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立派な家を建てる
2022/03/10 16:35
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小説を書くのは、家を建てるのに似ている。
設計図を書き、土台を組み立てる。屋根をふき、壁をはる。内装、窓、床。
うまい骨格ができたからといって、住みやすい家になるとは限らない。雨が漏ったらおしまいだし、隙間風が吹いても台無しだ。
井上荒野のこの作品は、父で作家の井上光晴と不倫関係にあったといわれる瀬戸内寂聴、そして母である光晴の妻をモデルとしたもので、登場人物の名前こそ変えているものの、その関係はほとんど事実と思われる。
つまり、しっかりとした骨格を持った作品である。
生前の寂聴に当時の父との関係や自身が家にいて目にしただろう母の父への思いなどあるだろうが、骨格に屋根をふき、壁をこしらえたのは、作家としての井上荒野の力量だろう。
父のどうしようもない女性関係を娘として糾弾することもできただろうが、おそらく井上荒野にはそのすべは母のものだという認識があったかもしれない。
荒野の目を通して、寂聴の目が光晴を見、その妻を見ている。
荒野の目を通して、妻の目が光晴を見、寂聴を見ている。
さらに、この作品がすごいのは、荒野の目を通して、寂聴の目が荒野を見、母の目が荒野を見ている点だ。
そういう多重な視点が、この作品を単にモデル小説ではない、文芸作品にしたといえる。
タイトルにある「あちら」とはどちらなのだろう。
妻から見た「あちら」なのか、それとも寂聴から見た「あちら」なのか。
三人ともがすでに鬼籍にはいった、つまりは「あちら」の世界を指しているように思える。
自分の力でどうすることもできないものを「業」と呼ぶならば、その中で生き抜いていく人たちの心が強く伝わってくる力作。
2022/08/25 09:31
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
2021年11月9日。
作家の瀬戸内寂聴さんが逝去された。
享年99歳。
多くのメディアでその訃報が伝えられたなか、最も興味が引かれたのが作家の井上荒野によるものだった。
人気作家だった寂聴さんは51歳で出家。
その当時男女の仲にあった作家の娘がこの本の著者その人だ。
物語は、作家の長内みはると、その不倫相手である白木篤郎の妻・笙子の視点から交互に描かれていく。
「何かあって白木を好きになったわけではなかった。理由などないのだ。雷に打たれたようなものだとわたしは思った。結局、あの徳島の講演会の日の朝に、わたしめがけて白木が落ちてきたのだ」(みはる P75)
男女の関係を解消するために、出家を決めたみはる。
その場に行かなくて良いのかと、妻の笙子は篤郎に告げる。
そして、男女の中ではなくなった篤郎と寂光となったみはるの友人としての付き合いは続いていく。
「そんな男を、どうして彼女は愛してしまったのだろう。眠りに落ちながら、私はまだ考えている。愛が、人に正しいことだけをさせるものであればいいのに。それとも自分ではどうしようもなく間違った道を歩くしかなくなったとき、私たちは愛という言葉を持ち出すのか」(笙子 P102)
書き続けることで、自分を探し続けた寂光。
書くことを拒むことで、自分が明らかになることを拒んだ笙子。
「作者の父井上光晴と、私の不倫が始まった時、作者は五歳だった」
「モデルに書かれた私が読み傑作だと、感動した名作」
この本のモデルとなった寂聴さんが、帯に絶賛のコメントを寄せている。
自分の力でどうすることもできないものを「業」と呼ぶならば、その中で生き抜いていく人たちの心が強く伝わってくる力作。
自分の力でどうすることもできないものを「業」と呼ぶならば、その中で生き抜いていく人たちの心が強く伝わってくる力作。
2022/08/23 09:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
2021年11月9日。
作家の瀬戸内寂聴さんが逝去された。
享年99歳。
多くのメディアでその訃報が伝えられたなか、最も興味が引かれたのが作家の井上荒野によるものだった。
人気作家だった寂聴さんは51歳で出家。
その当時男女の仲にあった作家の娘がこの本の著者その人だ。
物語は、作家の長内みはると、その不倫相手である白木篤郎の妻・笙子の視点から交互に描かれていく。
「何かあって白木を好きになったわけではなかった。理由などないのだ。雷に打たれたようなものだとわたしは思った。結局、あの徳島の講演会の日の朝に、わたしめがけて白木が落ちてきたのだ」(みはる P75)
男女の関係を解消するために、出家を決めたみはる。
その場に行かなくて良いのかと、妻の笙子は篤郎に告げる。
そして、男女の中ではなくなった篤郎と寂光となったみはるの友人としての付き合いは続いていく。
「そんな男を、どうして彼女は愛してしまったのだろう。眠りに落ちながら、私はまだ考えている。愛が、人に正しいことだけをさせるものであればいいのに。それとも自分ではどうしようもなく間違った道を歩くしかなくなったとき、私たちは愛という言葉を持ち出すのか」(笙子 P102)
書き続けることで、自分を探し続けた寂光。
書くことを拒むことで、自分が明らかになることを拒んだ笙子。
「作者の父井上光晴と、私の不倫が始まった時、作者は五歳だった」
「モデルに書かれた私が読み傑作だと、感動した名作」
この本のモデルとなった寂聴さんが、帯に絶賛のコメントを寄せている。
自分の力でどうすることもできないものを「業」と呼ぶならば、その中で生き抜いていく人たちの心が強く伝わってくる力作。
実話がもと
2022/01/16 15:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
瀬戸内寂長さんと井上光晴さんの関係を、娘さんの井上荒野さんが、小説に。
当時のことはよく知らず、寂長さんの恋愛にそんなに関心があったわけではないが、なんとなく読み進めたら、面白かった。しかし、これは実話だと思って、亡き寂長さんの姿や発言などを思い出しながら読むから想像がふくらんで楽しいのだと思う。
単なるフィクションだったら、どうしようもない男女。すべてがグレーゾーンにあるような、すっきりしない思いを抱えてしまったと思う。
わからなかった。
2022/04/17 15:57
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:satonoaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
一応読み終えようと思い、読了した。
しかし、気持ちの悪さが残った。
寂聴さんは好きだし、人は誰も過去あっての今だから寂聴さんの過去も寂聴さんを育てたのにはちがいない。
モデルであり明らかな実話ではないにしても、彼女の過去のごじゃごじゃに付き合いたくはないと思った。