紙の本
展覧会に行きたかった
2021/11/03 18:54
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年話題になった展覧会の新書版。
見どころが文章と写真で紹介されていて、とても分かりやすく、理解を深められると同時に、やはり展覧会に行きたかったなぁと思わせる。
ジェンダーが歴史の中でどうつくられ、今に至るか。
歴史の一次資料に基づいた分析がなされており、非常に興味深い。
例えば巫女としての卑弥呼は、明治後半近くに成立した新しい解釈だと言う。
巫女と言う部分を強調するのは、古代に女性リーダーがいたとしても実際の統率者は男だ!という先入観に立った近代の見方だと考えられるという。
他にも明治政府が天皇や宮中のあり方を変化させていき、天皇の生活空間で勤務していた女房や奥女中が政治の場から排除されていった様子などがよくわかる。
また性を売ることに関しても歴史的な分析がなされており、我々が性風俗や売春の是非議論で必ず出てくる批判や擁護の背景にある価値観は、いったい何に根ざしているのかなどなど考えさせられて、とても勉強になった。
心に残ったのは、編者が、ジェンダーを物語る特別な歴史資料があるわけではないと言うことがわかってきた、と言っていることだ。
よく知られた資料も新しく発見された資料も、ジェンダーの光を当てることによって初めて、それまでの常識とは異なる新しい歴史像を語り始めるー。
オルタナティブな視点から社会や歴史を見つめ直す。これは私たちに社会に投げかけられたボールではないか。
紙の本
性の売買を取り上げた第六章は必読
2022/02/20 22:08
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投稿者:K2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
話題の展示をコンパクトにまとめた内容。特に、性の売買を取り上げた第六章には力が入っていると感じた。中世以前と近世以後とで女性のあり方が転換しているようだが、その理由について詳しく知りたくなった。古墳時代のところで若干触れられていたが、戦争への関わり方の違いは、ジェンダーを考える重要な視点だと愚考する。
紙の本
図録もほしい
2022/02/10 01:22
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投稿者:redon - この投稿者のレビュー一覧を見る
ケチらずに図録で大きい写真を見ればよかった、という気もするし、これくらいの情報量がちょうどいい、という気もする。両方ほしい。
明治政府の役人が女官を一斉解雇して愉快がった話、苦笑するしかない。いまの弱者男性論なども、こんな風に未来の歴史書に史料として載るのだろうか。
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〈目次〉
第1章 古代社会の男女
第2章 中世の政治と男女
第3章 中世の家と宗教
第4章 仕事とくらしとジェンダー~中世から近世へ
第5章 分離と排除へ~近世・近代の政治空間とジェンダーの変容
第6章 性の売買と社会
第7章 仕事とくらしのジェンダー~近代から現代へ
〈内容〉
昨年、国立歴史民俗博物館でおこなわれた、「性差の日本史」のガイドを簡単にまとめたもの。こうした展覧会は欧米では当たり前だが、日本では初めてだったらしい。古代の埴輪から中性の遊女、御家人の未亡人が惣領になる話、江戸時代から女性の地位が下がること、遊郭の話、明治期の女工、戦後の女性などを簡単にまとめられていた。
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いろいろな資料から、女性の生活はどんなだったか、みたいなのを言える範囲で言ってる落ちついた本。カラーがよかった、というかオンライン版がほしい気がする。
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歴史の中で女性の地位や働きがどう変遷してきたかを、具体的なエビデンスを元に説明してくれる。エピローグには村木厚子さんの「ジェンダーを超えて」のインタビュー内容が、YouTubeに配信されているのをQRコードで見ることができる。
2021年世界経済フォーラムで報告された、日本のジェンダーギャップ指数は世界120位だったそうだ。
古代「魏志倭人伝」には「長幼や男女の区別はない」とあるそうだ。古墳時代前期の古墳には女性が葬られているところも多く、女性首長が多く存在していたことが分かる。しかし律令体制が本格化した頃から役割が固定化され、平安時代の朝廷は男性中心の社会となる。そして中世には男性中心の家が確立し家父長権が強化される一方、夫婦の関係が重んじられるようになった。
近代、明治政府は憲法で、天皇は男系に限るとし、女性の公民権や参政権を否定する動きも、様々な法律を通して制度化していく。
日本で職業としての売春が生まれたのは9世紀半ば頃。古代社会は男女関係、夫婦関係が緩やかだったため、性を売買して対価を得ると言う行為そのものが成り立たなかった。その後夫婦の結びつきが強まり、妻の性が夫に独占されると、不特定多数に開かれた性の売買が価値を持つようになり、職業としての売春が成立した。
