紙の本
朝ドラ的な展開
2019/02/18 09:48
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投稿者:touch - この投稿者のレビュー一覧を見る
かなりの分厚さに少しひるんだが、以前、話題になった本だったので読んでみることに。
昭和30年代から現在まで、三世代に渡る塾を通した教育の話。
ちょっとNHKの朝ドラ的展開にもみえる(主人公はヒロインじゃなくて、どちらかと言えば男性になるが)。
読み始めは、学校教育では成し遂げられない理想(落ちこぼれの救済みたいな)を、塾が実現していくというサクセスストーリーかと思っていたが、そうスンナリとはいかない。
でも、そこが面白い。
理想の教育と生き残りをかけた塾の経営。
個性豊かな三姉妹のそれぞれの生き様。
様々な波乱万丈物語が繰り広げられるも、最後は、きっちりと心地よく終わってくれる。
ところどころ、教育に対する主義主張が色濃く述べられていたり、いきなりポンっと数年跳んだり(しかもその間に、人が亡くなっていたり)して、多少、読みづらいところもあったが、「ある家族の叙事詩」的な感じは、私は嫌いではない。
NHKで、全5話でドラマ化しているが多分短すぎるんじゃないか?(まだ見てないけど)。
蕗子をヒロインにして(蕗子目線で大島家を描くみたいな)、朝ドラ化したら面白くなるかもと思ってしまう話だった。
紙の本
朝ドラ感
2021/10/22 11:23
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投稿者:夏のメロン色 - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏の文庫キャンペーン時に、なんとなく購入した本で、ぱっと読んで手放してもいいかなと思っていたのだが、じっくり読んで、手元に置いておきたくなった本。
塾経営という視点が新しい。脈々と続くストーリーに、朝のドラマのような印象を持った。
電子書籍
教育者としても妻としても
2021/09/29 14:57
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
自らの教育理念を信じて、時代の荒波に立ち向かっていく千明が勇ましいです。夫・五郎とのつかず離れずの距離感も絶妙でした。
紙の本
みかづき
2021/04/29 20:08
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
塾、教育といった世界にあまり興味がなかったのですが、読んでみたら流石森絵都さんということで面白かったです。三世代に渡る話なので長さも読み応えもあり、強烈なキャラに辟易しつつも楽しめました。
紙の本
みかづきの意味
2021/03/22 12:57
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
よりよい教育を追い求める人々の波瀾万丈の物語。
理想に向かって暴走する千明の生き方はどこか悲しく見える。
一族、彼らに関わった人々の願いが一郎の選択に結実したようで嬉しい。
パーティーでタイトルの意味がわかったときに胸が熱くなった。
良作。
紙の本
昔と今の教育 そして家族の関係
2019/09/22 10:22
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投稿者:Mollie - この投稿者のレビュー一覧を見る
みかづきというタイトルと、あらすじが書かれた帯の文章と、はじめ結びつきませんでした。月のイメージって、満月から削れていって、新月になって真っ暗に。そしてまた、細い光から再び満月へと。昔は、教育を大切にしてた。大切にしたくてもできなかった。でも、本当にゆとり教育をやって、どうなったんでしょうか。教育の差が、さらなる差を生み出しているのかな。
主人公たちのもつ志に、涙が出ます。
紙の本
描かれていない部分も読みたい!
