紙の本
「国際的な原器」から「物理的に不変な物」へ
2018/06/11 16:18
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「キログラム原器」がなくなる!? 2019年5月、質量の単位の定義が130年ぶりに変わります! 4つの単位が新しい定義に。単位を決めるとはどういうことなのか?「単位」と「科学」の深い関係とは?国際度量衡委員の著者による単位についての本。いよいよ最後の原器が用いられていたキログラムが基礎的な定数との関係を使って定義し直される。1889年に30個作成されたメートル原器と40個作成されたキログラム原器が日本にあることや、原器を保管している国際度量衡局はナチスも侵攻時しなかったと言う興味深いエピソードが紹介されているが、内容は7つの基本単位(長さ、質量、時間、電流、温度、物質量、高度)の現在の定義も簡潔に紹介され、古典物理学の限界の中で新しい単位の定義がどうなるか、ガッツリ解説されている。面白い小説をよんでいるような本。
電子書籍
あなたの知らないところで...
2021/10/24 15:01
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投稿者:忍 - この投稿者のレビュー一覧を見る
冒頭のキログラム原器を状態を確認するシーンが、怪しい宗教か秘密結社のような感じで、場違いかもしれませんが、思わず笑ってしまうところです。
一般の人々が知らないところで、こんな苦労されているというのは、ある意味で滑稽なところでもあります(担当されている方には失礼ではありますが...)。
「バカバカしいと思うなよ、やってる本人大真面目」by ラビット関根といったところでしょうか。
それでも、こういう屋台骨になるところをきっちり押さえておかないと、それに乗っかかっているすべてがガタガタになてってしまうというのはとてもスリリングです。アボガドロ定数を決定するために、各国が技術力で争って答えを出し、その答え合わせをすることで、結果が確からしいことを結論付ける、というあたりは、何が何だかわけがわからないけれど、とってもすごくて面白く、まるで最先端のハードSFを読んでいるようです。
紙の本
重さの単位であるキログラムの定義が2019年から変わり、それを科学的に検証した画期的な一冊です!
2020/02/10 11:55
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、重さの単位であるキログラム「kg」が130年ぶりに新しくなるという機会に、再度、重さ、質量というものについて科学的に考えてみようという画期的な一冊です。重さの単位として知られるキリグラムは、1889年のメートル条約によって「国際キログラム原器」を基準に設定された質量の単位です。当時は、この国際キログラム原器は、腐食せず、摩耗にも強く、慎重に扱えば10万年は機能するだろうと言われていたのですが、製作から約130年が経た今、その原器の重さが揺らいでいることがわかってきたのです。基準が変化すれば、その重さも変化します。同書では、科学的に測定という行為とその結果を表示する単位について再考察した興味深い一冊です。
紙の本
特に理系の皆様方には、是非是非読んでほしい一冊
2018/06/14 00:16
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投稿者:アルファ - この投稿者のレビュー一覧を見る
あるところで、「近いうちにkgの定義が『キログラム原器の質量』ではなくなる」という話を聞いて、その後書店でこの本を見つけた時に気になって購入しました。
少しでも自然科学を勉強されていた方なら、SI単位系はもちろんご存知でしょう。
その「単位の定義」というと、もちろん実務的にも重要ですが、同時に精度良く再現でき、かつ他と循環依存にならないように定義するために、研究者達が力を注いでいるものでもありますね。
普段何も意識せず使っていたメートルとかキログラムとかいう単位も、10桁前後という精度が保証されるような定義を決定するって、もの凄い大仕事だと感じさせられます。
紙の本
私たちの身近にある”単位”について深堀下1冊。分かりやすく、内容充実。さすが、ブルーバックス。
2019/02/04 17:45
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
長さ(メートル)や重さ(キログラム)、時間(秒)など私たちの日常生活には当たり前のように様々な「単位」が存在しています。これらの単位がどのように定義されて来たのかという歴史をひもとき、そしてその定義が科学技術の発達に伴い、どう変化していくのかを易しい切り口で紹介する本です。
