洒落たルックスの本にして、中味は深く広く。
2020/05/26 21:53
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
洒落た装幀が際立っていて「わっ!おしゃれな本!」と手に取りましたが、読んでみれば、描かれた世界は、深く、広くて、思いがけず、パリの街から世界の縮図を眺めることになりました。著者の二人が、このインタビューのために費やした時間は2週間だそうですが、たったそれだけの取材期間で、出逢えたおじさんたちのルーツ、アイデンティティ、シゴト、ライフスタイルetc…バリエーションの豊富さにまずは驚く。そして昨今の難民問題やテロ事件。移民の歴史から派生する、差別の歴史…読み進むうち、自分が知らなかったことの多さに眩暈すら感じました。
タイトルとファッション雑誌のイラストのような装丁からは、想像できない「おじさんの生き様から世界を見る」深い本だった
2019/03/16 13:26
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
ただ者ではないパリのおじさん大集合。おじさんの紹介はそのままフランスという国の有り様を紹介するものとなっている。
パリという土地柄なのだろう。ミラノで服をオーダーするおじさんもいれば、10着しか服を持たずにユニクロを愛するあまりユニクロで働くおじさんもいる。どちらも洒落者だ。ちなにに「ミラノ」のおじさんは「ピエ・ノワール」だ。直訳すると「黒い足」。かつて植民地だったアルジェリアに住んでいたという意味らしい。著者は「日本で言うなら満州引き揚げ者か」と例える。他人がピエ・ノワールとその人を呼ぶときは、差別的意味合いを含むという。アルジェリア戦争が終わったのは1962年。
アフリカ人街のダンディなおじさんは、コンゴ出身の「鬘屋」。自分の髪質にコンプレックスを抱くアフリカ出身者用の鬘を商っている。しかし、このおじさんは地毛のショートヘアの女の子が好きという。それは、アフリカを恥じないということにつながっているのではないだろうか。
生粋のパリッ子はもとより移民など人種のるつぼのパリの様子がよくわかる。
2015年パリの同時多発テロで130人がなくなり300人が負傷した。フランスのかつての植民地からの移民やシリアからの難民などが実行犯だった
日本であったらテロ後、移民・外国人の排斥が起きてもおかしくないだろう。
しかし、ユダヤ人など移民の歴史が連綿と続いてきたヨーロッパ、パリは、いまも外国出身者が歴史を作っている。第二次世界大戦でホロコーストを経験したユダヤ人のおじさんは「人は変わることが出来る」と語る。
差別もあるが懐も深い。難民支援をしているおじさんは「世界は救えない。ただ一人の人間に向き合うだけ」と活動を続けている。本書の最終章「いまをいきるおじさん」は、いろいろな出自を持つおじさんの来し方が語られる。移民の多いパリの魅力が溢れる。
その他、アートなおじさん達もパリならではだ。小劇場の役者のおじさんは、演劇だけで生活している。日本だったら貧乏役者のアルバイト生活となるだろう。しかしフランスでは、映画、演劇、キャバレーで働くフリーランスに最大月1600ユーロの失業手当が最大6カ月出る。表現者を大切にしているあかし。
「パリのすてきなおじさん」はそのタイトルとファッション雑誌のイラストのような装丁からは、想像できない「おじさんの生き様から世界を見る」深い本だった。
言われるほど深い本でもないが良作
2020/02/29 22:11
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投稿者:ライサ - この投稿者のレビュー一覧を見る
大学でフランス学科だった身としてはこのくらいのことを普通に話してくれるフランス人教師も沢山いたし、本の面でももっと深い内容の本は多くあるのも事実
とはいえ結構読み応えもあったしフランスを学べば学ぶほど嫌いになった身としても若干のフランス嫌いが改善された本でもある
芸術は経済に蹂躙された。ピカソは出世志向の強い嫌な奴だったから成功した
人生を学んでいるうちに手遅れになる。同じ意見ばかりではつまらない
フリーメイソン博物館とカトリックの対立
食事の際のワインは酒気帯び運転にならぬ。イスラム教とイスラム主義は違う
テクニックを隠し、食材を生かすことのみ考えろ
料理でも愛でも早いのはいけない。料理は芸術。芸術と職人
なお書店ではこの本は女性向けエッセイにカテゴライズされている
私は男性だが女性にとってはもっと評価が高くなるのかもしれない
すてきなおじさんがいっぱいです
2021/07/12 12:15
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投稿者:ろみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いろんな職業、生い立ちのおじさんの話が載っています。
