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北欧の中でのフィンランド
2022/11/29 16:19
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投稿者:europeanmetallover - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を読むまで、私はフィンランドについてあまり良く知りませんでした。しかし、この本を読み進めていくうちに、フィンランドという国家が、北欧のみならずヨーロッパ全体、そして世界の中でどのような歴史を辿っていったのかが興味深く説明されており、この国について新たな知識を得ることが出来ました。フィンランドという国について、この本を読んで新たな視点から見つめることが出来るので、西洋史を学ぶ人や、フィンランドについて興味がある人におすすめしたいです。
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シスという国民性を持つ人々
2018/05/25 16:54
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投稿者:tolk - この投稿者のレビュー一覧を見る
フィンランドのイメージは、高い教育水準、高い税金、ハイセンスなインテリア、ムーミンオーロラ、白夜などでしょうか。
初めてフィンランド人に会ったのは、高校の修学旅行で飛行機に乗った時に隣に座られたフィンランド陸軍の方でした。その方から、冬戦争とシスについては話を聞きましたが、フィンランドの通史を読んで70年まえから最近までこんなにも大変な苦労をしていたと驚きました。
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興味深い
2022/06/03 14:03
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
フィンランドの歴史が、詳しく解説されていてよかったです。北欧先進国として、生き延びていく知恵の深さに、驚きました。
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新種の「ソ連防衛論」
2019/09/25 23:28
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第2章以下はロシアに支配されて以降のフィンランドの歴史を書いているから、200年余りを占めている。しかし二月革命でいきなりケレンスキーが臨時政府の権力を握っていたら困る。第1次世界大戦でドイツ軍に参加したフィンランド人部隊を「イェーガー部隊」とドイツ語読みするのは「フィンランド軍のすべて」が出典だろう。
この本で問題なのは独ソ不可侵条約での帝国主義的な勢力圏分割を「ドイツに不信感を持つソ連による祖国防衛論」という立場に立った上でフィンランドの歴史を書いているところ。ソ連が承認した主権国家であるはずのフィンランドに「領土交換」を持ちかけた事を肯定的に書いている。バルト三国の運命を見れば、ここでフィンランドが「プロレタリアートの祖国ソ同盟」に妥協をしたらソ連崩壊までソ連を構成する一共和国になった事は分かるだろうに、著者は何故こんな事を書くのだろうか?袴田里見の「党とともに歩んで」でフィンランドがソ連を侵略したと書かれていたのを連想した。参考文献目録にアイノ・クーシネンの回想録があるから、スターリンが信用しなかった上に見捨てられたゾルゲ機関の運命ぐらい知っているだろうに、そこまでしてソ連を擁護したいのかが不可解なぐらいだ。
平成になってからのフィンランド軍ものの本では「中国的天空」の著者なので無視しているとしか思えない「北欧空戦史」をはじめ、フィンランド軍の装備や活躍は書くが、その背景となる政治史となると意外とないから痛いところだ。
冬戦争について「冬戦争」を元に書いているので、「劣悪なフィンランド軍が赤軍に善戦した」ように書かれている。これは「冬戦争」の問題でもあるが、それでいて道路でしか移動出来ない赤軍をフィンランド軍が急襲したとも書かれているので、どちらを取ればいいのか?
継続戦争についてフィンランド側は名前通りに冬戦争からの継続だと主張して、ドイツの戦争とは別の戦争だとした事を著者は批判しているが、アメリカがフィンランドと断交したのは1944年になってからと書いている。矛盾しないのか?ちょうど日本軍に占領されてからタイが取った運命とよく似ていると思う。
ソ連と休戦を結んだフィンランド軍がラップランド戦争を迎えるにあたっての兵力数がフィンランド側が求めた「第一次世界大戦から第二次世界大戦までの兵員数」とソ連側が要求した「一九三九年一月時点の兵員数」が併記されている。はっきり言って意味が分からない。「最終的」な兵力はパリ条約での数字のようだが。その上、「核兵器の所有、開発、実験」と言われても、この時点で核兵器はまだ「開発」段階で「実験」どころか「所有」している国家など地球上に存在していない。
原語音訳のパンツァーファウストで通っているドイツ製の兵器を「対戦車擲弾」と訳さなくてもいいのに。
これなら政治史だけに絞って本を書いた方がよかったかもしれない。
