紙の本
偉大な絵師河鍋暁斎の娘の一代記
2021/06/18 09:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
浮世絵師として偉大な河鍋暁斎を父に持つ娘とよの一生の物語。
暁斎の絵はあらゆるものに生を吹き込む浮世絵。
兄は父を越えようとひたすら絵を描きながら亡くなる。
残されたとよは絵を描き続ける。
しかし、そんな二人にけっして追いつけない、自分の存在に悩むとよ。
女として母親としても生きるが、父の偉大な絵師の力に翻弄されるように、夫と別れ、娘には絵を描かせない。
明治、大正と西洋化する世の中は暁斎の絵は時代遅れとみなす。そんな時代の流れに贖いながら、もとよは狩野派の絵を描き続ける。
暁斎の語り部として世に残す役割を全うするが、とよは自分の一生に喜びを感じて生きていたのだろうか。
作者は何故とよを主人公として書こうと思ったのか。
沢田瞳子さんの真意を聞いてみたい。
紙の本
評価は後世か
2024/03/11 15:45
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投稿者:nap - この投稿者のレビュー一覧を見る
美術に関わるものの評価って、時代によって変わったりするからね。
美術家は自分の気持ち次第で作成すればいいし、
購入する人も自分の感性に従えばいい。
紙の本
読み応え十分
2023/01/14 22:11
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投稿者:yino - この投稿者のレビュー一覧を見る
直木賞受賞作。画鬼と称された河鍋暁斎と、子供にして弟子である河鍋暁翠、その兄である暁雲を中心に、芸術で縛られた家族の在り方に迫る一冊。幕末から明治、大正と世が移ろう中、芸術の評価も変わっていく無常感、「獄だ」としつつも絵でしか分かりあえあい(分かりあおうとしない)芸術家の性等がずっしりと心に響く。こうした作品を読むと、実際に作中に登場する作品を鑑賞しに行きたくなります。
電子書籍
河鍋暁斎の娘、暁翠にとって画という存在
2021/09/27 06:19
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投稿者:海 - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治初期の奇才、河鍋暁斎の娘、とよ(暁翠)が主人公。
偉大な父の画才への葛藤を軸に、
とよと常吉、兄周三郎とお絹ら芸に関わる夫婦四組を
からめた筋立てになっています。
マイナーな画家が多くてとっつきにくいが、
背景には、狩野派をはじめとした旧来の画の没落と、
女性を家に閉じ込めていく明治以降の女性像という
二つの大きな流れを据えているのが、いい支えになります。
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【暁斎を父に持った娘・暁翠の数奇な人生】鬼才・河鍋暁斎を父に持った娘・暁翠の数奇な人生とは――。父の影に翻弄され、激動の時代を生き抜いた女絵師の一代記。
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絵を描くことが好きなのに兄や父ほど絵狂いになりきれない女性の一生を描いています。
それに苦しみ、苦しんでいるからこそ絵がにくい。
なんだかわかります。
それでも好きでいていいのだと自分しかできないことがあると思って生きていいのだと思えました。
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明治から大正へ画家だった父の元画家になるべく育てられた娘の人生、父のこと、兄のこと、そしてその間に関わった人たちの人生の顛末、読み応えがあった。思うに小生の祖父と父の時代に重なるところがある。生きるだけでも大変な時代、そして関東大震災を体験、身につまされた。父のこと祖父のこと何か語り継がなければならない様な気がしてならない。文才の無い小生にはとても無理だ。貴重な一冊になった!
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江戸末期に活躍した絵師河鍋暁斎が死ぬ。娘の「とよ」の苦労を描く。義兄の周三郎は絵師として活躍するがクソ野郎。弟は役立たず。明治から大正にかけて活躍し苦労するとよ=河鍋暁翠の人生とは?