どのお話も深く考えさせられます。新しい見方が得られたり、社会問題についてリアルな話を知ることも出来るのでオススメです。
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つい先日、中島京子著『ゴースト』を読んだところ。その中島京子が「推薦!!」と帯にあり、つい手に取ってしまった(笑)
お手軽なイラストエッセイと思い読み始める。「おしゃれなおじさん」「アートなおじさん」。フムフム、なるほどパリっぽい。
”選おじさん眼”に自信の著者が選んだだけあって、一家言を持ったおじさんが並ぶ。
「白と黒は補完し合う関係だ」と黒人系のピアニストは語る。 「2分考えればすむことを、みんな大袈裟に考えすぎ」とMUJIブランドを愛するシンプルを信条とするシャレ者や、ピカソを「嫌な奴だった」と述懐するアーティストは、芸術は経済に蹂躙されたと嘆息する。
たった二週間で取材したとは思えない含蓄に富んだオジサンたちの人生訓が陳列されていく。
やがて、「あそぶおじさん」の章で人生の真髄に迫り、「はたらくおじさん」「今を生きるおじさん」と進むにつれ、宗教や難民問題、昨今のテロや人種差別など、フランスという国家が抱える諸問題へと話が深まっていく。。。
昨年(2016)見たフランス映画『奇跡の教室』で、ひとクラスに29もの民族がいるというかの国の実態に驚いたが、本書に登場する67人のおじさんも人種、国籍、経歴、職業、宗教が実にバラエティに富んでいるのだった。
たまたま絵になる、フランスはパリのおじさんをモチーフに選んだのかもしれないが、今この渾沌とした世界の縮図とも言えるパリで敢行されたこの試みが、実に時宜を得て成功している気がする。
2015年に起きたパリ同時多発テロの現場となったカフェにも足を運ぶ。女主人(ここだけは、おじさんじゃないのだけど)は、一旦は取材を拒否するが、やがてこう語る。
「わたしたちは、生きることに決めたの。前を向くことに決めたの。そのためには忘れる時間が必要なの」
ここ数年の間、2度足を運んだパリだが、また見る目が変わった気がする。人種、民族、文化、宗教・・・あらゆるものが百花繚乱。花の都の愛称は伊達じゃあない。
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植民地政策の生々しい現実と、身の回りにいるキャラクターの強い人たちの話にぐいぐいと引き込まれました。
とても楽しい読書体験でした。
人は話してみないとわからないことが多いが、たくさんの人とたちのこだわりを聞くたびにその思いを強くした。
あまり意識していないけれども、似たようなキャラクターの濃い人たちが周りにいるかもしれない。そーゆー目でいろんな人たちと話をしてみるのもいいかもしれない。
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読む前はファッション関係の本かと思っていたが、そうではなく、パリに住む様々な背景があるおじさまたちの生き方やルーツなどがインタビューしてあり、フランスの歴史を少し知れて面白かった。
パリの地下通路の話、面白かったな。
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取材後記に書かれている「この旅は、人間というもの、生きるということの破片を集める旅だった」というまとめにしびれた読後感。
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カフェのオーナー、NPOの職員、市役所職員、先生、弁護士さんなど、パリで道ゆくおじさんたちに声をかけ、人生を語ってもらったことをまとめた本。含蓄あるセリフが多く、なんだかみんなおしゃれに見える。こういうおじさん目指そうかな。いろいろな名言も飛び出すが、気に入ったのは「料理人はテクニックを見せてはいけない。テクニックは食べられない」というセリフ。このほか「2分考えればすむことを、みんな大げさに考えすぎ」「はつらつとしていられることが一番大事。そのためには自分を知らないと」「機械を使えば二時間で出来ることを、僕は手で100時間かけてやりたい」「大事なことを後回しにするな。人生を学んでいるうちにすぐ歳を取ってしまう」「ほとんどの問題は他者を尊重しないことから起こる」などなど、みんな一家言持っているんだなあと感心。
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著者の金井真紀(1974年~)は作家・イラストレーター。
