紙の本
最も身近な私立探偵
2019/12/15 00:15
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
私はあまりシリーズものの小説を読まないが、葉村昌シリーズだけは例外である。
このシリーズは毎度楽しみにしている。
そんな本シリーズの魅力は何といっても主人公のキャラクターだろう。
他の探偵とは一線を画した親しみやすさがあるので、共感を覚えやすい。
また、本シリーズはユーモアに溢れており笑えるシーンが多々ある。
その一方で、ヒヤッとさせられる人間の心の闇や狂気を描いている。
ユーモア溢れる軽い文体だからこそ、その反動でより恐ろしさが際立つのだと思う。
本書では葉村昌も40代半ばに差し掛かっている。
しかし、さすがは若竹七海。
葉村昌を甘やかしたりはしない。
ただでさえ加齢で様々な不自由が目立ちだすのに、追い打ちをかけるかの如く不幸な目に合わされる。
最早このシリーズで葉村昌が不幸な目に合わなくなったら、それは葉村昌シリーズとは呼べなくなる。
と思ってしまうほど不幸さが板についた主人公だが、それでも調査に手加減はしない。
主人公の魅力として親しみやすさを上記したが、それ以外にも葉村昌の魅力として、「カッコ良さ」が挙げられるであろう。
理不尽なことがあろうともへこたれずに図太く真相に食らいつくさまは、読んでいて気持ちがいい。
本書で特にお気に入りの話は、「水沫が暮れの日々」だ。
若竹七海の、伏線を張る上手さや人間の歪んだ心理を描きゾッとさせる上手さなどを再認識させられた。
これからも葉村昌シリーズが続くことを楽しみにしている。
紙の本
解説は辻真先!
2019/12/15 15:53
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私立探偵・葉村晶シリーズの連作短編集、4編収録。
『水沫隠れの日々』・『新春のラビリンス』・『逃げ出した時刻表』・『不穏な眠り』収録。
有能だが運の悪い葉村晶の不運度は、短編だとより際立つ。度重なるとむしろスラップスティックコメディのような趣に(古いほうの『トムとジェリー』を思い出してしまうほど)。が、解き明かされる“事件”や“謎”には、人間のいやーなところがつまっている。
また途中で話を聞くことになる人々の中にも、ヤバい人たちがかなりいる。この国、大丈夫かと読んでいて真顔になるほどだ。
しかも予想通り富山店長は理不尽なことを言ってくるし(本人が自分に非がないと思っているので)、<東都総合リサーチ>の桜井さんとの持ちつ持たれつは相変わらずだし(とはいえ晶のほうが負担が大きい)、いつも通りな部分もあるけど齢は重ねていくので、いろんな意味で感情移入。
男たちにジロジロ見られながら、事務所を出た。こういうとき、年をとってよかったと思う。若い時分には、アキラなのに女かよ、とガッカリされるとそれだけでへこんだ。今は気にならない。勘違いするほうが悪いのだ。
(――『新春のラビリンス』)
みたいなこと言われると、「あぁ、わかる!」と力強く頷いてしまう。
彼女の考える“人として”の最低ラインを守ることが美学となり作品世界をハードボイルドなものにしているが、ちょっと意地を張ることすらも難しい世の中だということもあるのか・・・それでも、探偵であり続ける葉村晶を見ていたいのです。応援したい、だとちょっと違うかな・・・そうだよね、わかるわかる、と言いたいというか。
短編のほうがミステリとしての切れ味は鋭いのだが、いろいろ内省することが多くなる長編のほうが個人的には共感ポイントが高くなるんですよね・・・短編だとすぐ読み終わっちゃうし。
あぁ、なんか読み終わってしまってもったいない。
紙の本
1年4ヶ月ぶりの新作
2020/01/07 17:54
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作錆びた滑車以来1年4ヶ月ぶりの葉村晶シリーズの新作です。
4遍の中編からなる連作集です。
今回も主人公は不運に見舞われるのですが、
前作まではこれが思いがけない災難だと思えたのです。
しかし今回はなんとなく型にはまったような展開に思えてしまいました。
これは作者がどうのこうのではなくて読み手の方が馴れてしまったせいでしょう。
4話とも苦さとも痛みとも思えるようなものを残して終焉するのですが、
若干あっさりとした味わいであったように思いました。
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年齢を重ねても、あいかわらず不運な探偵の葉村晶。
ぼやいたり、嘆いたりしながらも、事件に向かっていく。
収録作の中では、逃げだした時刻表のどたばたが私の好みだった。古典ミステリが絡んだ話でもあるし。いきなり店で意識を失っていた晶にびっくりだった。
それにしても、あんな結末になっちゃうとは。
表題作はまさに「不穏」
一貫しての不気味な空気に眉をひそめながら読んでいた。
新春のラビリンスのあれが伝説になったみたいなのには笑ってしまったけど。
あの写真の説明は、ちょっととってつけた感じではあったかな。私が何かを見落としているのかもしれないけど、、、
ともあれ、今後も晶の奮闘記が読めるのを楽しみにしよう。
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うーん、短編なせいか、期待が大きかったせいか、イマイチ・・・。
相変わらず葉村のツイてなさ加減は健在なんだけど、なんとなく中途半端感があった。
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【仕事はできるが不運すぎる女探偵・葉村晶シリーズ】所有していた古い家に居座り死亡した原田宏香の知人を探してほしいという依頼を受けた葉村晶。宏香を連れ込んだ男も家出していた…。
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葉村晶シリーズの短編集。
