紙の本
これが上橋の原点!
2019/06/24 23:02
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投稿者:papakuro - この投稿者のレビュー一覧を見る
守人シーズで有名な作家のデビュー作ということで、作家も後書きで赤面物のようなことを書いていますが、確かに若さを感じさせる。良くも悪くも力が入っているんでしょうね。
「精霊の木」というタイトルなのに、表紙絵は角のような2本の岩山が夕日のような光に照らされているところですが、一応物語の重要なシーンです。
後書きや解説に、(単行本の)挿絵が大変素晴らしかったようなことが書かれていますが、それならなぜ文庫版には収録しなかったのでしょうか。(まあ、絶賛されている二木さんの絵は個人的には好みではありませんが)
開発者が原住民を虐待した世界で、祖先の記憶を受け継いだ原住民の子孫が追い詰めながらも事実を暴いていくといった内容で、作者はアメリカインディアンの状況になぞらえている。
作者の沖縄でのフィールドワークが元にあるようですが、琉球民族やアイヌに対して日本でも似たようなことはあったのだろうとは想像される。(今でこそ日本人とされているけど本当は異民族だよな)
まさに「精霊シリーズの元です。これが上橋の原点です!」という作品ではある。
それにしても留守録がカセットテープって・・・・時代を感じさせるなぁ。しかもそれが切り札になるのかと思ったら、結局ならんのかい!?というあたりがやっぱり若というか、編集に盛り込みすぎと言われたところなのだと思う。
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まさに近未来小説
2020/10/03 20:17
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
近未来SF小説?上橋さんのデビュー作とのこと。児童文学と言いつつ、タイトルの精霊の道やら精霊の木やら少し概念が難しく感じました。しかし、この物語には、環境問題や民族問題をはじめとしたテーマに対して強烈なメッセージが込められていると感じました。設定が、地球が環境破壊によって滅亡。それも核廃棄物を海で処理したり、オゾン層の破壊など、多くの人がこのままでは破滅すると分かっていたのに、破壊のスピードがゆっくりだったために気づいた時には時すでに遅かった、だから地球を脱出したという設定は、まさに近未来を見るようで怖く感じました。難しかったですが、少し考えさせられました。
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魂は一つ
2019/06/18 05:48
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投稿者:***** - この投稿者のレビュー一覧を見る
SFである。近年の科学技術の急速な変化で、古いSFは辛いものがある。音声保存媒体はテープなんだな。若書きである。作者自身が述べているように拙さはあるけれど初々しい。
表現方法やジャンルに関係なく、時空を超えた誰かとのつながり、守りたい約束、動植物や気候・地形などと共にある生き方、といった作者が「大切」にしたいものは一つ。人と人、環境と人の関係の中でしか誰も幸せに生きることはできない。
だけど、金や地位や組織のために、幸せとは違う道を選ぶ人が絶えないのもこれまたヒト自体の孕む必然なのか。
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物語の種 ここにあり!?
2019/06/06 23:07
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投稿者:ぽんたろう - この投稿者のレビュー一覧を見る
上橋奈緒子さんの作家デビュー30周年記念と大々的に謡われての新潮社からの文庫化。偕成社版も入手していたものの、ちょっともったいなくて読んでいなかったのだが、持ち歩きしやすい文庫版となってあっという間に読み終わってしまった。通勤途中に読んでいて、うっかりあちらの世界に引き込まれ、予定していた駅よりも早く降りてしまったり、熱中しすぎて乗り越してしまったりで、物語パワー凄しでした。
ご本人のあとがきによれば、30周年を記念した文庫化にあたり読み直し、気恥ずかしかったというようなことをお書きになっているけれど、その気持ちも十分に理解できる一方で、やはり上橋さんの創造する世界にすんなり入り込みました。
小学校の卒業式で校長先生が祝辞として卒業生となる私たちに語りかけてくださった「経験したことがないからわからないではなく、経験しなくても理解できる、予測が立てられる、相手の気持ちを感じたり、物事を見通す力をつけてください。」という言葉に呼応するような感覚を覚えました。
フィクションを読む楽しみだけでなく、大切さをも感じる素敵な作品です。
いくつもの「あとがき」を読むことができるのも再版を重ねているからこそだな、と思います。
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設定はSFなんだけど,上橋先生の世界がめいっぱい詰まっている.
