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サバイバー 新版 みんなのレビュー
- チャック・パラニューク (著), 池田 真紀子 (訳)
- 税込価格:1,320円(12pt)
- 出版社:早川書房
- 発売日:2022/01/19
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文庫
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紙の本
人生の所有者とは誰か。
2022/03/12 11:32
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分の人生は自分のもの。自分だけのもの。社会や他者によって支配されるものではない。
「ファイト・クラブ」の主人公の様に消費社会に支配されるのではなく、本作の主人公の様に他者評価に惑わされるのでもなく、
己の人生をその手に掴み決して手放すなとチャック・パラニュークは私たちに訴えかける。
何が欲しいのか、何を成し遂げたいのか、何のために生きているのか。
そうした自らの意志など皆無に等しい主人公は、社会の歯車として「生かされている」のであって自らの人生を「生きている」とは到底言い難い。
生きることへの虚無感、他者を媒介してのみ得られる生への実感、これらは「ファイト・クラブ」の主人公にも通ずる。
そしてそれは私たち現代人にもそっくりそのまま当てはまる。
いや、むしろ私たち現代人の方がより一層人生に虚無感を抱いているのかもしれない。
SNSの発達により他者評価が容易に可視化された結果、常に他者比較を行わずにはいられない人々。
他者からのイイねこそが全ての判断基準となり、自身の価値観などもはや誰も持ち得ていない。
自らの人生などそこには存在せず、あるのは他者への追従と世間と足並みを揃えることのみ。
まさに誰もが引用の引用の引用と成り果てている。
また、そのような人々を量産する社会構造そのものに対しても、著者は批判の手を緩めない。
夢や希望、愛情や友情、そして決して癒える事のない心の傷でさえも、金になるかどうかという判断基準でしか計れない拝金主義。
金になるためなら例えそれが嘘であろうと、人を傷つけることになろうと厭わない消費社会。
常に弱者が搾取され、富める者だけが更なる富にありつける。
しかし富める者でさえも金に支配されているに過ぎない。
そうした社会の現状を、皮肉とブラックユーモアを交えて描く著者の筆力には感服するばかり。
散文的な文章とユニークな語り口から紡がれる独自の文体も特筆に値する。
自由奔放なその文体は時にシニカルに、時にエモーショナルに私たちの心を揺さぶり続ける。
生の有限性を私たちの眼前に突き付け、生き方の是非を問うチャック・パラニューク。
どう生きるべきなのかという普遍的かつ深淵なテーマを描くからこそ、彼の作品は決して色褪せない。
そして彼が憂い批判した社会は、ますます悪化の一途を辿るばかりだ。
しかしだからこそ、本作から学べることは沢山ある。
「ファイト・クラブ」だけではない。
本作もまた人生の指標となり得る劇薬だ。
紙の本
その人の生き様が1冊の本だったら
2023/04/01 07:54
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
波乱に富んだ自らの人生を振り返っていく、テンダー・ブランソンの独白に引き込まれていきます。残りページ数が少なくなっていくにつれて、不思議な感覚を味わえました。
紙の本
サバイバーとは生き残ってしまった者
2022/02/01 19:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ツクヨミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
章立てが終わりから初めに戻るって構成になっているのは、この人らしい悪戯。素直に最初から読んでいってかまいません。むしろそう読んだ方が、時系列惑わされて、混乱する楽しみがあります(前作の『ファイトクラブ』もそうでしたよね。銃口を口に押し込まれている状況が始まりでした)。
主人公はカルト教団の中で生まれ育った人で、自分の境遇に何の疑問も抱いていません。金魚を飼い、タイルの目地のカビを歯ブラシで掃除します。
私達の人生が自由であるか?彼のような生き方にも価値がるような気が…は~い、私はパラニュークの術に飲み込まれて言います。ああ、『ファイトクラブ』でもそうだったのに!またやられた!
主人公は自分自身何かを望んだりはしていないのですが、周囲は放っておいてくれません。平凡な金魚に愛情を注ぐ退屈なくらい真面目な男が、波乱万丈な世界に直面させられ、そう、小説の最初の、ボイスレコーダーに語られる物語になってゆく。
どうやら早川文庫の担当編集者はパラニュークを翻訳発表したい熱意を持っていらっしゃるみたいですね。読者の一人として、あなたが頼りです。翻訳途絶えて読めなくなった読みたい本はたくさんあります。この後も頼みます。もっと読ませてください。もっと頭をくじってください!
紙の本
刺激のない毎日を送る現代人の鼻っ柱のちょうど真ん中目掛けて正確にパンチを決めるような美しさ
2022/03/10 21:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
カルト教団の生き残りになった男がいかにしてハイジャック犯になったのかを人生をカウントダウンするような形式で描いた狂騒的な小説。「ファイト・クラブ」の方が好きではあるけど、ところどころに平凡な人生に中指を立てるようなシーンがあってとても良い。パラニュークはイカれた作品を書いているようで、実は繊細な作家だと気付かされるのが面白い。刺激のない毎日を送る現代人の鼻っ柱のちょうど真ん中目掛けて正確にパンチを決めるような美しさがある。ファイト・クラブに続いて、シックで怪しげなデザイン含めて良い新版になってる。
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