紙の本
嵯峨野花譜
2020/05/30 07:14
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投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文政の頃の京都を舞台に描かれています。
主人公は大覚寺で未生流の活花の修行に励む少年僧の胤舜である。
生き別れだった胤舜の母である萩尾との親子愛。
母子を出世の為見放した胤舜の父である水野忠邦との確執や葛藤などが盛り込まれています。
胤舜は活花を通じて修行していくなかで技術的にも精神的にも類まれな才能を発揮します。活花も他の芸術と同様その人の心の表現であることを「嵯峨野花譜」から感じました。
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【私はまだ、悲しみも喜びも知らない……少年は花を活け、生きることを学ぶ】若くして活花の名手と評判の高い少年僧・胤舜は、ある理由から父母と別れ、京都大覚寺で華の道、人の道を学びつつ成長を遂げていく。
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内容(「BOOK」データベースより)
物語の舞台は、文政13年(1830)の京都。活花の名手と評判の少年僧・胤舜は、ある理由から父母と別れ、大覚寺で華道の厳しい修行に励む。「昔を忘れる花を活けよ」「闇の中で花を活けよ」…次々と出される難題に、胤舜はまっすぐな心で挑んでいく。歴史、和歌、能の知識と著者特有の陰影を帯びた美しい物語。
令和2年4月18日~22日
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活け花を通して少年僧が成長してゆく物語です。
日本独自の文化である活け花は多分、四季折々の自然の表情が外国に比べ繊細で豊かだから生まれたものなんだろうななんて考えてしまいました。それにしても新しい葉室作品が読めないことが残念でなりません。
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通勤時間を利用しても、読むのに二ヶ月以上かかってしまった。
個人的にこの時代があまり好みでないことと、優しく静かに過ぎる描写でどんどんと読み進められなかった。
ただ、主人公『胤舜』が活ける活花の描写について、表現力が誠実で活花っていいな、と興味を持てた。
あとは、胤舜の様々な状況での活花を通した成長も良かったかな。
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なんという凛とした物語でしょう。花本来の美しさが目の前に映像として現れるようでした
胤舜だけでなく全ての人に物語があり人生があるのです
表現こそ違えど皆人を思いやる心を持っていることに気付かされました
胤舜がこれから歳を重ねどんな人の想いをどんな風に生けるのかもっと見てみたいと思った
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面白かった
少年僧 胤舜が花を活けることを通して成長していく短編連作ストーリ
10作の短編からなり、それぞれの章で華道のお題が出されます。そこで明らかになる哀しい事実だったり、暖かい想いだったり..そんな経験を通して、胤舜が成長していきます。
さらに、胤舜の生まれにかかわる事件に巻き込まれる中、周りの人にも助けられ、母を想い、父と対決していく姿に心打たれます。
ぶっちゃけドラマ(実写)で見てみたい(笑)
お勧め
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京都・大覚寺の胤舜は、感情を上手に表す事ができない少年僧であった。
師であり、未生流二代目である不濁斎広甫は、他者の為にはなを活ける修行を課す。
胤舜は、二年前に母親に去られた過去があった。
しかも、父親は、西ノ丸老中・水野忠邦。生まれたすぐに、父親からは、捨てられた。
父親の愛情を知らず育った胤舜。
「昔を忘れる花」
「弟の一周忌に、心の裡にある弟のような花」
「暗闇に咲く花」
「西行法師の桜」
「母上を守る花」
数々の課題を通じて、自身を取り巻く、世の悲喜交々を感じ受け止め、成長していく姿を描いた。
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恥ずかしながら葉室麟さんの著作は今作が初めて。
どこかの書評がよかったので読んでみた。
史実とフィクションの裂け目が見えないうまさ。
活け花の奥深さを教えられた感じがした。
もう少し母子関係と父子関係を踏み込んで描かれていれば親切だったろう。
葉室さんの他の本も読んでみたくなった。
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大覚寺花務職の若い僧侶が成長していく様が綺麗。和歌と活花が話を展開する軸になっているので、しっとりとした雰囲気で読み進めやすい。
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言葉の美しい本でした。僧であり活け花で人の生き方や人生を表す胤舜の感性が伝わるような作品でした。活け花の深さを知る作品と同時にこの時代の人の心のありようが分かるような気がした。また、母である萩野と父である水野忠邦と難しい時代の家族のあり方のように思うと現代はどれほど自由な時代かを感じた。
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読了後、爽やかとかではなく清らかな心持ちになった、という印象を受けた。派手さはないが坦々と訴えられるものがあった。
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活花の名手と評される大覚寺の少年僧胤舜が、華道の修業を通じて成長していく時代小説。
10篇からなり、それぞれに様々な花が生けられる。
白椿、蝋梅、山桜、山梔、萩、朝顔、酔芙蓉等々。
しかし、請われて活花を行ったがその人の命を救えず、師の広甫に「生きることに、たんと苦しめ。苦しんだことが心の滋養となって、心の花が咲く。自らの心に花を咲かせずして、ひとの心を打つ花は活けられぬ」と、未熟さを諭され、さらに精進する。
静かに活花の話が続くと思いきや、彼が老中水野忠邦の隠し子であることから、一転不穏な動きが蠢き始める。
史実とフィクションが融合されたこの小説は、著者が京都に居を移したその時期に書かれたとのことで、随所に京の四季折々の風景が挿入され、風雅な小説となっている。
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「清げな」本だった。胤舜に訪れる試練は都合よく上手い具合に行き過ぎだと思われる時もあるけれど、それすら人のいのちであり、人生なのではないかと思わされる素敵な本でした。解説で初めて葉室さんが亡くなっていることを知ったんだけど、その事を知ったのがこの本であることがとても不思議だった。