サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. KTYMさんのレビュー一覧

KTYMさんのレビュー一覧

投稿者:KTYM

33 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本時の娘

2021/04/07 09:39

歴史ミステリの古典だが、楽しむには教養が必要

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

英国のジョセフィン・テイ、1951年の作品。歴史ミステリの古典的名作ということで手に取ってみた。残念ながら英国の中世史に明るくない自分としては、頻出する片仮名の固有名詞に混乱させられて(別人のリチャードとかエドワードとかが何人も出てくる)、話の筋道について行けなかった。そして何より、本書の前提となっている一般的な英国人の歴史認識(幼い王子を惨殺した王位簒奪者。悪逆非道のリチャード3世)を共有していないので、スコットランドヤードのグラント警部がベッドに寝たきりの状況で、歴史的資料(と助手)だけを頼りに英国史の秘密を解き明かして見せても、何の感興もわかなかった。江戸川乱歩などは、論理的解明のプロセス(の面白さ)を評価しているようだが、正直、あまりピンとこなかった。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本第二の銃声

2021/01/21 20:34

ミステリ黄金期の実験作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

アントニイ・バークリー、1930年の作品。「毒入りチョコレート事件」と同じ素人探偵ロジャー・シェリンガムもの。「毒入り~」がちょっと肌に合わず、警戒していたのだが、これは傑作。語り手である中年に差しかかかった(35歳!!)野暮天男(シリル・ピンカートン)の不器用な恋物語を大笑いしながら読み進めてい行くと、プレイボーイの嫌われ者エリックが殺される。推理劇で殺され役を演じている最中に殺されるという凝った設定。登場人物は全員がエリックを殺す十分な動機を持っている。(いつもと違って?)颯爽とした探偵ぶりを見せるロジャー・シェリンガムが解き明かした真相は。。。
「毒入り~」と同じく、推理小説における探偵の特権性、「真相」の恣意性を強く意識した実験作ですが、とても読み易く、満足しました。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本赤い収穫

2020/12/20 18:27

ハードボイルドミステリの原型にして、究極の完成形

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

西部の鉱山町パースンヴィルに現れたコンチネンタル探偵社の調査員(通称「名無しのオプ」)。しかし、依頼人は彼と会う前に殺されてしまう。町は銀行家兼新聞社オーナー、賭博師、酒の密売人、警察署長等の大立者達が喰いものする「ポイズンヴィル(毒の町)」だった。
「さてこれからは、こっちのお楽しみの時間です。お遊びのカネも、あなたがくれた一万ドルがあります。ポイズンヴィルの町を、のど首から足首まですっぱりと切り裂くためにつかうつもりです。」黒沢「用心棒」やレオーネ「荒野の用心棒」にも踏襲されたあまりにも有名なプロット。演出は名無しのオプ。血で血を洗う抗争劇の幕が切って落とされる。
1927~28年にかけてアメリカのパルプ雑誌「ブラックマスク」に連載されたダシ―ル・ハメットの処女長編。
 1.心情描写を排した、乾いた歯切れのいい文体。
 2.感情に流されず、固く信念を曲げない主人公(だが、必ずしも倫理が高いわけではない。そして大量の飲酒を伴う)。
 3.曲がりくねって辿り難いストーリーライン(主人公が人に出会い、会話をすることで何かが起こり、行き当たりばったりに事件が展開する)。
というハードボイルドミステリの特徴を見事に兼ね備えています。黎明期に登場したハードボイルドミステリの原型にして、究極の完成形、凶悪な傑作です。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本ユダの窓

2020/12/08 21:46

「密室の名手」による法廷物の傑作

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

カーター・ディクスン(ディクスン・カーの別名義)による法廷物。おどろおどろしい怪奇趣味は封じていますが、圧倒的なリーダビリティで最後まで一気に読ませます。
結婚を申し込むために訪れた恋人の家で突如前後不覚となり、気が付くと、結婚を祝福してくれた筈の恋人の父親が胸に矢を突き立てられ、息絶えていた。部屋は内側から「差し錠」がかけられた完全な「密室状態」。矢からは本人の指紋が検出され、殺された父親は結婚に反対していたという証言も。
圧倒的に不利な状況で、窮地に立たされた青年を救うためにH・M(ヘンリ・メリヴェール)卿が立ち上がる。得意の毒舌と下品な冗談は(やや)控え目に、ただし芝居っ気はたっぷり。この人は柄にもなく弁護士だったんですね(スパイの親玉かと思っていました)。
タイトルの「ユダの窓」を使ったトリックはさておき、密室状況を作り出す手腕はさすがです。
次々と新たな事実が明らかになるスリリングな展開で、巻を措く能わず能わずの傑作です。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本予告殺人 新訳版