かつてメートルの定義は地球の子午線を基準に定義され、基準はメートル原器という合金製の棒でした。科学技術の発達に伴い、より高精度が求められ光の波長、そして光の速度を用いた定義へと進化して行きます。
「単位の定義以上には高精度の測定ができない」という制約が、それぞれの時代における最先端科学によって単位を定義する動機付けとなっています。
そして長らく単位の再定義の流れの中で、フランス革命の時代に定義された質量の定義である「キログラム原器」という分銅のような錘で定義されてきた質量の定義が約130年ぶりに改められるという歴史的な瞬間を迎えようとしているのです。これら興味深い事実なども踏まえ、単位の定義がいかに私たちの日常生活に大きな影響を与えているのかを読みやすい新書サイズにまとめた一冊です。
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腐食せず、摩耗にも強く、慎重に扱えば10万年は機能するだろうと言われていた「キログラム原器」。しかし、製作から約130年がたったいま、じつはその原器の重さがゆらいでいることがわかってきました。重さの基準が変わってしまえば、1グラムあたりいくらという約束によって成り立っている取引も安心して行えません。絶対に変わらず、誰にとっても納得できる「重さ」の基準とはなにか? 最先端の科学がその難題に挑みます。
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長さ(メートル)や重さ(キログラム)、時間(秒)など私たちの日常生活には当たり前のように様々な「単位」が存在しています。これらの単位がどのように定義されて来たのかという歴史をひもとき、そしてその定義が科学技術の発達に伴い、どう変化していくのかを易しい切り口で紹介する本です。
かつてメートルの定義は地球の子午線を基準に定義され、基準はメートル原器という合金製の棒でした。科学技術の発達に伴い、より高精度が求められ光の波長、そして光の速度を用いた定義へと進化して行きます。
「単位の定義以上には高精度の測定ができない」という制約が、それぞれの時代における最先端科学によって単位を定義する動機付けとなっています。
そして長らく単位の再定義の流れの中で、フランス革命の時代に定義された質量の定義である「キログラム原器」という分銅のような錘で定義されてきた質量の定義が約130年ぶりに改められるという歴史的な瞬間を迎えようとしているのです。これら興味深い事実なども踏まえ、単位の定義がいかに私たちの日常生活に大きな影響を与えているのかを読みやすい新書サイズにまとめた一冊です。
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とても面白かった。かつての原器使用時の課題から、いかに時を経ても変わらないものにするか、そしてそれを実現するためのアイデアと測定技術の進歩。
よい意味での変態が、科学技術の土台を支えているのだなあと思う。
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時間や長さ、重さなどの基準が10億分の1程度かわっても日常生活には何の影響もない。が、単位と単位は相互に依存しあっているし、単位の定義の確からしさ以上の精度をもって物事は測定できない。メートル原器のように手で触れるものからより物理学的で世界中どこでも再現できる基準に変更していこうというメトロロジスとたちの熱気も伝わってくる本。
役にも立たない知識、と言ってしまえばそれまでだが、役にたたないことこそ面白いという好例。
・1メートルは北極点と赤道の間の子午線の弧の1000万分の一、1キログラムは水1リットル(1メートルが定義されると10cm立方の大きさも決まる)の質量、として1798年に定められた。1875にメートル条約が定められた時、子午線の長さを再測量しようという話もあったがこれまでとの整合性を重視して当時使われていたメートル原器の値を継承することにした。
・キログラム原器はその保管場所に三重の鍵がかけられており、それぞれ別々の三人が持つ鍵がそろわないと中にあることが確認できない、というぐらい厳重に管理されているが、1889年に作られて以来、50μg(おそよ指紋一個分)ほどの変化が生じているとされている(副原器との比較からの推測)。
原器から離れて定義を策定しようという時、重量を定義するためには2つの方法が考えられた。一つは既知の原子を多数集める(アボガドロ定数を正確に求める)、もう一つは電磁気力によって発生した力を用いるもの。
E=mc2を用いて