本書は、パリ在住40年のフリージャーナリスト広岡裕児(1954年~)と組んで、二人の共通の商売道具である好奇心と、金井氏の選おじさん眼と、広岡氏が自在に操るフランス語の3つを武器に、パリの街を2週間歩き回り、捉まえた67人のおじさんを“陳列”したものである。それぞれのおじさんについて、話に加えて、著者の描いたすてきな似顔絵が添えられている。
67人のおじさんは、ルーツ・民族・宗教・職業・年齢・・・実にバラエティに富んでいる。カリブ海諸国からの移民を両親に持つ絵描き(50歳)、世界中を旅するスペイン人のギター作り職人(76歳)、チュニジア移民二世の老舗クスクス屋の店主(50歳)、休日にサッカーに興じるアルジェリア移民二世のベルベル人(45歳)、人気サッカーチームのパリ・サンジェルマンのファンが集まるバーの店主(53歳)、毎日競馬場に通う引退したアルジェリア移民(92歳)、西アフリカ・マリからの出稼ぎのスーツが似合うコンシェルジュ(56歳)、フランス系ユダヤ人とチュニジア系ユダヤ人を両親に持つチュニジア生まれのお菓子屋(72歳)、中国浙江省生まれの小さな出版社を経営する中国人(50歳)、ホロコーストで両親と3人の弟妹をなくしたポーランド系フランス人(87歳)、在仏クルド人自治区領事館に勤めるイラクから逃げてきたクルド人(29歳)、キュリー研究所で長年ガンの研究をしてきたベトナム人(76歳)、等々。
私は知命を過ぎた、まさに著者のメインターゲットとなるおじさんで、「“すてきなおじさん”になるためのヒントが得られるといいな~」くらいの気持ちで本書を手に取ったのだが、登場するのは期待に違わぬ味のあるおじさんばかりであった。
しかし、それにも増して印象に残ったのは、たった2週間の滞在でこれほど多彩なおじさんに出会う、パリという街の奥深さであった。パリはやはり、様々な歴史・地理的要因を背景にした人種のるつぼであり、ある意味、世界の縮図なのだ。(東京で同じことをやろうとしても絶対にできない)
すてきなおじさん達の話を聞きながら、世界の多様性を感じることができる良書である。
(2018年2月了)
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フランスのおじさんにインタビューをして、似顔絵とともにその人の半生やポリシーを紹介する。20人超くらい?
とても素敵な発想だなと思いましたが、あまり入り込めず、後半はちょっと飽きてしまいました。
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パリ在住のおじさんの人生模様を無作為なリレー形式で語りつつ、いろんな問題提起をしていて興味深く読めた。
日本にも闇というか改善ポイントいっぱいあるけど、フランスもそれなりに抱えてる。
ただその問題をどう受け止めるかという姿勢とか考え方はフランス人の方が一歩も二歩も先だなと。
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友人の紹介で読んだが、1つ1つの話がテンポがよく非常に読みやすい。
フランス在住のおじさん、広岡さんの視点やコラムもいい。
そして絵もすてき。
そしておじさん毎の章のタイトルが、そのおじさんの言いたいことを物語っている。
それぞれの生きたあかし、人生を語っている。
もう15年以上、パリには行ってないけど、ただ、ここまでフランスに人種が入り混じっているのは正直驚いた。
フランスの複雑な社会構造も勉強になった。
繰り返し読む本になりそう。
広岡さんみたいなパートナーがいないと難しいかもだけど、同じ移民大国イギリスやアメリカでもやってほしい。
あと、ネイティブ・アメリカンやアボリジニの話なんかも。
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パリ在住の素敵なおじさんたちをインタビュー。パリといえばまずは華やかなイメージを思い浮かべるけれど、歴史、難民、テロ、華やかでない面もあり、インタビューされた方の心に影を落としていた。それをうまく引き出して書いている。素敵な絵とともに、目の前で話を聞いているようで、時にはああたたかく、時にはじんわり、時には寂しさが伝わってくる。移民の国でもあり、おじさんたちは、宗教もバラバラで、インタビューされたのはごくごく一握りの人だけれど、一人一人がパリを作っているんだなあと。ユダヤ人のお話しなど、歴史を語るところもあり、一面ではあるが、ガイド本とは違うパリを知れる本ではないかな。また、哲学的なセリフもあるので、心がブルーな時に読んでも。それにしても素敵なおじさん集めてきたね。
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おじさん大好きの著者がパリで出会ったおじさんにインタビューして、イラストを添えて、といった感じの本。
人間味が出てこそ、すてきなおじさんと思ってもらえるのかも知れない。