2020/11/03 10:05

予告殺人

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「殺人をお知らせします」
イギリスの田舎町の新聞に、殺人予告の広告が出されます。そして、パーティのアトラクションかと思って集まった村人たちのいる前で、スイス人のホテル従業員が射殺されます。
アガサ・クリスティが1950年に発表した「予告殺人」。エルキュール・ポワロと並ぶもう一人の人気キャラクター、ミス・マープルの登場です。
「想像していたよりもはるかに温和な雰囲気で、ずっと年をとっていた。実際のところ、とても高齢に見えた。雪のように真っ白な髪、ピンクの皺だらけ顔、とても穏やかな無邪気なブルーの瞳」お喋り好きで、意外とフットワークも良くて、村人たちとお茶をしながらさりげなく情報収集したりします。本作品執筆当時、60歳になっていた作者の自己投影でしょうか、とってもほんわかとしていて、しかも深い人間性への洞察を持ったクリスティらしい人物造形です。
第2、第3の殺人が起きる中で、田舎村に暮らしてきた老嬢をめぐる過去に遡るドラマが明らかになります。特に奇を衒ったトリックがあるわけでもなく、読み返してみると随所にヒントや伏線が提示されているのですが、巧みな語り口にすっかり目を眩ませられてしまいました。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本Xの悲劇

2020/08/14 10:35

名探偵ドルリー・レーン登場

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

エラリィ・クイーンが1932年にバーナビー・ロス名義で発表した「悲劇4部作」の第1作。

本作の見所は、まずは探偵役ドルリー・レーンの造形でしょう。「ハムレット荘」と呼ばれるハドソン河沿いに建つ古城に執事フォルスタッフ(!)と(キャリバンと呼ばれる)元舞台の扮装係の老人クエイシーと共に住む引退した世界的シェイクスピア俳優。聴覚の障害が原因で既に舞台を退き、会話も読唇術を使って行います。ドルリー・レーンは、大時代なインバネスのケープを身に纏った総白髪の一見上品な老紳士なのですが、時に俳優としての天賦の才(とクエイシーの職人技)を活かし変装もして捜査を行います。そして、時にはハムレット荘の屋上で全裸(に腰布一枚の姿)で日光浴(笑)をします(褐色で筋肉質のいい身体をしています)。別名義での作品を発表するにあたって、作者も相当な工夫をこらしているようです。
本作のもう一つの見所は、これはクイーン名義での作品と同様、論理の力で真相が導き出すされるプロセスで、特に路面電車での第一の殺人においてドルリー・レーンが犯人を絞り込んだシンプルな論理には、「成程っ!」と唸らせられました。そして、第三の殺人の被害者によって残されたダイイングメッセージ(クロスされた左手の人差し指と中指)の意味が解き明かされるラストにはドキドキしました。なぜ左手なのか、なぜX(クロス)なのか。

変装術のリアリティ等、現代の眼からは突っこみたく点もあるのですが、とても読み易く、謎解きも見事で、まさに推理小説史に残る名作です。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本誰の死体?

2020/04/29 11:48

貴族探偵ピーター・ウィムジィ卿デビュー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ドロシー・L・セイヤーズの1923年発表のデビュー作です。セイヤーズは、「ミステリの女王」としてアガサ・クリスティと並び称されるミステリ黄金期に活躍した作家です。
ある朝、ロンドンにあるフラットの浴室で全裸に金縁の鼻眼鏡と金鎖を身につけただけの死体が発見され、同時に金融界の名士の失踪も明らかになります。事件に挑むのは、青年貴族探偵ピーター・ウィムジィ卿。これは一体、誰の死体なのか?
メイントリックについては、後半にさしかかるあたりで何となく分かってきてしまうのですが、とにかく読んでほんわかした気分になれる楽しい作品です。超有能なスーパー執事バンターや、ピーター卿の母親であるデンヴァー先代公妃などサブキャラクターが最高です。シリーズ物になっているので、是非続きも読んでみたいと思います。こういう作品が何気なく存在するところに、ミステリ黄金期の懐の深さを感じました。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本白い僧院の殺人