個人的には面白かったけど、若干読みにくかった。誰の視点で表現してるのかと、人物が二度三度登場しても、以前の記憶がないので、誰だか分からなくなってしまった(作者は悪くなく私が悪いのかも)
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『若冲』で奇想の絵師・伊藤若冲の生涯を鮮やかに描き出した澤田さん。本作では幕末から明治期に活躍した画家・河鍋暁斎……ではなく、その娘であり弟子でもあるとよ(河鍋暁翠)を主人公として、親子の絆や芸術家としての生き方などに苦悩する姿を描く。若冲とは違いこの親子(次男の暁雲も含め)は知らなかったのでより興味深く読んだ。流行遅れになり忘れられていく悲哀は西洋美術だけではなかった。
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まぁ良かったです。
「何かに似てるな」と思ってましたが「若冲」書いた人だったんですね。
直木賞ですか、「若冲」との合わせ技であるなら納得です。
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“画鬼”とも称された稀代の絵師、河鍋暁斎の娘・とよ(暁翠)の半生を描いた作品です。
父・暁斎の死後、“河鍋を引き継ぐ者”としての悩みや、偏屈な兄と確執はあるものの、彼の才能は認めざるを得ない心情など、葛藤しながらも力強く生きるとよの姿が端正な文体で綴られています。
印象的だったのは、大富豪の婿として河鍋家の支援者でしたが、その後没落した鹿島清兵衛と、彼の愛人から後妻になった元人気芸妓・ぽん太(鹿嶋 ゑつ)夫妻です。
とよに対して異常にあたりがキツイぽん太のキャラは正直苦手なんですけど(同じような理由で、おこうもちょっと苦手)、没落しても二人で寄り添いながら、そしてその姿すら見せつけるように生きていく様はある意味凄みを感じましたし、御大尽から没落して、能の笛方になった清兵衛が言った「・・この世を喜ぶ術をたった一つでも知っていれば、どんな苦しみも哀しみも帳消しにできる。生きるってのはきっと、そんなものなんじゃないでしょうか」との台詞は、胸に染みてくるものがあります。
時代は明治から大正にかけてが舞台。まさに西洋文化が怒涛のように日本に入ってきた時期ですね。芸術の価値観が変化していく様子や、関東大震災の描写も興味深く読みました。
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暁斎から英才教育を受け、極度なプレッシャーに苛まれながら芸の道を歩み続けたとよ。晩年とよが絵師の人生を回顧していたが、幸福感が伝わり安堵した。
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明治から大正にかけて活躍した女絵師河鍋暁翠。
江戸時代の名残を残す明治だが、父である鬼才暁斎の没後、一門は四散し、パトロンも没落。
西洋画風の絵が流行する中、暁翠は挿絵、絵教師で食いつなぎつつ、父親の跡を追い伝統的日本画を追求する。
後世まで残る本物とその場の流行だけで終わるものとの違いはどこにあるのか。
関東大震災被災後にみせる面倒見の良さ、芯の強さは、家族に苦労しつつ絵の道を追求した暁翠の一生が凝縮したものであったか。
没落したパトロン夫妻の生きざまも時代を映す裏旋律として印象を残す。
直木賞受賞作。
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天才絵師・河鍋暁斎(かわなべ きょうさい)(1831~1889)の娘・とよは、5歳の時に父に絵の手ほどきを受け、のちに暁翠(きょうすい)の名をもらって絵師となった。
暁斎の死没から始まる物語。
河鍋家は、画鬼の家だった。
画才ありとして、暁斎の手元に残された、周三郎(暁雲)ととよは、
偉大なる父に囚われ、しかし決して越えられず、檻の中でもがくだけ。
同じくびきにつながれた周三郎ととよは、激しく反発しあいながらも、お互いを認めざるを得ない。
父・暁斎と、周三郎、自分は、家族という「血」の繋がりではなく、絵を描く「墨」で繋がっていたのではないか、ととよは思う。
父を失い、兄を失い、最後のバトンはとよに回って来た。
自分は、黒い墨ではなく赤い血で家族と繋がりたい、バトンを捨てるのも勇気である。
とよの周りの人々、芸術の道を挟んで対峙する、夫婦のありようもいく通りも描かれる。
世の中には二種類の人間がいる。
芸術をするものとしない者。
後者からは、世間を外れて生きる前者を理解できないことが多い。
・とよと、芸術に無関心の夫
・とよの弟弟子・真野八十五郎と、絵を激しく憎む妻・おこう
・とよの兄、父・暁斎の画法を頑固に守り続ける周三郎を、洋食屋で働きながら最後まで支えた、お絹
・鹿島清兵衛と、元人気芸妓のぽん太は独特の世界を作っている。
清兵衛は、河鍋のパトロンとも言えるお大尽だったが、放蕩が過ぎて大店の婿養子の座を追われる。
落籍されて妻になったぽん太は、贅沢が忘れられずにすぐに別れて他の男のところへ行くだろうと誰もが思った。
しかし、どんなに落魄しようと、笛で身を立てるようになった清兵衛に最後までよりそう。
いつまでも人々の口の端に名前が上る有名人の二人ゆえ、世間への意地があったのか。
それとも、登場する中で唯一の、芸の道を知った者同士の夫婦だったからか。
『本当に苦しいだけの絵の道だったか?その中によろこびはなかったか』と、とよに問うてくれたのも清兵衛であった。
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「自分はただ、腹立たしいほどの高みにいるあの星を、今もぽっかりと仰ぎ続けている」
偉大な絵師である父と、その父の筆を引き継ぐ異母兄。
河鍋暁翠こと”とよ”の前に立ちはだかる二つの星はあまりにも眩しすぎる。
絵師としての才に恵まれた二人に追いつこうとするも遠く及ばず、とよは己の画力に嘆いてばかり。
けれど嘆いてばかりもいられない。
時代とともに周囲から求められる画風も移ろい、時代遅れと見下される父と異母兄の絵を守るため一人奮闘する。
偉大な星の眩しさを知る者としての務めを果たせるのは、己しかいないのだから。
明治から大正を生きた女絵師の半生を描いた物語。
朝井まかてさんの『眩』とつい比較してしまう。
奔放な絵師を父に持ち、幼い頃から絵筆を持たされた女絵師。目の上のタンコブ的父の影響力は、生前はもちろん死してからも変わらずに娘の行く手を阻むもの。
肩の上に勝手に置かれた重石を取り除くことができず苦しみながらも、絵筆という特殊な武器を持った女たちは、やはりさっぱりとしてカッコいい。