紙の本
「経済の原理から共生の原理へ」という標語は私には非常に含蓄に富んだものに感じられた。
2016/12/09 08:56
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
鋭い視点に敬服しました。本書は、505:増田寛也編著『地方消滅 東京一極集中が招く人口急減』(中公新書、2014年8月25日、中央公論新社)と隣り合わせで売られていたため、つい一組として買ってしまった。で、505:増田寛也をまず読んでみたが、人口減少の危機的状況は良く描かれており、対策はかなり一般常識的で本当に効果あるのかという疑問は大きいにしてもそれ程目くじら立てて批判すべきものではないなといった感想でした。
しかし、本書を読んで、何故山下祐介氏が筆を執ったかが良く分かりました。山下氏は、まず増田氏の人口急減の現状認識をほぼ妥当としつつも、現在の状況は、伝統的社会から近代社会への移行に伴う人口再生産のあり方としての「多産多死」→「多産少死」→「少産少死」→「安定」となる筈なのに、現状はそこを通り越して「過少産多死」→「過少産過少死」→「消滅」といったもっと危機的状況にあると指摘する(33、人口転換)。そして、増田氏の少子化対策を、(1)地方で子育て世代の雇用を確保すること、(2)国民の希望出生率の実現、の2点にまとめて具体的にその欠点を指摘していく(30-31)。例えば、増田レポートで人口減少の一理由としている「子育て世代に経済力がない」というに対して、一人当たり賃金低下→共働き→子育ての外注費依存&子育て時間が取れない→働くだけで疲弊、とい現実を指摘し「経済力以前にゆとりのある時間の創出」を訴える。加えてそれ以前の問題として、将来の経済的見通しが立たないため結婚すら出来ない現状をも指摘する。このように、増田氏が大局的・構造的な視点から発しているのに対して、山下氏は家族・個人といった微細な視点から人間が生きる現場からの視点を強く意識した論理構成になっているように感じた。
全体として私が注目したのは、増田氏の「選択と集中」論に対して、山下氏は「多様性の共生」論を持って強烈な批判を展開している点である(126~)。その激しさは、時には「選択と集中」論を「弱者切り捨て論」とまで一刀両断している。更に、「多様性の共生」論は、持続可能な循環をつくりだす「循環と持続」論へと発展する(225)。また、「選択と集中」論の別の側面である「防衛・反転線」=「地方中核都市の強化」=「ダム機能論」を、「地域淘汰政策」という視点からとらえて批判したうえで「不安の悪循環」から「安心の正循環」へと訴え(238)、「多様性を認め合う新しいゲームの創生へ」(242)へと続けている。ここでかなりの紙数を割いて述べられている「二重住民票」という考えは私にはかなり斬新なものであった。そして終章直前のP-280で掲げられた「経済の原理から共生の原理へ」という標語は私には非常に含蓄に富んだものに感じられた。
むーー、後半でかなり哲学的で未消化な部分もあったが、地域での地道な活動実践からの視点は注目に値しますね。読み捨てではなくじっくりと読み込み、何らかの実践のための糧にすべき書でした。
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買うんじゃなかった
2015/10/07 08:39
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投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は限界集落関連の著作があり読んだことがある、本書も当然と思って読んだ。前作では限界集落と言われるものであってもそれなりに生きていけるのだと、そこそこ実例をあげて書かれており、そういう見方もあるんだな、でも実際、廃村になっているとこもあるわけで次なる著作ではとおもったのである。
読後というか、なんだこれはという稀なものであった。
増田レポートへの非難だけで著作として出すんだというのが驚き。学者の冷静な実証展開も理論上の対論というわけでもない。ヒステリックな感じである。実感の吐露というか自説と違うものへの攻撃性だけだった。
このような著作はいかに専門書ではない一般書であってもどうなのかな。アジテーション型の大衆扇動的なものとして捉えるべきなのだろうか。
著者の役職、経歴、著作タイトルなんかで買うとしくじるんだというのを教えてくれた。
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タイトルからも感じるように全体的に感情論、陰謀論のようなものが根底にあると感じた。
現在の政府は第二次世界大戦前の空気に似ている、地方が消滅するという印象を与えようと誰かが仕向けている、私たちがどんだけ頑張っても物事が好転しないのは私たちのせいではないのではないか、など、冷静に分析を行う態度とは到底思えない論調が多い。
確かに増田レポートが提言する限界集落を整理し、地方都市をダムとして人口減少を押さえるやり方に問題点も多いかもしれないが、本書の論調は「地方消滅」の提言に対して反論するにはあまりにレベルが低すぎる。
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問題意識はわかるけど、なんだか文章の構成、文脈があっちに行ったりこっちに来たりと、ふらふらな感じ。気持ちを抑制した冷徹な文章の方が説得力は出ると思うのだけど。
