紙の本
スマホを片手に、登場する作品群を検索。 あの名画にこんなドラマが。そこに迸る情熱。美しい原田マハの世界。
2022/02/11 09:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
MoMA(ニューヨーク近代美術館)を舞台にした短編集。
実在の人物に、著者の他の作品に登場するおなじみの人物も加えた、5編の作品たち。
美術館というと敷居が高く、一部の愛好家の人々のものだとおもわれがち。実際、私自身がそう思っていた。
だが、その敷居を著者はグッと下げてくれる。
「美術なんてわかりっこない」--そんな逆差別というか、偏見を、簡単に打ち砕いてくれる。
「中断された展覧会の記憶」
2011年3月11日。東日本大震災。
この悲劇の後、MoMAから貸し出し許可を取り消された「クリスティーナの世界」(アンドリュー・ワイエス)を引き取りに、ふくしま近代美術館に向かう杏子。
「ロックフェラー・ギャラリーの幽霊」
MoMAの警備員スコット・スミスが、閉館間際に出会う不思議な青年。
「彼女たちが体現しているのは、人間の心の奥深くに潜む闇だ。真実だ。人間は汚い。ずるい。醜い。だからこそ『美』を求める」(『アヴィニョンの娘たち』(ピカソ))
「私の好きなマシン」
機械の部品が、芸術作品として、MoMAの展示室に並べられた。
「ここにあるものは、ジュリア。僕たちが知らないところで、僕たちの生活の役に立っているものなんだ。それでいて、美しい。それって、すごいことだと思わない? 僕は、そういうものを『アート』と呼んでいるよ」(MoMA初代館長アルフレッド・バー)
「新しい出口」
2001年9月11日。ニューヨークを襲った同時多発テロで、ローラ・ハモンドは大切な友人を失い、心に深い傷を残してしまう。友と企画した「マティス ピカソ」展の幕が開く。
「あえてよかった」
日本の私立美術館からMoMAに派遣された森川麻実。
彼女の面倒を見てくれるパティに、帰国前ある悩みを相談する。
MoMAデザインストアの「ニュー・ジャパネスク」という小規模フェアでのウィンドウ・ディスプレイ。塗り箸が「×」の形にクロスされているのだ。
スマホを片手に、登場する作品群を画像検索しながら読み進めていく。
あの名画にこんなドラマが。そして、画家たちが、美術館員たちが、強く思いを入れて、大切に大切に育て育んできた芸術文化。そこに迸る情熱。
紙の本
現代絵画
2015/08/16 07:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
原田マハの絵画に対する考察、愛情が見て取れる。特に私は、ワイエスと福島と結びつけた小編が大好き。
紙の本
キャンバスに描く5つの物語
2015/06/03 04:01
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
原田マハは2012年楽園のカンヴァスで山本周五郎を受賞した。本書は短篇集だが、同じく美術に関する著者の造詣の深さがうかがえる。9.11や3.11など現実の世界を見つめながら、自分だけの物語を描いていく。元美術館職員ならではの1冊だ。
投稿元:
レビューを見る
MoMAを舞台にした5つの物語。十八番というか勝手知ったるというか、安心して読める。ただし、こちらも読了からひと月ほど経っているため詳細な感想はナシ。
投稿元:
レビューを見る
MoMAを舞台に、著者のキュレーターとしての経験をふんだんに取り込んだ(おそらく実際に、MoMAで勤務しながら体験し感じていたことだったに違いない)短編5編。
実在の人物や事件も各編に出てくる中で、秀逸だったのは、福島原発の事故を美術作品の展示という視点から描いた「中断された展覧会の記憶」だろう。被害そのものだけでない、原発事故が抱えているものの大きさに、改めて思い至らせられた。
全体としては、美術に疎い人(私とか…汗)にはあまりピンとこない部分があっても、それなりに楽しんでさらっと読める作品集だったかな。
投稿元:
レビューを見る
原田 マハの新刊なので読んでみました。
このところ、矢継ぎ早に出版してるので、「適当だったら困るなぁ」と思ってたものの何のその。
ニューヨーク近代美術館(MoMA)をテーマに、3.11や9.11とも絡めた、見事な仕上がりです。
まえは「アンリ・ルソー」と「パブロ・ピカソ」だったけど、こんどは「アンリ・マチス」と「パブロ・ピカソ」。
まだまだ色んな話を聴かせてもらえそうです!
