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紙の本
何故と問われても。
2021/12/20 15:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
絵師河鍋暁斎の娘とよは、河鍋暁翠の名で絵を描いている。異母兄周三郎も河鍋暁雲を名乗り、絵を描いている。幼い頃から父の許で絵を画いてきたとよは絵しかない。
江戸時代が終わり、明治、大正と時は流れ、河鍋暁斎は古い絵とされていくが、とよは画業を続けた。結婚し、娘が授かっても絵筆を持ち続けた。
父を越えられないともがきつつ、絵を捨てられない。
何故と問われても、それが苦しみであり、最上の喜びを生み出すから。
紙の本
暁斎の娘 とよ 暁翠
2021/09/17 09:11
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BHUTAN - この投稿者のレビュー一覧を見る
暁斎好きの私にとっては、待ち焦がれた小説。
澤田ふじ子さんを母に持つ瞳子さんも、同じ稼業を持つ娘として、とよと同じような心持ちがあったのかな?
現在江戸東京博物館で開催してある「大江戸の華」で展示されている鹿島屋東店の品々が分家のものとすると、本家がどんなに財力を持っていたのやら…
直木賞授賞をきっかけに、暁斎がさらに取り上げられることを期待します。
楠美先生悲願のトーハクでの暁斎てんが開催されますように。
暁雲・暁翠も一緒に是非
紙の本
素晴らしい小説でした
2021/08/26 21:00
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:玉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
とにかく、スムーズに読み進められました。
登場人物たちのことは、全然知らなかったので、
どこまで事実で、どこまで創作なのかもわかりませんが、
まるで、すべての人物が、目の前で行動しているかのような、
よいドラマや映画や演劇を見ているかのような、錯覚をおぼえました。
特に、関東大震災の描写は、すばらしかったです。
紙の本
日本画の変貌と衰退を追う
2021/07/14 12:17
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
画鬼と呼ばれた河鍋暁斎を父として、生き抜いた娘・暁翠の物語。主人公は、その父の死後、父親の生きた痕跡に振り回され続け、自分が何者であるかを問い続けたのだと思う。明治維新後の日本画の変遷の歴史を追いながら、日本人の心の持ちようの変化を描くようだ。知らない歴史の一面を、心に刻み込むことができた。
紙の本
読み応えのある一冊でした。
2021/12/21 20:35
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投稿者:るい - この投稿者のレビュー一覧を見る
葛飾北斎にとっての応為のように、とよを育てたかったのでは!
と言う兄周三郎の言葉。
とよは、芸術家でありながら、現実的な生活者としての視点を持った女性だと思いました。
この世の不平等は、とよとしてよく分かっている。
だが、逐一それに腹を立てていては、この浮世は渡っていけない。
優しいとは、それだけとよをちゃんと見ていない事実の裏返しだ。
この文章が、特に、響きました。
作品には、その人本人が出る!
澤田瞳子さんの作品を初めて読み、文章力の確かさと書く前の事実確認等の素晴らしさを感じました。
書き始めの確かさと最後の末尾の危うさも印象に残りました。
紙の本
遅れ馳せながら昨年(2021年)の直木賞受賞作を
2022/07/25 12:45
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
遅れ馳せながら昨年の直木賞受賞作を手に取りました。河鍋暁翠の眼を通して描かれる、父・河鍋暁斎や当時の画壇にリアリティ・迫力を感じました。鹿島清兵衛の助演男優賞とも言えるポジションも絶妙です。登場人物のほとんどが実在の人物なので興味が拡がりますね。
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明治大正期の女絵師
2021/08/14 16:56
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
鬼才の絵師を父兄にもつ女性絵師の絵に打ち込む情熱と、家族への葛藤を描いた物語。
絵師として認められながらも、父兄を超えられない苦悩と画壇の風潮や流行に翻弄され、しかし自分のスタイルを貫くしなやかな強さを持ち生き抜いた姿があります。
父兄のかつての姿に疑問を持っていますが、歳を経るうちにその心境に至ります。
一貫して暁翠(とよ)目線で書かれているのでシンプルで分かりやすい。
紙の本
切れ味鋭く家族の相克と葛藤を描く
2021/08/11 08:51
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投稿者:トリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
直木賞受賞作。
・河鍋暁斎の子供、弟子たちの物語。
・父から受け継いだのは血か墨か。
・「この刹那の憎しみなぞ、長い人の営みの中で見ればこの上なく虚しかろうに、それでも人は己の思いのままにしか生きられぬのだ」。といった言葉が鋭く突き刺さる。
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偉大な絵師河鍋暁斎の娘の一代記
2021/06/18 09:07
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
浮世絵師として偉大な河鍋暁斎を父に持つ娘とよの一生の物語。
暁斎の絵はあらゆるものに生を吹き込む浮世絵。
兄は父を越えようとひたすら絵を描きながら亡くなる。
残されたとよは絵を描き続ける。
しかし、そんな二人にけっして追いつけない、自分の存在に悩むとよ。
女として母親としても生きるが、父の偉大な絵師の力に翻弄されるように、夫と別れ、娘には絵を描かせない。
明治、大正と西洋化する世の中は暁斎の絵は時代遅れとみなす。そんな時代の流れに贖いながら、もとよは狩野派の絵を描き続ける。
暁斎の語り部として世に残す役割を全うするが、とよは自分の一生に喜びを感じて生きていたのだろうか。
作者は何故とよを主人公として書こうと思ったのか。
沢田瞳子さんの真意を聞いてみたい。
紙の本
評価は後世か
2024/03/11 15:45
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投稿者:nap - この投稿者のレビュー一覧を見る
美術に関わるものの評価って、時代によって変わったりするからね。
美術家は自分の気持ち次第で作成すればいいし、
購入する人も自分の感性に従えばいい。
紙の本
読み応え十分
2023/01/14 22:11
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投稿者:yino - この投稿者のレビュー一覧を見る
直木賞受賞作。画鬼と称された河鍋暁斎と、子供にして弟子である河鍋暁翠、その兄である暁雲を中心に、芸術で縛られた家族の在り方に迫る一冊。幕末から明治、大正と世が移ろう中、芸術の評価も変わっていく無常感、「獄だ」としつつも絵でしか分かりあえあい(分かりあおうとしない)芸術家の性等がずっしりと心に響く。こうした作品を読むと、実際に作中に登場する作品を鑑賞しに行きたくなります。
電子書籍
河鍋暁斎の娘、暁翠にとって画という存在
2021/09/27 06:19
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投稿者:海 - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治初期の奇才、河鍋暁斎の娘、とよ(暁翠)が主人公。
偉大な父の画才への葛藤を軸に、
とよと常吉、兄周三郎とお絹ら芸に関わる夫婦四組を
からめた筋立てになっています。
マイナーな画家が多くてとっつきにくいが、
背景には、狩野派をはじめとした旧来の画の没落と、
女性を家に閉じ込めていく明治以降の女性像という
二つの大きな流れを据えているのが、いい支えになります。