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地方消滅(増田レポート)の問題点の指摘と、筆者の主張としての地方多様性の共存。循環が壊されたあとの持続性をどうつくるか。
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地方再生の議論の時にでてくる「選択と集中」という思考。
それは、地方切り捨てに帰結する、とバサリ。
地方の存続には多様性と共生がキーワードになる。
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増田レポート自体には理解を示しながら、選択と集中について特段批判しているが、批判からの新しい提案も現実性が乏しく、人間の善意に頼り過ぎたきらいがある。
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自治体消滅がいわれることに祇園を感じていたが、的確な指摘にすとんと落ちました。解決方法については、意見の異なるところもありますが、多様な社会をめざすという点は共感します。
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数字でグイグイ攻めてくる「地方消滅」に対して感情的にブレーキをかけている印象から始まります。実際、著者の立ち位置は社会心理に基づいていて「地方消滅」というキャッチーなフレーズが問題の顕在化ではなく不安からの逃避の事実化を呼び起こすことを本当に心配しています。本書の前半では反論のウエットさが理解できないでモヤモヤしますが最終章に繋がるにつれ、筆者の危機感が理解できるようになります。「選択と集中」と「多様性との共生」のストラグル。どちらがいいか、ということは簡単には言えませんが、人口減少社会についての議論がこのようになされていることは大切だとおもいました。
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『地方消滅』が提起した「人口減少問題」…何十年かで顕在化した問題である以上、“問題”が「何らかの解決」というようになるまでに永い時間を要するのであろうが…この『地方消滅の罠』のような、反論含みの考え方も学ぶ必要が、多分在るだろう…個人的には『地方消滅』に触れた際に禁じ得なかった「些かの違和感」について、本作を通じて輪郭を与えられたような気もした…
既に…来る4月の統一地方選挙を巡って、「“人口減少問題”は争点」とする話しも聞こえないではない…少し勉強しなければなるまい…
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増田レポートと呼ばれる「地方消滅」とセットで読むべき本。
増田レポートが「選択と集中」という経済原理をベースにしているのに対して、こちらは社会学の観点から分析しているところに特徴がある。
個人的にはこちらの意見に賛成。選択と集中によって多様性を失うことは国益を失うことに繋がる。
多様性がないところからイノベーションは起きない。
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増田レポートは少子化の現実を明らかにした意味で素晴らしかった。しかしその対策は都会人の都会中心のそれであった。
本書は少子化が何故起きたのかを、その慧眼できちんと見抜いているように思う。論じている対策が適当かどうかは別にして、ただ答えはいくつもある訳だから。
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増田寛也の「地方消滅」論への批判は納得でも、これを「選択と集中」とみなしながら安倍政権の「この道しかない」路線とは違うと思う見方、そしてやはり東京に行って地方が見えなくなっているのを感じてしまう誤解が何とも残念。
地方創生も失敗すると喝破した木下斉君の論考、同郷の安倍総理から毛嫌いされている藻谷浩介さんの「里山資本主義」と比べると、足りないものがわかります。
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増田レポートで選択と集中が重要だと言っており、それに対して疑問を呈している。で、反証を上げようとしているんだと思うのだけど…、私は増田レポートへの反論部で挫折した。なぜなら、論点が定まらないから。まるで、読者を置き去りにして鬱憤ばらしをしているような記述である。そんなら別でやってくれというのが正直な感想。
本当は増田レポートを読み、本書を比較して検証するのが本書の価値を見出すのに必要なのだろうが、私はそんなに良心的な読者ではない。
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地方の選択と集中、は間違い。
東京一極集中を避ける。地方中核都市を軸とした新たな集積構造、は間違い。
出生率には、暮らしの余裕、が大事。都市のほうが出生率は低い。歴史的な事実。都市蟻地獄説=都市は常に人口減少地帯。
地方中核拠点都市=人口20万以上で昼間人口のほうが夜間人口と同じまたは多いこと。
平成の大合併で、人口だけは増えた。郊外のロードサイドに資本蓄積され、地域社会を解体してきた。
象徴としての学校統廃合。
人口流出を避けるための人口ダム論。
人口減少も地方消滅も国が持続可能なためにはどうするか。
自治体間の人口争奪競争。
山梨県、岡山県、長野県などが人気の移住地。
二重住民票。原発事故から。
二箇所居住、多地域所属。
選挙権の問題も。
自由に投票場所を選ぶ。