2019/02/11 18:11
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
NHKのドラマが始まる前には読もうと思っていたのだが・・・始まってしまった(とはいえ、そのドラマは録画しているだけでまだ観ていないのだが)。まぁ、読み始めればどうせサクッと読めてしまうはずなのでのんきに構えてしまっていた。実際、読み始めたらほぼ一気読みだったのだが。
千葉県、用務員として小学校に勤務している大島吾郎は、勉強で困っている子供たちに放課後教えるようになる。それを知ったある児童の母・赤坂千明に強引に誘われ、学習塾の立ち上げにかかわることに。その後の大島家三代と教育とのかかわりを描く大河小説。
物語は昭和36年から始まり、ゆとり教育その後まで続く。
そこそこページ数はあるのだが、なにしろ三代にわたる物語であるが故に章と章の間が結構時間が飛んでしまい、「その間のことは?!」といまいち物足りなさがある・・・吾郎・千明についてはそれなりにページが割かれているが、その次は孫の一郎に行ってしまい、吾郎の子供たち(3人いるのに)はいまひとつ脇役扱いなのがちょっと。
それぞれを均等に書いたら朝ドラ一年やっても足りないくらいの量になってしまうからかもしれないけど、塾業界の変遷を主題に据えるなら主人公が次々変わってもいいわけで、一族の話でもあるのだからもっと読みたかった。
たとえば、聡明なよい子として育った蕗子が母に絶縁状をたたきつけ、その後いかにしてその母と同居することになるのか、蕗子視点で読みたかった。視点人物以外のことが気になる。
ということはそれだけ、入り込んでしまったということでしょう。
家庭の貧困さのための教育格差のあたりはちょっと泣いてしまう。私は軽い登校拒否から読書によりのめり込み、本を読んでた貯金があったので義務教育はあまり苦労しなくてすんだから、結果オーライだったのだなぁ。今の子たちは大変だ、2020年は入試改革だそうだし。
私自身は塾にお世話になったことがなく、むしろ学生の時は働く場所のひとつだったので、塾の歴史は興味深かったです。塾の理想的な形を模索すれば理想的な学校になっちゃうところとか。
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親子三代に渡る教育大河小説
長く児童文学という形で子どもに関わってきた作者ならではの視点はどこまでもまっすぐで潔い
学校教育で1人1人と向き合って
それぞれの個性を伸ばす教育を行うことは難しい
これはどの時代でも同じこと
でも近年特に意志を持たない虚無の目をよく見る
わからないからやらない
恥をかくから手を上げない
子どもたちから主体性を奪ったのは
1〜5の数字や⚪︎×を主観で示すようになってから
ではないか
ひとりの人間が目を手を伸ばすことができる人数は少ない
その限られた人数で飽き足らず
組織になった時対応できる人数は増えるが
初心を忘れず同じように真摯に向き合うことは難しい
教育の需要と供給はいつまでたっても
対応することはなく
子どもたちを主として語られることも
なかなか難しいと思うとやるせないなと思ってしまう
作品を通して刺激がたくさんあった
まずはスホムリンスキーを読もうと思う
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『欠けている自覚があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むのかもしれない』
三日月の自覚はあれど研鑽には程遠い毎日を送っている我が身を棚に上げても、子供達に関わる大人の心の片隅に遠くても手が届かなくても目指すべき満月があることを願ってしまいます
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テーマもユニークで、ストーリーも3代に渡る充実したもので、楽しめた。語り口を大変よく、かなりの長文小説だが、引き込まれて、楽しんで読み勧めた。同作者の風に舞い上がるビニールシートもテーマが面白くて楽しめたが、他の小説も読んでみたくなった。
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戦後教育史を背景にした、大河小説。すごい本だ。森絵都さんは、なぜ、こんな本が書けるのだろうと思う。
テーマが、教育史というのだけでもすごい。「教育」には、本音と建て前が入り乱れ、実像が分かりにくい。文部省の施策だけを並べてみても、教育史の本当のところは、見えてこない。
自分の子に高い教育を受けさせ、将来は人よりもいい生活をさせたいという、ひと昔前の庶民の願望が、塾の隆盛をよんだのだろう。私も、塾に通っていた頃があったけど、塾のことは大っぴらに言うべきことではなく、特に、学校では内緒で、だけど、塾での友達は、学校での友達とは少し違ってて、それはそれで楽しかった。この物語は、影の存在である塾を経営することになる家族の物語。