2020/03/09 23:50

密室物の名手による直球勝負の佳作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

カーター・ディクスンによるH・M(ヘンリ・メリヴェール)卿ものの2作目。前作「黒死荘の殺人」に比べると怪奇趣味も控え目で、H・M卿も大人しい。事件の舞台も雪に囲まれた「白い僧院」とスマートなイメージ。ここで有名女優の死体が発見されるが、発見者以外の足跡は存在しない。所謂「足跡のない殺人」である。メイントリックはシンプルそのもの。不可能状況を可能にするのはこれしかないのだろうな。手掛かりも随所に提示されているのだが、なかなか見抜けない。前作とは一転、直球勝負の佳作です。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本そして誰もいなくなった

2020/03/09 21:49

ミステリ史に永遠に残る名作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ミステリの女王アガサ・クリスティの1939年の作品。
英国デヴォン州沖の孤島「兵隊島」に10人の男女が集められる。しかし招待主は姿を現さない。
晩餐後の団欒中に、突然、彼ら全員の過去の罪を告発するメッセージが流され、第一の殺人が発生する。
「小さな兵隊さんが十人、ご飯を食べにいったら 一人がのどをつまらせて、残りは九人」
マザーグースの童謡になぞらえたやり方で、招待客は一人、一人と死んでゆく。晩餐のテーブルに飾られた10体の陶器製の「兵隊」人形も、一つ、一つ減ってゆく。。。
「小さな兵隊さんが一人、あとに残されたら、自分で首をくくって、そして、誰もいなくなった」

逃げ場のない閉鎖空間の中で、罪の意識にも苛まれながら、「次は自分か」と追い込まれて行く登場人物たち。この辺りのサスペンスは凄まじく、頁を繰る手が止まりません。さすが、クリスティは読ませるのが上手い。

特に奇を衒ったトリックがある訳ではありませんが、ミステリの王道をゆく設定と、見事なリーダビリティ、人間描写の巧みさに圧倒され、読み終えると呆然としてしまいます。ミステリ史に永遠に残る名作です。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本エジプト十字架の謎

2020/01/04 20:48

厳格なる論理

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「Yの悲劇」「ギリシア棺」などを発表し、クイーンが脂の乗り切っていた時期(奇跡の1932年)に発表された作品。
クリスマスの夜に、ウエストヴァージニア州のT字型の道標に磔にされた首なし死体。高級リゾート地ロングアイランドでもトーテムポストに磔にされた絨毯輸入商の首なし死体が発見される。
残虐な犯罪、太陽神の教えを説く預言者を名乗る謎の老人、高級リゾート地のヌーディストビーチなど、派手な道具立てが満載、高級スポーツカー、飛行機など最新の交通手段を駆使してアメリカ大陸をまたに架けた大捕り物が繰り広げられる終盤の展開もスリリングで、リーダビリティのとても高い作品に仕上がっています。発表当時としては一大エンターテインメント作品だったと思われます。
ミステリとしてみると、「首なし死体」によるメイントリックはうまく出来ていて、真犯人が明らかになった瞬間には、我が目を疑いました。ただ、DNA鑑定など科学的捜査が当たり前となった現代の読者の視点からすると「首なし死体」は(仕方ないんだけど)はやきつい感じがしました。
ミステリとしては、メイントリックよりも、「パイプ」「チェッカー盤」「山小屋」など、些細な手掛かりをもとに展開される緻密な推理、全体像構築のプロセス(読者への挑戦状に記されている「与えられたデータをもとに、厳格なる論理と推理を働かせること」)を味わうべきものでなのしょう。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本三つの棺 新訳版

2019/12/02 18:47

密室物の巨匠カーの代表作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ジョン・ディクスン・カー、1935年の作品。フェル博士による有名な「密室講義」が入ってます。
雪の降りしきるロンドンで時をおかずして発生した2件の殺人事件。衆人環視のもと、雪上に足跡も残さずに犯人は忽然と姿を消した。トランシルヴァニアの血塗られた墓場から蘇った奇術師なのか。
さすがにトリックは良く練られてて、本書終盤で繰り広げられる「密室講義」で紹介されるトリックのバリエーションというか集大成とも言うべき出来で、脱帽です。真相解明パートがやや混み入っていて(何しろいろんな仕掛けがあるので)、やや分かり易さに欠けるのが玉に瑕か。
フェル博士は、カーター・ディクスン名義での探偵役H・M(ヘンリ・メリヴェール)卿の悪ノリぶりに比べると至って真面目な常識人という印象。「密室講義」での滔々たる語りぶりはご愛嬌。
密室物の巨匠カーの代表作と呼ぶに相応しい傑作です。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本オリエント急行の殺人

