紙の本
圧倒的な生命力
2016/08/15 11:10
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
「流」でも感じたが、本作も生き生きとした文書、壮大なスケール感が読む者を圧倒する。
冷酷な母殺しが救世主(神)として崇められ、語り継がれている主人公の奇跡の数々。
母親ピアヘイレンの若かりし頃、兄ウディとの生活が語られ、主人公ナサニエル・ヘイレンが手にしたオートバイに命を吹き込み兄ウディと一緒にどこまででも走る事を夢見る。
それぞれの登場人物が生き生きと描かれ、その場に読む者が一緒に過ごしているように感じてしまう。
生きるために食人の罪を罪とも思わない世界を旅するヘイレン。
その食人の罪を裁くために追う白聖書派の者達。
追う者にとって何が正しく何が罪なのかは問題ではない。
それは現代の人々への警告のように響く。
電子書籍
エンタメ性不足
2018/01/30 01:52
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品の変わっているところは、終末世界的状況を臨場感を持って語るのではなく、ネイサン・バラードという白聖書派の一人がキャンディー線の向こう側である食人鬼を追って数か月過ごした自らの体験と出会った人たちから聞いた話を基に、「黒騎士伝説」の成立過程と伝説化したナサニエル・ヘイレンの人物について本を書く、というもう一歩距離を置いた語り方であることです。この分析的距離感がこの小説を読みづらくしているような気がしてなりません。
人が危機的状況でどのような行動をとり、どのような選択をするのか、またその選択に至るまでの葛藤や、選択した後の疑問や後悔や罪悪感とどう折り合いをつけていくのか、「罪を以て罪を贖う」とは単なる自己正当化なのか否か等、実に興味深い問題提起が小説の中でされています。面白くないわけではないのですが、小説としてのエンタメ性は不足しているように思えます。
紙の本
はいりこめなかった
2016/09/17 19:47
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投稿者:えるべっく - この投稿者のレビュー一覧を見る
傑作「流」の作者なので
おおいに期待して読み始めました。
読み進んでも
なかなか物語に入り込めず、
きっとどこがで
ぐっと入り込めるだろうと
読み続けたのですが
結局、入り込めずに
終わってしまいました。
次の作品に期待です。
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終末と言える状態で教祖(カリスマ)はどのように作り上げられるか。
面白い作品と言うよりは、心に残る作品だった。
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2173年、地球に小惑星が衝突。生き残った人々は生き続けるために人を喰い始めた。人を喰った後に人々は罪の意識に苛まれる。そこに現れた一人の男。人々が「神」と呼ぶその男を追う男。
人の肉を喰らってまで人は生きねばならぬのか。それは罪か。ならばその罪を犯した者たちを殺していくのは罪か神の救いか。
灰色の世界の灰色の未来。奇跡は人を救わないのか。
「罪の終わり」というタイトル。表紙には「JESUS WALKING ON THE WATER」とある。奇跡によって罪は浄化されるのだろうか。
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別次元だ。
色々なものが滅びた世界。
生きる事と罪を犯す事が同義なっている世界。
その世界を彷徨い、赦しを与え続ける男。
翻訳小説仕上げ。この作品にはこれしかないんだろう。
別次元だ。
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久しぶりに、ずっしりと重いストーリーに入り込むことができた。飢餓と人間を食うこと、神の存在そういうことをひりひりと感じられた。読後感とても重い。
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なんというか筆圧が強い感じで面白かった。さすが直木賞作家。日本だけでなく世界に向けて書いてる感じがビンビンして格好いい。
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「ブラックライダー」の前日譚。小惑星ナイチンゲールが地球に衝突する前後の物語。生き残った人類が、人を殺して食べたりするなどグロテスクにもサバイブする姿は圧巻である。本作品は、小説家(ネイサン・バラード)が、ナサニエル・ヘイレンがブラックライダー(黒騎士)になる経緯を語る形式。架空の小説家が出版した本を東山氏が執筆するというメタ小説となっている。そのため、黒騎士になるナサニエルの行動が、主観的に書かれたり客観的に書かれたり、さまざまな角度で語られる。その効果により、人や犬が神のような存在になる過程の語りに深みを与えている。「ブラックライダー」を少し読みにくく感じていたのだが、「罪の終わり」はとても読みやすく、主にキリスト教的な観点になってしまうが、罪や赦しについて概念を理解できたように感じた。物語の主題は重いものだが、純文学ではなくエンタテインメント小説の範疇で書かれているので、読みやすく楽しめる小説となっている。
