを想定している」と説く。それは、他人の間違いを指摘しやすくし、翻って冷静な視点で自分を見ることにも繋がるのだと。そのため、それぞれの章末には井戸端会議での活用例が示される。しかし、行動経済学、心理学の第一級の研究者である著者であっても、自分が囚われているバイアスなどがちょっと判断できるくらいで、意思決定をよりよいものにすることにはなかなかつながらないと語っている。そうなのであれば、より知能の劣る私などができることがあるのだろうか?と考えてしまう。
とはいえ、行動経済学が研究対象とする人間の「意思決定」を考えるうえでは、外せない書ではないだろうか。繰り返し読んで自分の血肉にしたい書。
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書いてあることはわかるし、新鮮な情報なのだけど、とにかくずっと頭を使って読むからか疲れてしまった…。でも、人間の意志や決定は、意外にも色々影響を受けてることがわかって面白かった。途中で断念…。
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プライムエフェクト。言語や行動による意識づけが無意識のうちに関連する観念を呼び起こすこと。笑顔にしてると幸せになるのは正しい
世の中の事象は大半がランダム
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すごく面白くて示唆に富んでいるけど、今そこにいる直感的で非合理な上司への対処は乗っていない。
あと著者が周囲の人に優柔不断と思われちゃいないか心配だ。
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人類の意思決定の非論理性をデータで説明している本。以前読んだ「死すべき定め」の引用文献として知った本。話は長いがなかなか面白い。2度読んでよい本。
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マーケティングをやろうと思ったら、絶対に読まないといけない本ですね。それと、マーケティングに騙されたくない人も・・・
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システム2を強化していくことでシステム1が強化される。それよりも効率的にシステム1を強化する方法があるとすれば、魔法修練だろう。
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「バイアス」という行動経済学についての本。
人間の内部には誰しも「直感/論理」「経験/記憶」という二つの自己を内包する。
そのバイアスについて色々な名前をつけていった本。名前を付ける事により現象が整理でき「バイアス」から多少逃れる事はできても完全に逃れる事は出来ない。
バイアスがあるから世の中が動いたり、素敵に彩られているのも事実だ。
組織運営やコミュニケーション、自己管理においても「バイアス」に対する素養があるかないかで人として大きく変わるのだろう。
キーワード↓↓
計画の錯誤、競争の無視、楽観バイアス(起業家に多い)、自信過剰の優遇、損失回避(人は利益を得るより損失を避けたい)、ピークエンドの法則、持続時間無視、プライミング効果、フレーミング効果、基準の無視、メンタルショットガン、ヒューリスティック質問。少数の法則、アンカリング効果、スキルの錯覚、妥当性の錯覚。
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ホームズの思考術にあった速い思考と遅い思考(ホームズシステムとワトソンシステム)の元ネタはダニエル・カーネマンのファスト&スローだよなあ、と思い本棚から取り出し出だし少し読んでみた。ワトソンシステムの例が書いてある。考えてみれば普段の生活はほとんどワトソンシステムに任せている。だから、思いもしない事があると、自然な対応が出来ずミスしてしまう、という事になるんだな、と。ホームズは「見る事と観察する事は違う」と語っているけれど、少し日常を観察する事を意識してみよう。
↓以下、丸ごと引用
『近所の人がスティーブのことを次のように描写しました。「スティーブはとても内気で引っ込み思案だ。いつも頼りにはなるが、基本的には他人には関心がなく、現実の世界にも興味がないらしい。物静かで優しく、秩序や整理整頓を好み、細かいことにこだわる」。さてスティーブは図書館司書でしょうか?それとも農家の人でしょうか?
スティーブの性格が図書館司書のステレオタイプとピタリと一致することは、誰もがすぐに思いつく。だがこの質問に答えるためには同じくらい重要な意味を持つ統計的事実があるのだが、こちらはまず間違いなく無視される。
あなたはアメリカでは男性の私を1人に対して農業従事者は20人以上いると言う事実を思い出したであろうか。農家の人がこれだけたくさんいれば物静かで優しい男は図書館で座っているよりもトラクターを運転している可能性の方が高い。ところが実験の参加者はこうした統計的事実を無視し、ステレオタイプと類似性だけを問題にした。彼らは難しい判断を下すにあたり、似たものを探して単純化ヒューリスティック(大げさに言えば近道の解決法)を使ったのだと考えられる。このようにヒューリスティックに頼ると答えには予測可能なバイアス(系統的エラー)がかかることになる。』p15
↑
何か問題や課題が与えられた時、いかにすでに自分の脳内にある、取り出しやすい、慣れた材料で物事を判断しているか!って事ですね。単純化!サポメ課題本の失敗の科学にも単純化の例が書いてあったし、先日ひっつじーさんが紹介してくれた【心配学】でのリスクとリターンの見積もり間違いの話にも通じるなあ。今日は自分がどれほど単純化しているか、意識してみよう。
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人間が意思決定を行う際、じっくり考えればわかるものも過去の経験則などから直感を駆使してしまうことにより、非合理的な選択を行ってしまう等といった行動経済学に関するあらゆる事象を平易な文章で記載しており、とても勉強になりました。
但し、分量が非常に多く、頭を駆使する必要があるため、読み進めるのに相応の時間が掛かります。
面白い内容ではあるのですが、長期戦は必至であるため、挫折してしまう方も多いかもしれません。
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私たちの内的な決定機関には二つのシステムがあるということを、様々な実験から検証し提言する内容。ノーベル経済学賞を受賞した著者なので、内容は決して難しく書かれていないが、検証の緻密さ精密さはくどいほど。しかし目から鱗の大変面白い内容だった。
ファスト&スローとは、簡単に言えば「直感」と「理性」といったところだろうか。私たちはあることに直面した時、自身にとって最善の方を選択しようとするし、状況と前提に合わせた回答を用意しようとする。しかしその選択の大部分は理性によって吟味されたものではなく、前提とされた状況や経験によってゆがめられている。「直感」はあるフレームがあり、それにのっとったものをストレスなく選び取ろうとする。「理性」は直感が選び取ったものをもう一度フィルターにかけて自己に問い直すような役割を果たす。しかしこの「直感」は大変揺れやすく、「理性」も直感のブレの幅に結構影響を受けてしまう。
行動経済学に初めて触れた気がするが、この検証は結構恐ろしい。特に宗教者にとっては足元がぐらぐらする思いだ。信仰が個別的であり、自身の経験と直感にかなりの比重がかかっていることは自明である。マインドコントロールという言葉は使いたくないが、構造主義の賜物というのか。メタゲームの先に信仰は見えるのか、人生の課題でもある。
17.12.5
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意思決定とは、直感的で因果を逆転させがちな「速い思考」と合理的で利用に努力を要する「遅い思考」の相互作用であることを述べた書籍。株式・教育・採用など具体的な事例を示し、人がいかに不合理な決定を行うかをしめしている。上巻は2つの思考についてと、ヒューリスティクスとバイアス、自信過剰の途中までを述べている。