質量=プランク定数X電磁波の周波数/光の速さの2乗
ということもできるが、プランク定数を正確に求めることはアボガドロ定数を求めることと等価(両者の関係を表す式がある)
純粋な結晶での原子一つが占める体積は分かっているため、まず、シリコンの結晶を作ろうとした。シリコンには大多数を占めるシリコン28の他に29,30などの同位体がある。そのため、シリコン結晶をこのまま使っても制度は1000万分の1レベルが限界であった(キログラム原器は1キロ当たり50μgなので1億分の5)ため、制度が一桁不足している。
この問題の解決のため、冷戦の終結によって使わなくなった遠心分離機をロシアが提供することを申し出、シリコン28を濃縮するという国際プロジェクトが立ち上がった。
得られたシリコンの結晶を正確な球体に切り出す技術は日本とドイツのみが有しており、これでシリコンを切り出した。
その結果、「キログラムはプランク定数の値を正確に6.62607015X10-34ジュール・秒と定めることによって設定される」という定義ができた。
・温度は水の氷点が0度、沸点が100度、絶対零度がマイナス273.15度。しかし、氷点は実際は氷水が空気に触れている状態のため空気が溶けて凝固点降下などの影響があって安定しない。そのため、現在では水の三重点(固体、液体、気体の三相が存在することのできる温度)がを基準にとっているが、これはマイナス0.01度。なのでケルビンの一目盛りは273.15分の1ではなく273.16分の1。
・秒は最初、地球の自転(一日=86,400秒)をもとにしていたが季節変動や経度���動があるため1956年に地球の公転に基づく定義(1年=31,556,925.9747秒)に変更された。その後、原子周波数標準の研究が進み、1967年にはセシウム原子の固有の周期に基づく定義(Cs133原子の9,192,631,770周期)となっている。こうした定義の変更のたびに精度は二桁ほど上がり、現在の不確かさは10^-14のレベル
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質量の基準が実体としてのキログラム原器から物理定数を基準とした抽象的な定義へと変わることを最近の報道で見かける。本書では、まさにその定義変更に携わった著者が、質量だけでなく、様々な「単位」について解説している。
もっとも、新しいキログラムの定義は、プランク定数やアボガドロ数を用いるなど、素人から見ると概念的で、正確さ(誤差)は減るものの、イメージはしにくい。その上、本書の前半の「長さ」(メートル)の定義の仕方について、原器から光速を基準としたものに変更する部分の記載で、「時間」(秒)が誤差なく決定できるということが何の説明もなく前提とされていて、そこで引っかかってしまった。
というわけで、少々読みにくい部分もあるが、様々な単位の再定義により、例えば、質量であれば、誤差は原器が負うことになるなど、基準の変更によって考え方や実態が変わるという部分は中々興味深かった。
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昨年、キログラム原器が年々重くなっているなどのニュースが取り上げられていた。その後はまったくと言っていいほど後日談が語られず、どうなったのか気になっていたところに図書館で目に飛び込んできたのがこの1冊。もともと品質管理の仕事をしていた事からキログラム原器に変化があれば常日頃の検査データにおいても変化が生じるので?と考えていたので読んでみた1冊となりました。
メートル・秒・カンデラ・キログラム・アンペア・ケルビン・モルの7基本単位のうち、キログラム以降4つの単位は2019年5月20日(読了の2日前!)に改定が行われたとの事。日常これらを何気なく使っているが、今すぐ問題が発生する事ではないとの事。今後さらに科学が進歩すれば誤差が生じでくるのだろうが、それはこれからの問題。自分の生活では必ず使う単位。それらを見過ごさずにいきたいと思った。
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何気なく使っている「単位」。その裏でこんなドラマがあるとは。
この話はぜひ中学校あたりで知ることができたら面白いのではないかと思いましたが,大人になって,「測る」ことに興味がでたから面白いのかもしれないとも思いました。
私たちの世界がいかに誰かの支えによって安定しているかがわかるお話でした。
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第95回アワヒニビブリオバトル「テスト」で紹介された本です。オンライン開催。チャンプ本。
2023.1.14