簡単な探偵の依頼のはずが、いつも生死を彷徨う事態になってしまう、お馴染みの展開だが、それでもやはり葉村晶シリーズは面白い。
刑務所を出所する女性を迎えに行っただけなのに、亀の密輸に繋がっていたり、大みそかに1日だけ頼まれた警備の仕事が殺人事件になったり、死んだ女性の関係者を探しているだけなのに、土砂崩れに巻き込まれたり、と本当に踏んだり蹴ったり。
それでもめげない葉村と、小気味のいい展開はこのシリーズならでは。
昨年発売された「錆びた滑車」はこのミス3位だったし、今作も発売日が12月ながらランクイン。安定してるなぁ。
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相変わらずの葉村さん。ドラマ化したからか順番が回ってくるまでに3ヶ月かかったよ…
本の買取で訪れた家で今度出所してくる友人の娘を確実に私の元へ届けて欲しいと依頼され、友人の娘を迎えに行くも帰りにその女が拉致られるの目の当たりにする。なんだかヤバい人たちに追われているようで…「水沫隠れの日々」
大晦日の夜に廃墟のビルの警備を依頼された葉村。震えながら一晩を過ごしたが、そこの事務所の女の子にいなくなった彼氏を探して欲しいと依頼され…「新春のラビリンス」
鉄道ミステリーフェアの開催の目玉として借りた「ABC時刻表」が盗難に遭ってしまう。その行方を追う葉村だが、思わぬ展開になっていき…「逃げ出した時刻表」
相続で引き継いだ家にいつの間にか住み着き、死んだ女の知人を探して欲しいと依頼され…「不穏な眠り」
なんだか今回は相変わらずな葉村さんだったけど、事件関係者?依頼者?にものすごく振りまわれてるかんじだった。歳を取ったのか、前よりボロボロにはなっていないけど、お昼を食べ損なったり裏をかかれたりして大変だった。もう少し自分を大切にして欲しい…でも、葉村さんのことだからきっと断りきれずに巻き込まれていくんだろうなぁ。
2020.4.3 読了
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ドラマ化おめでとうございます!
新刊うれしい~
今回も有能だった。いつもよりはひどいめにあってない気がする・・・か?
ほんとうに、これ以上病院に担ぎ込まれませんように。
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命拾いのシーンは多々ありましたが、いつもよりは静々?と場面が展開。相変わらず腹ペコです(笑) 長編を読んだ後だったので、ちょっと物足りなさが・・・
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国籍:日本 性別: 女 吉祥寺ミステリ専門店の店員にして白熊探偵社ただ一人の調査員。アラフォーになった今回も4つの事件に巻き込まれあんな災難やこんな災難に巻き込まれます。期待を裏切らない安定の不運な探偵物語(笑)
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「仕事はできるが不運すぎる女探偵・葉村晶」シリーズ第8弾。短編集。
20代半ばで登場した葉村晶もはや40代、
お約束通り、不運に見舞われ、理不尽な依頼人・関係者などに悩まされ、それでも律儀にタフに調査を続ける葉村晶。
今回も安定の面白さだった。
しかし、世の中、自分の非を認めす、勝手な言い分を通そうとする輩が多すぎ。
そんな人と争っても無駄だと怒りを飲み込み、律儀に仕事をする葉村晶に共感しきり。
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葉村の働く書店で“鉄道ミステリフェア”の目玉として借りた弾痕のあるABC時刻表が盗難にあう。行方を追ううちに思わぬ展開に(「逃げだした時刻表」)。相続で引き継いだ家にいつのまにか居座り、死んだ女の知人を捜してほしいという依頼を受ける(「不穏な眠り」)。満身創痍のタフで不運な女探偵・葉村晶シリーズ。
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葉村晶、国籍・日本、性別・女、吉祥寺の住宅街に店舗を構えるミステリ専門書店〈MURDER BEAR BOOKSHOP〉のアルバイト店員にして、この本屋が副業で始めた〈白熊探偵社〉に所属する唯一の調査員。
仕事はできるが、不運な探偵・葉村は毎度毎度命の危険にさらされる。その引き寄せ体質はあの杉村三郎を彷彿とさせる。シリーズ8作目は4つの短編。
そのどれもが短編とは思えない奥深さ。ちょっとした連れ戻し依頼や幽霊騒動、古書盗難や人探しが思わぬ広がりを見せ、謎の資金や欠陥公営団地、大規模老人ホーム開発の闇へと発展する。そして、葉村にはお約束の危険が降りかかり・・・。
安易な気休めも希望もなく、薄さのわりに読み終わった時はどっしりと疲れるこのシリーズ。来年早々ドラマ化するらしいが、葉村がシシド・カフカ!! ん~なんだか違う。そんなにシュッとしてなくて、もっともさっとした女なんだけどな~。といいながら、多分見るんだろうな~
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葉村晶シリーズ第7弾で短編集。
・水沫隠れの日々
・新春のラビリンス
・逃げだした時刻表
・不穏な眠り
の4編収録
国籍・日本、性別・女。吉祥寺にあるミステリ専門書店〈MURDER BEAR BOOKSHOP〉の店員にして、この書店が半ば冗談で公安委員会に届出をした〈白熊探偵社〉に所属する、ただひとりの調査員でもある葉村晶が相変わらずボロボロになりながら事件の真相を暴いていきます。
本作の彼女の住居は白熊探偵社(MURDER BEAR BOOKSHOPの2F)で、とある事情で間借りしている状況です。
徹底的に真相を暴いていくかという気概に対し年相応のくたびれ感が出てきてますが、まだまだ頑張れそうなので、次回作も期待します。
TVドラマ化に関してはちょっと不安がありますが、まずは視聴しようと思っています。