投稿元:
レビューを見る
実在する芸術家や作品を絡ませていて、面白かった。
アルフレッド・バーの言葉か分からないけれど、形態は機能に従うはその通りだと思う。
アルフレッド・バーが出てくる話が一番良かった。
投稿元:
レビューを見る
50ページ前後の短編集。
もちろん原田マハだけに絵画小説。
スマホで横にその絵を見ながら読み進めると非常に良い!
できることなら実際にその絵を見ながらこの本を読みたいくらい。
今回はモダンということでまさに原田マハの出身であるMOMAにまつわる話。
絵画のみならずベアリングなどのパーツまで芸術として扱っている。
その形はその機能ゆえ。も分かるが、芸術とは何と間口の広いことよ。
今回は短編集なので、『楽園のカンヴァス』よりは『カフーを待ちわびて』に近い。
投稿元:
レビューを見る
誰かの心の中に、記憶に傷跡を残す事件や出来事。思いもしなかった突然の決別、自ら飲み込み吐き出すしかない状況と決断。MOMAを舞台にアートに寄り添う者たちの琴線に触れる短篇集。
投稿元:
レビューを見る
MoMA関連の短編集。
短編ながら、3.11、9.11と絡めて、どれも読み応えのある仕上がり。
ラストの「あえてよかった」は、原田さん自身の体験なんだろうな。異国の地での人との関わりに胸打たれました。
投稿元:
レビューを見る
個人的に大好きな小説がまた一つ増えました。
著者のアートに関する小説の真骨頂と言える内容だと
思います。楽園のカンバス・ジルベルニーの食卓・
太陽の棘と勝るとも劣らない内容かと。
今回は短編でしかもすべて舞台はMOMA。
たまたま、GWで息子が受験生である我が家は、広尾の
都立図書館で過ごしましたが、私はこの本を
図書館のMOMAの図画集を見ながら読むというとても
幸せな時間を過ごしました。
図書館の大きな図画を見ながら読むのはとても印象に
残りました。とてもよかったです。
『中断された展覧会の記憶』
3.11と福島の想いがワイエスの「クリスティーナの
世界」とリンクしてこの絵。「クリスティーナの世界」
がとても印象に残る絵になりました。
なぜか泣けてくる話です。
『ロックフェラー・ギャラリーの幽霊』
MOMA初代館長のアルフレッドバー氏とピカソ
「アヴィヨンの娘たち」「鏡の前の少女」「ゲルニカ」
『私の好きなマシン』
工業デザインと近代アートと、前作と同じくアルフレッドバー氏の話。
『新しい出口』
9.11とパブロ・ピカソとアンリ・マティスの話。
ピカソ・マチス展なんてものが本当に見れるのであれば
実際に見てみたいと心から思います。
「浴女と亀」と「アヴィヨンの娘たち」
「マグノリアのある静物」と「血入りソーセージのある静物」
「窓辺のバイオリニスト」と「影」
最後の2品が本当に並んで実物を鑑賞できるのであれば、
感動するだろうなあと思います。
『あえてよかった』
多分著者がMOMAに研修に派遣された時を舞台にした
話。実話かどうかはわかりませんが。
ワイエスの「クリスティーナの世界」と
マティスの「窓辺のバイオリニスト」と
ピカソの「影」
の3作品はいつか実物を見たいと思いました。
本物を見たい絵がどんどん増えていきますが。
まだまだ見れていないものがいっぱいです。
投稿元:
レビューを見る
『楽園のカンヴァス』を読んで以来
原田マハさんの美術に関する小説は外せない
今回は、5つの短編集で
ひとつひとつが印象的だったのだけど
福島美術館と震災に関する短編は
淡々としていて、美しく悲しかった
他の短編も、人の気持ちの切なさ悲しさを
さりげなく、でもしっかりと書かれていて
それが、絵画やモダンデザインの造形とも絡まり
読んでいる間、静かで充実した時間を過ごせました
投稿元:
レビューを見る
どの話しも良かった
その中でお気に入りは私の好きなマシン
MoMAに何時かは行ってみたいと思える作品でした
投稿元:
レビューを見る
【NY芸術の殿堂を舞台に描く四つの風景】ベストセラー美術小説『楽園のカンヴァス』でも重要な役割を果たしたNYMoMAを舞台に描く著者の真骨頂、「美術館」短編小説。
投稿元:
レビューを見る
ニューヨークのMOMA美術館を舞台にした、短編集。連作というわけではないが、何作かに同じ登場人物が出てきたり、作者の別の作品中の登場人物が再登板したりしている。
個人の力ではいかんともしがたく避けがたい、突如として私達を襲う困難ー震災や津波、原発の水素爆発、テロー。そんな困難の中にある時に、私達にアートが与えてくれる力を描いている。
美術館に行きたくなる1冊。