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ナサニエル・ヘイレンの伝説を追う男の本を読んでいるような語り口でストーリーが進む。
人々が極限の状態になったとき、良心の呵責を乗り越えないといけない状態にもまたなる。
そんなとき、人は何かの思想にすがりたいのだろう。
合法化する何かに。
でも、少しずつみなが協力すれば秩序が生まれ、分業が生まれる。
新しい世界が始まる。
世界は終わらず、生きようと思えば生きられる。
絶望から希望が生まれる。
ナサニエル・ヘイレンの伝説は人々にとっての希望だ。
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前の『流』のほうが内容はおもしろかった。
日記帳で説教くさいところも多々あり、でも、時々台詞や引用で使われる言葉を読みたくて最後まで読めた。
人生の時間の無駄とは思わないけれど、人に勧める本、とまではいかないような……
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図書館で借りた本。舞台はアメリカ、キリストのような伝説になった美青年ナサニエル・ヘイレンの伝記を、ある任務と取材を兼ねた旅をしながら書いたネイサンの本である。内容はナサニエルが誕生する前2152年のナサニエルの母親の事から始まる。ナイチンゲール小惑星が地球に衝突する直前に核で爆破し衝突はくい止めたが地球は放射能汚染が蔓延しM13の地震が起きたり不安定に。だが被害を免れた土地もある。食糧難が起き、人々は食人で飢餓を乗り切るが…など近未来のSFや宗教哲学の要素もあるナサニエルの人生の話。そして3本脚の犬は大事な存在だ。
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表紙が見えるように並べられた中から、気になり借りた本。
著者の追憶から書かれる出だしに、あれ、エッセイだったかな?と混乱したものの、見慣れる西暦に創作だと気付く。
遥か未来の話なのに、そこでの世界も今と代わり映え無く、なんだか夢もない。
更には世界が荒れ果てていき、世紀末の世界へと変わる。
しかし物語が進につれて、面白く読み進められた。
飢餓になった時、人を食べるということ、罪の意識、などなど、重いテーマを考えさせられる話だった。
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2173.6.16ナイチンゲール小惑星破片の衝突で破壊された北米大陸では食人が生きるすべとなっていた。この世界観に入り込むの時間がかかり、前半はてこずった。序文で概略が示されているので、途中で戻ってもういちど読みこむべきだった。後から知ったのだが、ブラックライダーという作品で設定された世界らしい。
その世界で神格化されていくナサニエル・ヘイレンの贖罪の旅のはなしが、イエスキリストの行跡にも重ねられていく。
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アルファベットの題名はBeyond the Block Rider:JESUS WALKING ON THE WATER~私は白聖書派の追跡者で、最初は食人鬼ダニー・レヴンワーズを追っていたが、一緒に行動しているナサニエル・ヘイレンがリストの上に上がってきて変更した。ナットは6.16以前にNYでダンサーになろうとしてヒッチハイクを続けてきた母が男3人に暴行を受け、障碍を持つ兄ウッドロウと共に生まれてきた、母と同じ美貌を持つ男性だ。2173年6月16日小惑星ナイチンゲールが核攻撃で粉々になりながらも地球に衝突して世界は一変した。その時、母親殺しで刑務所に入っていたナットは、政府が東部住民を守るために設定したキャンディ線を越えて西部に踏み出した。食糧が供給されない地域では、人を殺して食べる状況が生じており、人と牛の遺伝子を組み合わせて新たな食肉を生産しようと言う計画もある。南西部に住む人々は罪を背負い、エルモロの落差900mの水場に至る階段を一人で作ったナサニエルを黒騎士と呼ぶようになり、湖を歩いて渡ったイエス様と同じように、救世主と考えるようになったのだ。彼の生い立ちは…、双子の兄はどのように死に至ったのか…、如何に監獄からニューメキシコに至ったのか…、どのように亡くなったのか~台湾を舞台にした小説は何だったっけ? そうそう「流」だった。台湾籍の儘らしくて本名は王震緒で警察の中国人通訳をしていたり、今は大学でも中国語を教えているらしい。未来ものを書くとは思わなかった