投稿元:
レビューを見る
上巻では、人の二つの認知システム「システム1(自動システム)」と「システム2(制御システム)」について多くが語られる。
実際にこうした脳機能が存在しているわけではないが、人間の心理をわかりやすく説明するためにあえて学術的に不適切な「擬人化」を使ったというところが、この本が広く一般に受け入れられている理由だろう。
ノーベル経済学賞を受賞した心理学者だからこそ、こういう不適切な説明が許されている感もある。
この本では、なぜ擬人化が人にわかりやすいかについてもさりげなく説明している。
擬人化は萌え文化の専売特許ではないということだ。
これを読めば、人の心理「システム1」と「システム2」が愛おしく思えるに違いない。この世で起こるアホな事件、アホな自分にも、きっと寛容になれるはずだ。
投稿元:
レビューを見る
”意志”がどのように決まるか、という命題に関してあらゆる角度から、様々な文献、心理実験の結果をベースにアプローチがなされている。
上巻だけではその結論が出てはいないが、いかに我々が”意志”や”客観””主体”と思っているのが曖昧で偏ったものであるかが良くわかる。
そして、その内容もさることながら文章がとても分かりやすくユーモアまであり読んでいて本当に楽しい。下巻が楽しみ。
投稿元:
レビューを見る
人間の行動には2つのシステムが関与する。
自動的に高速で働き、努力は全く不要か、必要であってもわずかであるシステム1,
複雑で困難な知的活動に注意を割り当てるシステム2.
最小努力の法則とは、ある目標を達成するのに複数の方法が存在する場合、人間は最終的に最も少ない努力ですむ方法を選ぶ。
投稿元:
レビューを見る
考える力とは、何か?深く知りたい人におすすめの一冊です。
どうすれば考える力を鍛えることができるのか?
そのヒントを知るためには、その本質を知る必要がある。人間の思考には、癖があります。癖があるからこそ、その癖が悪く出ないために学ぶ必要があり、強く意識を持つ必要があります。
思考には早い思考(直感)と遅い思考(熟考)があります。この2つの思考の違いについて、色々な事例や研究結果を通じて学ぶことができます。
心理学者にしてノーベル経済学賞受賞の著者による面白い一冊です。
投稿元:
レビューを見る
行動経済学と意思決定論できちんと一冊読むならこれってやつ。当たり前なんだけど、理論化されると目から鱗になる。
こういうところが、認知心理学の醍醐味なんだよなぁ。
人には本能がつかさどるシステム1と理性がつかさどるシステム2がある。というお話。この二つのせめぎあいで、いろんな錯覚やら認知のゆがみをしてしまう。それを解説している本である。
結局は、謙虚であれ。システム1も2も完璧じゃないなら、己を過信することなかれ、科学を過信することなかれ、謙虚に生きようってなるね。うーん、仏教に収斂していく…。まぁどんな宗教とかにも当てはまるか。さっすが年季が違うぜ。
投稿元:
レビューを見る
2018/05/06読了。
面白い実験や問題が各章毎にあり、自分がいかに直感に頼っていたかそしてその直感はあまり当てにならないという事を思い知った。
序盤に出てきたバラバラな用語が中盤以降何度も、それも組み合わせて事例の説明に用いられている様になっている。著者は読者に対してこれら用語への「認知容易性」を高めようとしたのかな。
印象に残っているのは第7章、「自分が見たものが全てだ」という思い込みが判断と選択に影響していて判断に必須の情報が欠けていてもそれに気付かない、という話。当たり前の事なんだと思うけどこのバイアスは怖い。
一目、異常のない状態や分かりやすい状況を見たときに隠れた因子に気付かず事態を悪化させてしまうという事は、時に致命的なミスに繋がるだろうと思う。
投稿元:
レビューを見る
経済学の世界に心理学(認知科学)を持ち込む「経済行動学」の第一人者ダニエル・カーネマンによる著作。一般的な経済学はすべての人は「合理的に、自身の利益を最大化するよう行動する」というのが大前提だが、あいにく人間はそのようには行動しないことが多くある。そのメカニズムを心理学的な実験、理論に基づき、解き明かすのが本著のテーマ。
人の思考には2種類のシステムがある(早い思考と遅い思考)。またそれによって2つの人種(エコンとヒューマン)は別者となり、また2つの自己(経験する自己と記憶する自己)に差がが現れる。
タイトルでもあるが、カーネマンは2つの思考をシステム1(早い思考)とシステム2(遅い思考2)と呼んでいる。システム1は直感的で即座に答えを出し、システム2はゆっくりと熟慮して判断する。多くの場合、システム1の直感はシステム2の熟考と一致するが、これらが一致しないケースにおいて、人は非合理な判断をしてしまうこともある。
システム2を正しく起動し、いかに合理的な選択ができるようになるか、トレーニングが必要だし、トレーニングしたところで完全に克服することはできないだろうけど、少なくともこの本で紹介されるような事例を知っていれば、自分の判断にバイアスがかかっているのでは、と疑うことができるようになるだろうと思う。
投稿元:
レビューを見る
瞬間的な思考、判断と、理性的に時間を掛けて思考、判断する脳みそはそれぞれ別で、役割と特徴があることを知って使い分けましょうという話(で、あってる?)