「デビュー作にはその作家のすべての萌芽がつまっている」とは,まさに言い得て妙.
そんな作品です.
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他者の文明を滅ぼし、人は生きるべきなのか。
考えさせられることが多い内容。
30年経っての文庫化に言葉を失う。
今、出版界は曲り角に来ているかだろう。出来れば、良い本は安価で手に取りやすい状態にして置いて欲しい。
それが児童書であれば、尚のこと。
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デビュー作の上橋菜穂子さんは
そのストーリーも筆運びも
若々しくて初々しいですね。
一番意外だったのは
当時は作中の食べ物描写には
あまりこだわっては
いらっしゃらなかったのですね。
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ちょっとSFぽいファンタジー。 あとがきに書いてあるが、元々はもっと長編であったものをかなり削って一冊にしたようだ。話の内容がやはりファンタジーで最後は精霊が出てきてハッピーエンド。そこそこしっかり読めるが、やはりかなり端追ったところがちょっと読み返しが必要になったりしている。まあ大丈夫! でもほのぼのとしたいい話だった。
獣の奏者に通じる。
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獣の奏者で出会い、それから追い続けていた上橋さんのデビュー作が文庫化と聞いて。
内容の民俗学的要素の濃さは変わらず、SFっぽいさは今では見られないので新鮮だった。
30年も前の作品だし、今に比べれば当然目劣りするが、テーマ的にも、多くの歴史を振り返り、考えることの多い一冊だなぁと思う。
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子どものころ図書館で借りて読んだ気がする・・・けど、すっかり忘れていたので文庫化されて嬉しい一冊。30年前のデビュー作ということで、当時のことや30年の間にこの本がたどった経緯などがあとがきと解説でつまびらかにされ、その部分も興味深い。
少年少女が使命に目覚め、大人たちから逃れつつ(ときには戦い)託されたバトンを渡そうと走るSFファンタジー。善人、悪人がはっきりしていてわかりやすい。
宇宙へ飛び出して他の星に住めるまでになった世界と、インディアン的な存在の邂逅は表面的には穏やかなものとされていたが、裏では容赦ない一方的な侵略が行われていた・・・起こりえないとは言い切れない、一定のリアリティが含まれるところが背筋を寒くさせる。
でもやはり印象に残るのは、うつくしい場面。「過去を夢見る」リシアが、ドンが夕暮れの中でうたう日を夢に見る・・・そのシーンはとても映像的で、物語のさらなる進展を予感させ、また同時に失われたものの切なさを感じさせる。物語全体のトーンを象徴するような一瞬だった。
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デビューから30年。初作品の文庫。30年前の若さが、少し硬めに光っていて眩しい。今の作者だったら違う書き方をするだろうけれど、その時にしか書けない書き方も良いなぁと思う。心の奥深く根っこにあるものは変わってないとちゃんとわかる気がするから。
リシアとシンのように数日のぶっ飛んだ経験があっという間に成長させてくれる、何てことが起きる可能性はほんの数パーセントあるかないかの自分は、日々少しずつの成長を積み重ねて、あれっ? いつの間にか変わってる!! と気付くのを楽しみに毎日を過ごすのです (^^♪
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物語の時間軸が大きい。
文庫本一冊なのに、957年の歴史が語られている。
二度と会うことのない旅立つ息子へ、いつか会うだろう息子の子孫へ希望を託す母親。
何世代にも渡る種族の希望と絶望を、毎晩の夢に見る少女と、彼女を守る少年。
上橋菜穂子の三十年前のデビュー作を文庫化。
環境破壊により地球に住めなくなった人類は、宇宙へと生息の地を移した。
それは、新たな破壊活動の始まりだった。
ナイラ星のとある炭鉱で、ある日、岩と岩の間に夕焼けのような空間が伸び始める現象が確認される。
