失敗の研究的な面白さ
2016/02/23 01:56
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投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
兵頭二十八が著作でふれていたが、戦時中に国内総生産が増えなかった国は日本だけだそうな。国家総動員法という悪法と、軍部の被能率的な官僚主義的態度や、時代の空気感などいろいろあるが、根本的なところは民間を下に見る東アジア的な社会感に問題あったのだと思う。そうした戦時経済について思いを馳せさせてくれる良書。
エネルギー戦略を考える際に必読の一冊
2016/05/21 00:41
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本が太平洋戦争で対米開戦に踏み切ったのはアメリカからの石油の禁輸がきっかけであったことはよく知られています。当時、日本が実効支配していた満州や樺太では現在はかなりの量の石油が生産されています。もしも当時の日本がそれらの地域で石油を生産するに至っておれば、対米開戦のシナリオは違った結果を辿ったかもしれません。
なぜ、石油資源の豊富な地域を手にしていながら石油を手にすることができなかったのかを当時、石油探鉱に携わった軍や民間の記録を辿って検証します。
石油を探す技術や、原油から石油製品を生産する技術の欠如であったり、産油地から日本までの輸送計画のずさんさであったりと、ここでも科学的・合理的とは言いがたい当時の日本の対応が原因となっていました。
著者は商社で石油を扱っていたエネルギーのプロです。原発も含めたエネルギー問題を考える上で、過去の失敗を冷静に検証している貴重な資料だと感じました。
エネルギー戦略を考える際に必読の一冊
2025/05/22 11:46
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本が太平洋戦争で対米開戦に踏み切ったのはアメリカからの石油の禁輸がきっかけであったことはよく知られています。当時、日本が実効支配していた満州や樺太では現在はかなりの量の石油が生産されています。もしも当時の日本がそれらの地域で石油を生産するに至っておれば、対米開戦のシナリオは違った結果を辿ったかもしれません。
なぜ、石油資源の豊富な地域を手にしていながら石油を手にすることができなかったのかを当時、石油探鉱に携わった軍や民間の記録を辿って検証します。
石油を探す技術や、原油から石油製品を生産する技術の欠如であったり、産油地から日本までの輸送計画のずさんさであったりと、ここでも科学的・合理的とは言いがたい当時の日本の対応が原因となっていました。
著者は商社で石油を扱っていたエネルギーのプロです。原発も含めたエネルギー問題を考える上で、過去の失敗を冷静に検証している貴重な資料だと感じました。
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石油探査の専門家の本。
南方の石油を取りに行く話ばかり印象に残っていて、樺太や満洲で油田を探していたことを初めて知った。
例によって場当たり的で陸と海が無益な争いをしていて、頭が痛くなる。
発見できなかった理由を知って学ぶのは意味があるが、当時発見できていたとして、あの場当たり体質では活用できずに終わったのだろう、と思わせられる。
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日本軍が科学技術を軽視した結果きっちり痛い目を見た、というお話のうちの一つ。アメリカの経済制裁が手ぬるいせいで原油が輸入できてしまって開戦できてしまった(大意)、というのは初めて知った
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シェールオイルとオイルシェールの違いにびっくり(笑)。
オイルシェールは石油の出来かけというイメージらしい。
タイトルへの答えとしては、
①海軍と陸軍の軋轢と、石油への認識の違い。
特に陸軍での石油の重要性への意識の欠如
②探鉱の技術不足
に尽きる。
時系列が行ったり来たりして読みにくく、中身が入ってこないのが残念。
歴史にイフはないものの、大慶油田が当時湧いていれば、対米開戦はなかったかもしれないなぁと思う。
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本書は、日本の石油史を描いたもので、表題はその一部でしかない。
明治末期の石炭から石油への変換期、樺太石油のロシアとの交渉、満州や戦時の石油をめぐる政府や軍部、石油会社や技術者などの状況を記してあり、石油から見た日本現代史と言ってもいい。
石油技術者の意見や提言は、政軍には軽んじられ或いは理解が乏しく、水から作るなどの詐欺に騙されそうになったなど、エピソードも豊富である。
このように石油というか一次エネルギーは日本は恵まれていないのに、一般には関心が低いように感じられるのだが、それを覆すには、本書のような読みやすくわかりやすい良書が必要であろう。
著者は、石油事業に長年携わってきた経験があり、引退後は本書のように本を執筆することにも積極的に思えるので、今後の活躍が楽しみである。