投稿元:
レビューを見る
行動経済学と認知心理学の面白さ、可能性を詰め込んだ本。私達が日頃合理的に下している(と思っている)意思決定がどれだけいい加減なものであるかを教えてくれる。AIと人間の本質的な違いを考える上でも多いに勉強になる。
個人的には星6つをつけたいレベル。
投稿元:
レビューを見る
思考システムには、早とちりなS1と面倒くさがりなS2がある。私たちは、S1が先に働く事で主観によるバイアスがかかり判断を誤る事がある、S2で熟考すればわかるけどS2は面倒がる。ただこの事を意識し大事な局面ではS2を働きやすくする工夫(リラックスや余裕のある時間の確保等)をすると少し合理的に考えられるようになったように感じる。
投稿元:
レビューを見る
心理学的な本かと思ったが同じくらい統計学的なものの比重が高い
本書で述べていることを簡潔に言うなら
・直観はあんまり信じるな
・統計的な判断をするときは理性を全開にしろ
だろう
翻訳の本にしては読みやすい
心理学、統計学についてあまり詳しくない人には特におすすめな一冊
投稿元:
レビューを見る
いい本だとは思うけれど、ボリュームがあるためなかなか読みにくい。まずはダイジェスト的な本を読むべきかな。新書で出ているような関連本をザッと勉強してからまた読みたい。
投稿元:
レビューを見る
経済学の合理性というものにずっと疑問を抱いていたが、数多くの実証実験に基づいてその間違いを正してくれたのが行動経済学だ。その先駆者が自身のこれまでの研究を網羅した本。
専門的ではあるが論調は理解しやすい。しかし何とも読みにくくて時間がかかってしまう。それは訳文のせいかもしれない。原典を当たらないと何ともいえないが、誤訳してるところもあるのではないかと疑ってしまうくらい論理展開がしっくりこないところもある。
投稿元:
レビューを見る
長かったけど、行動経済学について、実例つきで解説された本。
「ヘンテコノミクス」は読んだことがあったが、それ以上に実社会の人間の行動を紐解いていて、ちゃんと読めれば行動経済学の理解はかなり深まる。
ただ長いので、根気は必要かも。
良書でした。
投稿元:
レビューを見る
人間が行う意思決定について分析した本。著者は、ノーベル経済学賞を受賞した心理学者。意思決定に使われる人間の思考を、感情的な「速い思考(システム1)」と、論理的な「遅い思考(システム2)」に分け、仕組みを解き明かしている。興味深い内容を論理的かつ学術的に説明している。
「タスクをひんぱんに切り替えたり、知的作業をスピードアップしたりするのは本質的に不快なことであり、人間は可能であればそれを避けようとする」p60
「認知的に忙しい状態では、利己的な選択をしやすく、挑発的な言葉遣いをしやすく、社会的な状況について表面的な判断をしやすい」p62
「神経系は、人間の体のどの部分よりも多くのブドウ糖を消費する」p64
「自分がどんな気分のときも、つねにやさしく親切にしなさいという忠告は、まことに当を得ている(動作が感じ方に結びつく)」p81
「誰かに嘘を信じさせたいときの確実な方法は、何度も繰り返すことである。聞き慣れたことは真実と混同されやすいからだ。独裁者も広告主も、このことをずっと昔から知っていた」p93
「新奇なものに疑いを抱かない動物が生き延びる可能性は低い」p100
「慣れ親しんだものは好きになる。これが単純接触効果だ」p105
「(モーゼの錯覚)「モーゼは何組の動物を箱船に乗せたか」この質問の間違いに気づく人は、極めて少ない。モーゼは動物を1匹も箱船に乗せていない。乗せたのは、ノアである。「箱船に乗せられる動物」という観念は、聖書の文脈を想起させる。そしてモーゼは聖書に出てきておかしくない人物である。モーゼとノアが同じ母音を持ち、音節数が同じであることも、錯覚を助長する」p110
「アランかベンか、どちらがお好きだろうか。
アラン:頭がいい、勤勉、直情的、批判的、頑固、嫉妬深い
ベン:嫉妬深い、頑固、批判的、直情的、勤勉、頭がいい
もしあなたが大多数の人と同じなら、ベンよりアランの方がずっと好きだろう」p123
「ストーリーの出来で重要なのは情報の整合性(つじつまが合っている)であって、完全性ではない」p130
「(人間は系統付けたがる)私たちは、人生で遭遇する大半のことはランダムであるという事実を、どうしても認めたくないのである」p173
「住宅を買うときも、最初の提示価格に影響される。同じ住宅でも、提示価格が低いときより高いときのほうが、立派な家に見えてしまう。相手の言い値には惑わされないぞ、と心に決めていても無駄だ」p177
「チームで仕事をする場合、自分の方が他のメンバーよりがんばっており、他のメンバーの貢献度は自分より小さいと考えがちである」p194
「高価な商品におまけを付けたところ、そのせいで、全体が安っぽくなってしまった」p244
「(無茶なギャンブルに出て勝利する将軍や起業家)たまたま幸運に恵まれたリーダーは、大きすぎるリスクをとったことに対して罰を受けずに終わる。それどころか、成功を探り当てる嗅覚と先見の明の持ち主だと評価される。その一方で、彼らに懐疑的だった思慮分別のある人たちは、後知恵からすると、凡庸で臆病で弱気ということになる。かくして一握りの幸運な���ャンブラーは、大胆な行動と先見性のハロー効果によって「勇気あるリーダー」という称号を手に入れるのである」p298
「うまくいっている企業のCEOは、臨機応変で理念と決断力があるようにみえるのである。しかし1年後にその企業が落ち目になっていたら、同じCEOが支離滅裂で頑固で独裁的だとこきおろされるに違いない。どちらの評価も、その時点でもっともだと思える」p300
「専門家も所詮は人間であるから、自分を優秀だと思い込み、誤りを犯したと認めることをひどく嫌う」p319