など、そうだったのね と気づかされることが多い。まだまだ男女平等とは言えない社会だが、変わらないといけない。
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国立歴史民俗博物館での展覧会「性差の日本史」は気づいたときには観客が多すぎて入場制限が厳しくなっていて見に行けなかったのですが、こうして本になったので展覧会の内容を理解することが出来ました。とはいえ新書では薄いので、1.4kgの図録、買ってしまおうかしら……。
自分としては中世から江戸時代にかけての変化をもう少し丹念に追って見たかったですので、やはり1.4kgの図録を買ったほうが良さそうです……。
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国立民俗博物館の「性差の日本史」展を基にした,古代から戦後までの女性の活動を描く
かなり急足なのと,史料が残りづらい分野という事で、女性の活動全体を網羅するものにはなっておらず,特に江戸時代が大奥と売春のみというのは食い足りない感があった(大奥はもちろん、公娼として管理され、契約ベースで動く吉原に史料が残るのはわかるんだけどさぁ…)
とはいえ、古代からの女性史を、史料の写真と共に見られるのは博物館ならではという感じで面白かった。内容もこなれてて読みやすい。
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プロローグ 倭王卑弥呼
『魏志倭人伝」—卑弥呼即位の背景/古代の女性リーダーは、呪術専門?
第1章 古代社会の男女
古墳の被葬者
機織具と女性の労働
ジェンダー区分の成立―律令国家
サトの生活―男女の協働
耕すー男女の労働と経営
第2章 中世の政治と男女
御簾の向こぅの女性たち
女院と女房のはたらき
第3章 中世の家と宗教
家の運営と財産
宗教と女性
第4章 仕事とくらしのジェンダー ―中世から近世へ―
中世の仕事とくらし
職業へのまなざし
1 職人と女職人
2 職業へのまなざしー女髪結と髪結
3 記号化する早乙女
第5章 分離から排除へ 近世・近代の政治空間とジェンダーの変容
表と奥
「奥」の消滅と女性の排除
第6章 性の売買と社会
中世の遊女―家と自立
近世遊郭の成立―商品化される遊女
遊女の群像
芸娼妓解放令の衝撃
近世遊郭の再編と近代公娼制度の展開
持続する遊郭
第7章 仕事とくらしのジェンダー ―近代から現代へ―
女性の職業の誕生
労働者としての女性
アジア太平洋戦争後の社会
エピローグ ジェンダーを超えて―村木厚子さんに聞く
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2020年に開催された歴博の企画展の内容をコンパクトにまとめた本。日本におけるジェンダー観、性別分業の様々なあり方を、古代から現代までを俯瞰するかたちでなぞっていく。様々な興味深い事例が、様々な図版と一緒に紹介されており、時勢の影響もあって、行きたくとも行けなかった人も博物館をまわっているような気分になれると思う。また巻末の参考文献一覧は、歴史研究とジェンダー論の組み合わせが様々な、豊穣な成果を生んでいることを分からせてくれるし、ジェンダー論という身近に感じられる問題についてさらに考察を深めたい人にとってもよいとっかかりとなるのではないだろうか。
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読んで良かった。企画展のニコ生見なかったの損したな。図録も欲しくなった。
古代から近代へ、社会のシステムが変わる度に、政や職業から徐々に女性が遠ざけられていく様子を豊富な史料と解説で追う一冊。
これまであった資料をジェンダー資料として再評価した話も面白い。
歴史は一本道じゃない、多様な視点で見るってこういう事なんだなとテーマ史の面白さも味わえた。
こんなに変化して今があるなら、これから良い方に変わることだってできるじゃんね。
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プロローグ 倭王卑弥呼
第1章 古代社会の男女
第2章 中世の政治と男女
第3章 中世の家と宗教
第4章 仕事とくらしのジェンダー―中世から近世へ
第5章 分離から排除へ―近世・近代の政治空間とジェンダーの変容
第6章 性の売買と社会
第7章 仕事とくらしのジェンダー―近代から現代へ
エピローグ ジェンダーを超えて―村木厚子さんに聞く
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国立女性教育会館 女性教育情報センターOPACへ→https://winet2.nwec.go.jp/bunken/opac_link/bibid/BB11503784
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とても面白かった。読了して印象に残った点は遊女の売買春を巡る法規制と現状がものすごく乖離されており、科学技術の進歩・変化スピードが激しい現代社会に適当ではないのではないかと感じた。