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日本が太平洋戦争で対米開戦に踏み切ったのはアメリカからの石油の禁輸がきっかけであったことはよく知られています。当時、日本が実効支配していた満州や樺太では現在はかなりの量の石油が生産されています。もしも当時の日本がそれらの地域で石油を生産するに至っておれば、対米開戦のシナリオは違った結果を辿ったかもしれません。
なぜ、石油資源の豊富な地域を手にしていながら石油を手にすることができなかったのかを当時、石油探鉱に携わった軍や民間の記録を辿って検証します。
石油を探す技術や、原油から石油製品を生産する技術の欠如であったり、産油地から日本までの輸送計画のずさんさであったりと、ここでも科学的・合理的とは言いがたい当時の日本の対応が原因となっていました。
著者は商社で石油を扱っていたエネルギーのプロです。原発も含めたエネルギー問題を考える上で、過去の失敗を冷静に検証している貴重な資料だと感じました。
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数字は嘘をつかないが、嘘は数字を作ると言う言葉がでてきたが、嘘で積み上げられた石油の産出量や需要量でWWIIの開戦が決定された。事業計画でも根拠ないが、事業規模ありきで数値目標を積むこともあるとは思うが、責任をもって遂行できる数値目標を立てるべきだと思った。
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石油視点での日本史。
時系列にばらつきがあり、前提知識がないと若干読みにくい気がした。
客に前提知識があれば良書だと思う。
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世界最前線のビジネスマンが書いた本は、学者の書いた本とは全く違う面白さがある。
太平洋戦争開戦前に石油の需給や戦況の展開を正しく予想出来ていながら、対米戦を回避できなかった不思議。国民世論が戦争を望んでいたにせよ、東条英機の頭の中を覗いてみたいと思った。
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◆日本軍の組織としての問題点は、彼らが喉から手が出るほど欲しがった石油を定点に見ると、違った色彩で見える。自省心と虚心坦懐さのない組織は自壊していくのだと…◆
2016年刊行。
著者は物産子会社の三井石油開発の元常務執行役員。
まず本書はタイトルのことだけを書くに止まらない。つまり、対米英開戦の直接要因になったとされる石油枯渇が、軍・政の様々な失政の帰結である点を、石油を定点に露わする書だ。
つまり、
① 戦後1950年代当時の中国の技術ですら存在が確認できた満州地区の油田を、日本が発見・掘削し得なかった技術的・政治的理由
に加え、
② 北樺太の油田の開発・利用機会を外交的悪手で喪失。
③ インドネシアの石油施設の占領と、その利用・活用とは違うことを、海軍は失念(輸送護衛戦略の欠落)。
さらには、
④ 戦前、特に1930年代の油田発見や掘削技術に関する世界的潮流に言及し、日本がキャッチアップできていなかった内情
とともに、
⑤ その理由としての軍・官僚の無謬性の悪癖、
あるいは、
⑥ その帰結としての対米戦争の帰趨=必敗に関する軍の調査レポート(つまり猪瀬直樹が発掘した「総力戦研究所」以外にも、対米開戦必敗を報告したグループが存在した)と、
⑦ 米独はおろかソ連にすら「化学」「石油化学」の面で大きく見劣りしていた事実
が開陳される。
正直、③や⑤はこれまで散々語られてきたことで意外性はないが、石油という観点で見ると違う印象が生まれる面もある。石油不足=戦わずして負けるというほど石油に固執していたのだが、それを支える技術や思考が全く追いついていなかったこと、軍人らが組織体としてその事実を虚心坦懐に踏まえて対応策を練っていなかったことが透けて見える。
さらにいえば、奇形的に一部の技術面では優れていたものの、日本は総合技術力、技術を支える人的基盤の層が薄弱である。これは抽象的には意外ではないが、これも②⑦のように、石油という切り口で見るのは新鮮だ。
が、ここで一番印象的なのは⑥である。個人的に新規ネタということもあるが、正しい情報を上げても、受領側に虚心坦懐さがなければ、そして結論ありきの議論の不毛さに無自覚であれば全く価値を持たない。こんな様を見るにつけ、どうしようもないなぁと。
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そもそも陸軍は石油をあまり使わなかったので関心が薄かったというのが原因。
軍隊というのは保守的なので新しい流れについていけないのでしょう。
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【技術とは,ハードだけで成り立つものではない。何のための技術かというソフト面を追求することも重要なのだ】(文中より引用)
戦前の日本のエネルギー政策、特に石油との関係に光を当てながら、意思決定や思考法にまつわる様々な問題点を指摘した作品。著者は、三井物産で一貫してエネルギー関連業務に携わった岩瀬昇。
石油というフィルターを通して見た『失敗の本質』といった趣きの一冊。嘘が数字を作り願望が現実に優先する様子などからは、過去の出来事だからと済ませてはいけない教訓が満載かと。
少し硬い文章ですが☆5つ