戦前戦後の教育のあり方に怒りを覚える一人の女性が、満足な学歴はないが、子供に勉強を教えることに天分のある青年と出会う所から物語が始まる。少なくとも前半の主要人物である彼女は、まるで信長のように、自らの信念に従い、のめりこむように塾を経営する。どう見ても、人から慕われるタイプではない彼女が、晩年に差しかかった頃、絶交していた娘と再会し、野菜の値上がり一つをとっても、昔は教育の材料になったものだと語るところなど、胸を突かれる。この報道の発信源はどこか、野菜の高騰が冷夏によるものであるとするのは誰の判断か、このキャスターにこのニュースを読めと指示したのは誰か・・・あらゆる角度から、みんなで検討し、何事もうのみにせず自分の頭で問い直すことを学ぶのだと。
自分の頭で考える力を伸ばす教育への思いが、後半に向けて、行間から感じられる。誰かにとって都合のよいタイプの人間を点数で競争させて大量生産するような教育ではなく、不条理に抗う力を身につけるための教育。
というのも、この物語の一面に過ぎない。夫婦の物語であり、母と娘の物語であり、未開の大地を進む人たちの物語でもある。昔の先生方の息吹を感じることもある。
そして、この家のペットの変遷・・・野良犬出身のショコラ、猫のしろう、フェレット、亀と数えるだけでも、面白い。
今日もまた、教育に関する報道がやかましい。神戸市のベテラン教師から若手教師へのいじめ問題や、民間の英語検定試験の入試への導入についてのいざこざやら。教育についての不祥事の報道は、後を絶たない。だけど、大事にしないといけないことは、一時の報道をうのみにして批判を繰り広げることではないのだろう。
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昭和から平成にかけて、教育行政と塾業界と社会の関わりを背景に大島吾郎とその家族が歩んだ道を登場人物の心情と共に見せてくれる。彼はのんびり、妻はシャカリキ、子供たちは様々に。
私が過ごした小中高時代の教育と自分の子供たちが受けた教育を深く考えた事は無かったと気付く。教育だけで人間が出来上がるわけではないけれど、人としての核をどう作るかは大事だと思う。
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新刊の広告を見て、早速とばかり本屋さんに行く。
昭和36年に千葉で学習塾を立ち上げた夫婦と家族の50年に亘るお話しが600余頁にずっしり。
細かな経緯の描写を排して昭和から平成の時代をダイナミックに切り取る章立て。
淡々とした筋の運びだが、私たちの世代が歩いてきた道と重なることもあるからか、何気に最初から惹き込まれる。
教育に対する思い、教える側と教わる側の呼吸、理念と経営の両立、夫婦の情愛の機微、子育ての苦労、血の繋がりの不思議…、色んなテーマが綯い交ぜになった連続テレビ小説の体。
夫々のテーマについて考えさせられるところがあったけど、仕事に悩む今の私の心には、登場人物の誰もが自分のやりたいことを探し出し人生をかけてしっかりとそれに取り組んでいる姿がしみじみ沁みた。
せちがらい競争で人生潰してきたかもしれないけどさぁ…、もう戻れないもんね。
『どんな子であれ、親がすべきは一つよ。人生は生きる価値があるってことを、自分の人生をもって教えるだけ』という言葉に、もう一度立ち上がる気持ちを貰ったと思おう。
人生まだまだ『満月たりえない途上の月』と。
最後の章だけ多少トーンが違ったが、かつて私たちが受けたに違いない“子どものための教育”が能力主義と国家主義に取って代わられてきている現状に対する失望と憤りが、小説として無理のない形で分かり易く語られていて、これには共感。
全編通じて、色々響くところがあったが、最後の終わり方も余韻あり、じんわりときた。
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三世代に渡る話で長かったけど、教育がテーマでとても興味深い話だった。そしてとても大切な話をだとも思った。でも一度に読むには長すぎたような気がする。
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これは見事という他ない。教育業界のダイナミックな変化、そして大島家の奮闘に、ワクワクしっぱなし。大島家の人たち一人ひとりみんな個性が強く魅力的。吾郎さんが女性に弱かったり、千明が猛女だったり、次女が危なっかしい性格だったりと、実在の人にしか思えない。
仕事も家庭も山あり谷ありの、長い長いものがたり。塾と文部省の対立や、塾どうしの抗争など興味深い問題も多く盛りこまれ、読みごたえずっしり。
とくに最後の1章、孫の一郎くんの活動には胸をうたれて涙がとまらなくなってしまった。家業がイヤでたまらなかったのに、勉強できない子どもたちのことが心配でたまらなくなるとは。血がつながっていようがいまいが、人は人から影響を受けて成長するのだ。
教育という険しく高い山に、あっちからこっちからいろんな方角から、それぞれのルートを模索して、どうにか登ろうとする大島ファミリーの情熱がすごい。胸を打たれずにいられない。教育って、それだけ奥行きと魅力のある底なし沼なんだなあ。
八千代台に津田沼に船橋に勝田台……千葉県育ちにとっては身近すぎる場所がたくさんでてきて、それも嬉しかった。