紙の本
業と悟り
2018/08/13 10:13
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投稿者:ヤマキヨ - この投稿者のレビュー一覧を見る
世に問う作品を存分に描きたいという画家の業。目の前の事物にとらわれずに、本質えお描くために目指したい覚醒や解脱の境地。権力抗争や世俗の欲に翻弄されながら、心の中の桎梏を超えて高みを目指す等伯の凄まじいまでの生き様に心打たれました。その一方で、高みに至るまでになんと多くの犠牲を払ったのかということも、心の澱となって読後も残りました。
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等伯 下
2016/07/24 08:01
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投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
長谷川等伯の波乱万丈の人生を大変興味深く描いています。画業の研鑽と狩野派への挑戦、故郷の能登七尾への想いと様々なしがらみ、家族への愛情、時代の権力者との交わり、自己の業の強さ、悟りの境地への導き等、檄と感動の小説でした。
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投稿者:カツ丼 - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻のレビューで安部氏の時代小説には文化がある、と書きました。『等伯』はその文化が全面におし出された作品です。絵描きが主人公ですし。と同時に、人の生き様を力強く描き出します。絵師の「業」という言葉で表される等伯の生き様が良いです。
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充実した読後感
2016/01/11 00:33
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投稿者:hiro - この投稿者のレビュー一覧を見る
狩野派との対立の顛末が、ついに明らかになります。そして、様々な悲しみや怒りを乗り越えて、芸術家として一つの境地に達します。
この作品は、安土桃山時代の絵巻を読むような楽しさがありました。
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等伯の執念
2023/02/04 13:02
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投稿者:りら - この投稿者のレビュー一覧を見る
等伯の才能に嫉妬して、組織で絡め取ろうとする永徳の執念と、何が何でも長谷川派を立ち上げようともがく等伯。
完成された技法の習得により、完成度の高い絵を生み出す永徳と、仏教、特に禅への理解と自らの努力と才能により、独自の画風にたどりつく等伯の対比も素晴らしく、ぐいぐい読めた。
才能に溢れた息子の死が全く無念。
同時代には、宗達や光悦などもいるが、永徳との等伯の確執に集中したところもごちゃごちゃしなくて良かった。
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読み終わるまでは主人公よりも脇役の妻とか息子とかが人物として優れており、主人公の絵を書くという拘りに対し、純粋な話ではなく政治的な背景とか嫉妬などが絡み、主人公の行動にイライラとしたが、最後の画家としての業という言葉にそれが集約されて、やっと落ち着いた。著名な作品の背景が作中に語られているが、不勉強で見識がなかったため改めて作品を検索し、ああこの作品の作者だったのかと思った。
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さて物語は下巻に入り、信長が没して不安から解き放たれた信春(等伯)は、聚楽第の襖絵をかけた狩野永徳との勝負を経て、大徳寺三門の壁画の仕事を成し遂げ、漸くその名を世に轟かし、しかしそれも束の間、利休事件に関係し、再び窮地に立たされる。
絵に執着したばかりに何人もの身内を不幸にしてきたと自覚しながら、それもこれも絵に向かおうと自ら招き寄せた運命として、亡き者たちを背負って己れの画境に向かっていく。
ほんとに浮き沈みの激しい人生。真の天才の生き様ちゃあ、こういう感じなのだろうか。
私なら七尾の絵仏師として信頼を得て家族との平安な暮らしを選ぶだろう。と言いつつ、自分の今度の転籍も、私にとっては安穏な仕事を捨ててのチャレンジとも言えるかも。スケールの大小はあるけれど、人はそれぞれ自分で何かを背負いながら進んでいくものなんだろうと思い直した。
だけど、この本の周りの人はそれで良しとしていたけれど、身内まで巻き込んでいくのは感心しないな。私は家族とともに幸せになりたいよ。
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夢中になって読みました。等伯が煩悶を重ねながら、数々の絵を描く様が良く著されていて、一人の人間としての俗な等伯を著していることで、物語に深みが出ているように感じました。有名な「松林図屏風」が出来上がるまでの描写はリアル感がありました。
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熱い何かを内面に滾らせながら、創作の道に邁進する等伯…素晴らしい生き様かもしれない…
本作に限らず、この種の“職人”に題材を求めた時代モノ…秀作が目立つと思う…今後もこうした題材の作品には注目したい…
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1500年代後半~1600年代初めにかけて活躍した絵師長谷川等伯の生涯を描いた作品。織田信長~豊臣秀吉~徳川家康の天下取りの戦国時代に、政局に振り回されながら絵師として長谷川派を形成し、狩野派と並び歴史に名を残した。松林図屏風や祥雲寺障壁画作成の経緯や、作品が生まれるまでの苦悩などが描かれていて一流絵師になるまでの様子を知れる。等伯と狩野永徳がこんなにお互いライバルとして意識していたのかと初めて知った。等伯という人物もすごいが、この作品では二人の妻や長男の人間性の素晴らしさが際立っている。素材によるのか著者によるのかはわからないが、全体としてはなんとなく物足りなさを感じた。職人の生涯を描いた作品は山本兼一のほうが好みである。
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まさしく著者の代表作となるべき作品である。燃えるような情熱を紙にぶつけるようにして描く等伯の作風。魂の結晶である松林図屏風。時代に翻弄されながら、絵の道を求め続けた等伯の人生に感動した。
等伯の絵を見たさに、京都東山の智積院を訪れた。松林図屏風はどこで見られるのだろう。どこかのお寺で見たような記憶があるのだが…。
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己の進む道を駆け足で進もうとする等伯の情熱と馬力
等伯の行動が起こす困難に巻き込まれる家族の理解と優しさ
困難に苦しみ抜いた先に導かれる絵の神髄と傑作
等伯の絵がどの様にして生まれたかがよく分かり、面白い。
競い合う狩野永徳と長谷川等伯
山本兼一の「花鳥の夢」は、狩野永徳の側からライバルとして等伯が描かれていて、比べてみると両者の立場の違いがよく分かる。
個人的には、「花鳥の夢」の方が読みやすいと感じた。
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絵師、長谷川等伯の生涯を描いた歴史小説。
日本美術史に名を残した等伯という人間像を描くことがメインでありながら、安土桃山時代の動乱を、同時代を生きた等伯の生々しい体験と視線とで描かれている所が、実は面白い。
一般人なんだけど、中枢にも近い立ち位置、という所がまた絶妙。
それにしても芸術家の業、というのはやはりどうしようもない。
自分だけでなく周囲の不幸や破滅を招いたりもする。
その辺りの描き方は若干類型的かとも思うけれど、実際こんな人だったんだろうな、と思わせる説得力もあって無理なく読める。
何といっても狩野永徳とのヒリヒリするような対決がいちばんの読みどころ。
イタいキャラ扱いの永徳の描写はちょっと可哀想だけれども。
いわゆる、信長、秀吉を描いたこれまでの小説とは一味違う歴史小説として楽しめるし、長谷川等伯について知る事のできる小説でもあり、充実した内容の一冊です。
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時代に翻弄されて生きた
主人公の等伯の人生を
読み人の私も
物語の魔法にかかった
かの様にまた
疾走するかの様に読破しました。
文句なしの星五つです。
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下巻は一気読み。
時代物にこのくらい引き込まれたのは、いつ以来だろう。
最終章「松林図」でその感覚はピークに達する。
上巻に入り込めずにいた自分はどこ?