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コンパクトに一刻の通史が学べる物語シリーズ。今まで読んだものはレベルが高く、安心して読めるシリーズである。今回は私が訪問した中でも最も好きな国、フィンランド。なんどか歴史の本も読んだが、本書がいちばんよくまとまっていてわかりやすいと思う。とくに著者の得意とする国際関係学からみた、対ソ戦の「冬戦争」から冷戦期の乗り切り方が、外交視点からわかりやすく解説されている。ソ連に配慮しながら、実質的な独立を維持した手法は、今後のアジア情勢の中で日本も参考にできそうだ。夏に行くと非常に明るい国で70年前からつい最近まで、こんな苦労してたんだと驚き、彼らの国民性”シス”を感じられる。
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フィンランドの歴史を通覧する一冊。政治体制から文化まで幅広く書かれている。近代の記述に重きをおいているので、19世紀までは駆け足だけど、全体的に読みやすい。
個人的には第二次大戦後にソ連と結んだFCMA条約が印象的。条文に「大国間の利害紛争の外に留まりたい」という一文を入れさせることで内政干渉に対抗したという下りは、ギリギリの選択の中で中立たらんとしたフィンランドの姿勢がよく出ている。
スウェーデンやロシアといった強国に取り込まれたり、付かず離れずの位置に収まったり、複雑な歴史があったんだな。ムーミンやサンタ、北欧雑貨やハイテク産業以外のフィンランドを知られて良かった。
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コンパクトにフィンランドの現代史を学べる好著。スウェーデンと大国ソ連=ロシアとの間にあって、リアリスティックな外交で、独立を堅持したフィンランドのしたたかさが活写されている。
ノキアショック以降の情勢にも言及がある。
日本での最近のフィンランドの話題と言えば、ムーミン、サンタクロース、かもめ食堂、IT、優れた教育などだろうが、これらに対する著者の冷静な距離の取り方も、実にフィンランド的な感じがした。
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ロシア革命後に独立。ソ連に侵略されナチ・ドイツと共に侵攻するが敗退。戦後は中立政策を採り、IT・教育面で先進国となった軌跡
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フィンランドのロック・バンド、レニングラード・カウボーイズと
ロシアの赤軍合唱団とのジョイント・ライブ「トータル・バラライカ・
ショー」が行われた時、またロシアがフィンランドに嫌がらせに行っ
たのかと思った。
実際は非常にフレンドリーで素敵なライブだったし、赤軍合唱団の
主席ソリスト、ヴァレリ・ガッヴァなんてめっちゃいい笑顔で歌っ
ていた。実は映画された際のDVDを持ってるのだ、私は。
そう言えば、レニングラード・カウボーイズはレニングラードが
現在のサンクトペテルブルクに改称された時、「俺たちのレニング
ラードを返せ!」と歌ってな。
フィンランド繋がりでくだらないことを書いた。さて、本書である。
ムーミンとサンタクロース、キシリトールとサウナの国フィンランド
なのだが、800年の歴史のうち、600年はスウェーデンの支配下に、
その後の100年は帝政ロシアの支配下にあった。
ロシアの支配下などと聞くと、どんなに過酷だったのかと想像して
しまう。だって、第二次世界大戦のどくさくに紛れてソ連が侵攻
して来た冬戦争もあったしさ。
しかし、帝政ロシア支配下でのフィンランドはフィンランド大公国と
して大幅な自治が認められたことを初めて知った。スウェーデンの
影響を薄めようと、この時代にはフィンランド語の公用語化が推進
され、民族としての意識を高めたのもこの時代だったそうだ。
森と湖に囲まれた穏やか国との印象の強いフィンランドだが、ソヴィ
エト・ロシアを支持する赤衛軍と反共派の白衛軍との内戦は、本当に
国を二分していたのだな。
そんなフィンランドのロック・バンドが「俺たちの連イングラードを
返せ!」と歌っていたのだから、フィンランド人というのは実に寛大
な心を持った人たちなのかも。
800年を新書で描いているのでかなり駆け足の部分もあるが、独立後の
混迷や、東西冷戦時代に極力ソ連を刺激しないようにと考えた外交など、
スウェーデンとロシアという大国に挟まれた小国の、独立を守り、生き
残る為の術だと捉えれば理解も深まると思う。
尚、政治面ばかりではなく文化・芸術などにも触れられており、フィン
ランドの禁酒法やサンタクロース、ムーミンなどに関してのコラムもある
ので読みやすい通史になっていると思う。
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フィンランドの政治や歴史についてまとめられた本。
ドイツ、ソ連、スウェーデン。フィンランドは周囲の国の介入を受け、幾たびも戦場となり、翻弄されながらも舵取りをしてきた歴史を持つ。ハンザ同盟に参加し、デンマークを筆頭とするカルマル同盟と競った時代。
フィンランドのエリート層はスウェーデン語を話し、シベリウスもそうであったことを知った。
対ソ連対策のためナチス・ドイツと近接するも失敗し、反省からヨーロッパとソ連の間でバランスをとった20世紀。フルシチョフとのサウナ外交、ヨーロッパとの緩衝地。
高齢化、移民問題、放射能汚染を抱えていること。製紙業のノキアが情報産業に特化し、ゲーム産業で盛り返そうとしていること。
ムーミンが日本人に熱狂的に人気があること。
読書の楽しみを味わえる一冊。
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ムーミンとかもめ食堂のイメージしかなかったが、他の北欧とは歴史的にだいぶ違っていて、スウェーデンやロシアとの関係など全く知らないことばかり。勉強になった。