中央太陽系から遠く離れた辺境のナイラ星には、かつてロシュナールと呼ばれた先住人類がいたが、100年前に絶滅した。
彼らは精霊を共に生きる種族であり、不思議な能力を持っていたと伝えられる。
ナイラ星に住む少年シンは、幼馴染のリシアが見る夢の話を聞いていた。
それは、この星にかつて存在した種族の記憶だった。
その種族は、自らを守る精霊を生む木とともに、違う世界からこの世界への精霊の道を開き、やってきた。
元の世界に残った者に、新たな木の種を渡すための道が再び開かれるという。
リシアは人知れずロシュナールの血を引き継いでいた。
そのことで、当局から追われることとなる。
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大好きな上橋菜穂子さんのデビュー作。いつもとはまた違った世界観でしたが、すぐに引き込まれてあっとゆう間に読み終わりました。上橋菜穂子さんの作品が初めてでも、他の作品のファンの方でも楽しめると思います◎
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デビュー作だそう。舞台は地球ではない惑星で、SFちっくな装置があれこれ出てくるが、物語の雰囲気はどこか不思議な民族的な香りのする、ファンタジー。時を超えた壮大なお話で、少年少女の冒険譚でもあった。
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デビュー作には、作家の全てが出るという。先ずは、デビュー作から長編であり、かつ未来SFファンタジーというのが上橋菜穂子さんらしい。
そして冒頭書き出し。
『その不思議な光がナイラ星にあらわれたとき、最初にそれを発見したのは、第四チタン鉱山の夜間監視員だった』
この50字の中に既にファンタジーとしての様々な「設定」の多くをぶち込んでいて、デビュー時の気負いと才能と、そして夢を感じる。上橋さんは濃密な「世界」を創ってから書き始めた。未来地球史から未来文明小道具、ナイラ先住民の言葉や地理等々、文章の裏側にある設定が山のようにあるのが判る。また、最初の数ページにアボリジニとオーストリア政府との関係が既に透けて見える。と思って後書きを見ると、未だアボリジニ調査をする前の作品だった事にびっくりした。文化人類学を本格的に研究する前から、既にその方向性は決まっていたのだ。
体裁はジュブナイルだが、何の準備もせずにこの作品を読む少年・少女には少し荷が重かったかもしれない。実際、上橋作品を読んで来た我々だからこの世界に付いて行ける処がある。編集者に言われて540枚を400枚に削ったそうだ(私なんかは、その中に原住民と地球史との接点が描かれていたのではないかと想像したりする)。しかし、描き足りなかったから、売れなかったわけではない。世界が濃密すぎたから売れなかったのだ。
いや、そうではない。この作品はデビュー30年を経て「とき」を待っていたのだ。若書きが書かせた思える以下のストレートな台詞は(それ以外のステキな言葉も)、今文庫本で広く読まれることによって、やっと「陽の目に当たる」のかもしれない。
あの事故にあうほんの2時間前の、ジムの言葉が心に焼きついて、離れなかった。
「歴史ってのは、過去におかしたあやまちを、二度とくりかえさないために、学ぶんじゃないんですか?それを、いまいちばん正さなきゃならない恥部を、うそで塗りかためて、おそろしい悪事をつづける手伝いをするんじゃ、わたしは、なんのために生きてるんです?」(73p)
「それはわかるけどさ、母さんは北米先住民を美化しすぎてんじゃない?」
「彼らも人間だから、みにくい面もあったでしょうし、べつに彼らが理想郷に住んでだなんて思ってるわけでもないわ。自然の猛威の前に、なすすべもない人間っていうのは、ひどくみじめな存在でしょうしね。でも、その自然におびえ、おそれながらも、彼らはその自然が、自分たちを生み、はぐくむ親であることも、心の奥底で知っていて、仲間とつきあうときのような気づかいとやさしさを、自然にたいして持ってたような気がするのよね。
たとえば、ある北米先住民たちは、太陽を父、大地を母だって考えていたの。そして、春は母である大地が、いのちをはらむ時季だからって、きずつけないように、靴をぬいではだしで歩いたの。
文明人たちは、よくまあ迷信を信じられるもんだって笑ったわ。でもね、その大地をはだしで歩いた人たちは、一万年以上も自然を破壊することなく暮らし、文明人たちは、そのわずか四百年後に、地球を破滅させたわ」(124p)