紙の本
こんな視点があったのか!!!
2021/05/24 10:06
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争や軍隊などについての本は、日本軍に関するものでも膨大である。しかし、経理に関するものは、ほとんど無い。軍だって組織であり当然経理はあるはずだ。それは、軍の活動にも必須である。それについての一般的な書籍があまりないのは不思議だ。本書は、陸軍という組織を経理の面から見たユニークな本である。
電子書籍
最高傑作92式重機の値段も
2021/10/12 08:52
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:プチトマ - この投稿者のレビュー一覧を見る
会計から見る堅苦しい内容かと思いましたが、
途中に入っているエピソードがとても面白いです。
原価計算方式を陸軍に初めて根付かせた意外な有名人物、
今日と変わらない大蔵省との予算折衝の矢面にたつ軍人課長や、
上司(東條英樹!)の梯子外し。
なかでも秀抜なエピソードは、壊血病予防のための抹茶を全て海軍に押さえられ、
入手できなければ島しょ防衛の将兵の命に係わる、
その危機的状況のなか「奇想天外な」方法でたんまり手に入れることができた
大尉の話。
主な装備一覧表で重機、軽機、重砲、三十八式、九十九式の現在の
値段も分かりました。92式はけっこうします。
紙の本
軍の存在が招く国家予算の壮大な蕩尽
2021/07/13 22:16
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Takeshita - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近読んだ「日本戦争経済史」と並び大変面白かった。戦争は要はカネがないとできない。にも関わらず日本は明治以降国家予算の大半をずっと軍費に使い果たして、国民生活の向上などは二の次だった。しかし膨大なカネとモノを扱う軍の経理や原価計算技術は進歩し、会計検査官の人材育成も進んだ。それが戦後のアメリカ管理会計の企業へのスムーズな導入の一助にもなったと多くの会計学者が認めていると言う。陸軍経理部の思わぬ副産物である。
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【大組織を裏側から支えた男たちの物語】予算決定や兵器の調達、兵士たちの食生活、唯一の憩いであった酒への並々ならぬ執念、お財布事情など、知られざるエピソードを紹介。
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滅茶苦茶面白かった。この視点で陸軍を徹底的に解剖した本は読んだことがなかったので目から鱗の連続で夢中で拝読させていただきました。予算の箍が結構あったことや、階級間での凄まじい給与差や関特演の途轍もない無駄使いや缶詰の件、「日本酒の手入れ」、山下奉文に始まる原価計算のあれこれ等々、好事家にはたまらない内容の数々。本当に読んで良かった。
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経理の専門的なことは一切分かりませんが
ちょいとした軍ネタ拾いに購入。
しっかし、関特演(関東軍特種演習)予算が
現在価値8兆5000億円とは・・・。
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普段、軍事作戦や政治介入の観点から主に叙述される日本陸軍を経理の視点から見てみるという切り口の面白い本。
専門性の強い分野なので、網羅的では無く、読者が飽きないようにわかりやすいテーマから説明している。
例えば、大蔵省とのバトル、日用品の単価、関特演を予算から見ると動員と、動員先での維持経費で現在価値で9兆円ともいう壮大な無駄遣いだったこと、陸軍省軍人のサラリーマンとしての仕事ぶり、食事や階級別給料、各種物資の調達と契約担当官の悲哀などなど。
その後、筆者の本業とも言える原価計算による価格算定方式や経理幹部の教育カリキュラム、経理組織の変遷などの話になるが、ここまで来ると専門的過ぎて素人にはついていけない世界になってしまった。
とは言え、2/3の内容は門外漢にも大変わかりやすく、貴重かつ明快な研究成果と言える。
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腹が減っては戦はできぬ。経理の視点から見た日本陸軍の意外な側面。
太平洋戦争は技術力もあろうが、物量、補給つまりは国力で敗けたというのが定説。とはいえ具体的な補給、企業と同じくヒトモノカネの動きについてはあまり語られない。
本書は残された陸軍の予算や会計の資料を掲示して、戦争に必要な予算や兵士に対する食料や給与、被服や装備などを具体的に描く。
輸送力の弱い日本陸軍。補給品は現地で確保しなければならない。軍に先行して進軍する経理部員の苦闘。娯楽の少ない僻地。唯一の楽しみの日本酒の調達と劣化をふせぐ工夫。
戦争についてこれだけ具体的な金額を算定して描いた作品は画期的。近代装備をするためにも何より予算が必要。結局は国力と結びつくのだが。
筆者は元防衛事務官。調達関係畑を歩いた後に学者に転向したという。軍事史に新たな視点を与えた点、本書を高く評価したい。
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あまり聞いたことのない話がたくさん載っている本でした。
「兵器価格は生産原価を基礎に、類似品の生産価格や従来の統計値、経験等に基づいて定価を算出し」て陸軍大臣が認可し、「兵器価格表」などを作成していたという。
現在価値に換算すると
鉄帽48,000円
三八式歩兵銃45万円
九九式軽機関銃675万円
九七式中戦車(武器除く)8億2,700万円
など(昭和16年)。素人目には高く見える。現在とは違って機械による大量生産とかないだろうし、そういう意味では妥当なのかもしれないが。
その一方で、兵隊の給料は安い。
二等兵乙だと月額約3万円(現在価値)で、現在の自衛隊の二等陸士16万4,700円と比べると大きな違いがある。もちろん兵営に入っていて食費負担がないのだろうけど。
死亡賜金も二等兵は75万円程度である(ほかに埋葬料19万円)。
武器は高くて兵隊は安いのだとすると、バンザイ突撃もさせるし、人海戦術になるのかね。
一方で将官の給料はかなりの高待遇である。ひっそりと賞与も支給されていた(兵隊にも出ている)。そのうえ戦時加算がバンバンつく。
平和になると軍人の数が減らされて懐も寂しくなる、という話はよく聞くが、この金額を見ると「そりゃそうだろう」と思う。
そして、軍人からするとアメリカとの大戦争なんかはもってのほかだけど、小さな事変を起こすのは経済的なインセンティブがあったのだろうな。立派な大義名分を掲げていても、醒めるね。
こういう話だけじゃないのだけど、福田赳夫が大蔵省職員だった頃に陸軍と予算折衝で対峙していた話とか、いろいろな話が載っています。