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序章 フィンランド人の起源―「アジア系」という神話
第1章 スウェーデン王国の辺境―13世紀~19世紀初頭
第2章 ロシア帝国下の「大公国」―19世紀~第一次世界大戦
第3章 揺れる独立国家フィンランド―内戦~1930年代
第4章 二度の対ソ連戦争―第二次世界大戦下、揺れる小国
第5章 苦境下の「中立国」という選択―休戦~東西冷戦期
第6章 西ヨーロッパへの「接近」―ソ連崩壊~21世紀
終章 21世紀、フィンランドという価値
著者:石野裕子(1974-、神奈川県、フィンランド史)
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中公新書の「物語 XXの歴史」シリーズにやっとフィンランドが加わって嬉しいことこの上なきかな・・・「物語 北欧の歴史」が出たときは、それはないんじゃないの!?と思ったものですから。北欧は、どうしてもひとまとまりにされますが(その最たるものが旅行用ガイドブック)、それぞれに違った歴史もあり、どこからの目線で何を見るのかがとても重要。ヨーロッパは、現代になってからでも、国境線が変わっている国が多いですが、少なくとも、北欧の国々は、第二次世界大戦後は、落ち着いているわけですから、各国別の「物語 XXの歴史」があってしかるべき。特にフィンランドは、スウェーデン王国に支配され、ロシア帝国に支配され、独立。2つの大国に支配されていた時代も、「植民地」的な支配のされ方をしていたので、「支配国」とは違った道を歩んでいるし、民族意識的にも違うのが特徴。知れば知るほど面白い、そんな国だと思います。
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スウェーデン、ロシア・ソ連、ドイツと周辺にある大国に翻弄されながらも、独自性を保ってきたフィンランドの歴史。大国に挟まれた小国がいかにして危機を乗り切り、世界に冠たる「フィンランド」のイメージを築き上げたのかがよくわかる一冊になっている。
国家規模などはまったく異なるものの、アメリカや中国といった大国に挟まれた日本にとっても示唆を与える内容だった。
また、文章自体もとても読みやすく、その点でも良書であった。
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「物語 フィンランドの歴史」
石野裕子著
中公新書
2017年10月25日発行
来年2019年、フィンランドと日本は国交樹立100周年。で、驚いたことに、フィンランドという国が出来たのは去年から100年前の1917年であり、それ以前はフィンランドとしての統一国家は成立していなかった。
それ以前の100年間は自治権のあるロシア領であり、さらにその前の500年間はスウェーデンが統治していた。
日本人にとって、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの違いがなかなかイメージし辛い。とくにフィンランドについて問われると、ほとんど何も答えられない。首都ヘルシンキの名も、すっと出てこない。
クイズ。これ分かる?
スウェーデンやノルウェーは王国だが、フィンランドは王国なのか、共和国なのか?
アジア系だなんて思っていない?
フィンランド人がアジア系だと誤解している人も多い。言葉はスウェーデン、ノルウェー、デンマークは、インド・ヨーロッパ語族のゲルマン語系だが、フィンランドはウラル語族。しかし、昔はウラル=アルタイ語族と一括りにされていたため、フィンランド人はアジア系だと思われてしまった。ウラル語族とアジア系のアルタイ語族の結びつきは否定されている。子供の頃は、中央アジアの遊牧民族である匈奴がフン族と同一であり、フン族が造った国だからフィンランドという、などと言う説を学校でも聞かされた。もちろん、それも真っ赤な嘘。
では、これはフィンランド!というものに何があるか?
・ムーミン
・ノキア(ただし携帯電話部門はもう身売りしている)
・サウナ(発祥国)
・マリメッコ
・かもめ食堂(日本映画)
・サンタクロース村
日本との意外な歴史上のつながり。
フィンランドは、ロシア革命の時にロシアから独立したが、オーランド諸島については島民がスウェーデンへの帰属を望んだため、国際連盟が調査団を送り、フィンランドへの帰属で決着させた。その時、国際連盟の事務局次長だった新渡戸稲造が活躍したらしい。この本には書いていなかったが、今でもオーランド諸島では新渡戸稲造の武士道が人気だとのこと。
禁酒法。
アメリカで施行されたのとほぼ同時期の1919~32年、フィンランドでも禁酒法が施行された。今も、ビールはスーパーで買えるものの、アルコール度数の高いその他の酒は国の専売公社でしか買えない。
フィンランドのトランプ?
フィンランドはリベラルな保守、中道、左派の三大政党が他の政党と連合を組んで政権を担当してきたが、最近はやはり反EUのポピュリズム政党が躍進して、三大政党と同じぐらいの規模になっているらしい。
意外な世界史。驚いた!!
この本を読んで、知らなかったフィンランドのことをたくさん知ることが出来た。しかし、フィンランド以外のことでも勉強になったことがあった。
第二次世界大戦は、ドイツがポーランドに侵攻した時点で始まったと学校で習ったが、その直前に結ばれたドイツとソ連の不可侵条約には秘密協定が付属していて、ポーラン��侵攻後の両国による分割と、フィンランドとバルト三国がソ連の勢力下に置かれるとの確認が行われていた。これは驚き。ドイツに続いてポーランドに侵攻したソ連。戦争のふりをして、最初から2国で分割する算段だったわけである。
なお、フィンランドは共和国であり、大統領がいます。