2019/11/04 12:45

いじられキャラの名探偵ポアロ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

アガサ・クリスティ、1934年の作品。
大雪に降り込められ、立ち往生した深夜のオリエント急行で発生した殺人事件。
事件に挑むのは、偶然乗り合わせたベルギー人の名探偵エルキュール・ポアロ。
容疑者は寝台車に乗り合わせた国籍も社会階層も様々な乗客たち。雪のため誰も逃げられない「クローズドサークル」の状況下、ポアロによる捜査が始まります。
本作では、「ちょっと変な外人」というポアロのキャラクターが際立っています。「スタイルズ荘」での初登場以来、回を重ねる毎にポアロを描く筆致はこなれてきて、今や作者自身、ポアロをイジるのが楽しくて仕方ないといった按配です。
「・・・エルキュール・ポアロは口髭を濡らさないようにしてスープを飲む仕事にとりかかった。」
「(ポアロは)毛髪をカールさせるのに使う焼きごてを持って戻ってきた。『口髭に使ってるんです』焼きごてのことをポアロはそう説明した。」
「(ポアロ)『わたしの名前はご存知と思いますが』『そういえば、どこかで聞いたような―婦人服のメーカーの名前だと、ずっと思ってたんですが」

そして、誰もが驚き、誰もが納得する大胆且つシンプルなメイントリック。「アクロイド殺し」や「そして誰もいなくなった」などもそうですが、クリスティは「読者を如何に騙すか、そして愉しませるか」ということに拘り、考えに考え抜いた作家なのだな、と感じました。
実は今回は、小学校高学年での初読、英語の勉強もかねた中学生時代の原書での再読に続く、3度目の「オリエント急行」だったのですが、忘れようもない「衝撃の真相」を念頭に読み返してみると、のっけから登場人物の怪しい言動や手掛かりが満載。あちらこちらに真相を示唆するヒントが明示されていて、本当に良く出来た推理小説だと驚き、かつ感心した次第です。
誰が読んでも満足できるミステリ黄金期を代表する傑作です。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本クロイドン発12時30分

2019/10/16 09:31

倒叙ミステリの傑作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

アイルズ「殺意」、ハル「伯母殺人事件」と共に、三大倒叙ミステリと評されるF.W.クロフツ1934年の作品。大恐慌期の英国、財政的に困窮し、殺人を犯すに至った実業家の姿が、クロフツらしい地に足の着いた筆致で克明に描き出されます。
倒叙の手法を用いることで、犯罪に至るまでの心の葛藤や自己正当化の論理、犯行後の不安定な心理状態など、犯人の心の動きを見事に描くことに成功しています。犯行を計画し、実行する過程が細部に至るまで丁寧に描かれていてスリリングです。
終盤の法廷の場面では、証言の信頼性を揺るがせることを狙った弁護側の作戦や、弁論の展開に伴って一喜一憂する犯人の心理描写もあり、法廷小説のはしり的な側面も。
最終章のフレンチ警部による捜査プロセスの解説(?)では、一見完璧に見えた犯罪がどのように露見したのかが明らかにされ、(倒叙手法をとりつつも)謎解きミステリとしての面白さも確保しています。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本ギリシャ棺の謎

2019/09/28 06:55

ミステリの王道をゆく佳作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

エラリィ・クイーン奇跡の1932年(本作の他に「エジプト十字架の謎」「Xの悲劇」「Yの悲劇」を発表)の作品。国名シリーズの第三弾となりますが、時系列的には最初期に設定され、エラリィ・クイーンが活躍する最初の事件となります。
画廊を営むギリシア人が死亡、書き換えられたばかりの遺言状がなくなっていることが判明する。そして、ギリシア人画商の棺桶からは、別人の腐乱死体が発見される。。。
警察と共にエラリィ・クイーンも捜査に乗り出しますが、画商の遺産相続とレオナルド・ダ・ヴィンチの幻の名画を巡り、事件は混迷を深めます。そして第二の犠牲者が。
若きエラリィ・クイーンは狡猾な犯人の術中にはまり、一度は膝を屈することになります。得意になって披露した推理が根底から覆されてしまいますが、屈辱に耐え真相究明に取り組む姿が印象的です。後年の名探偵は、この時味わった挫折を糧にして誕生するのです。
事件が二転三転する中で、最後に明らかになる真犯人にはびっくり。露ほども疑いませんでした。これといった大トリックはないものの、随所に巡らせた伏線を手繰り寄せ、論理の力で全体像をくみ上げる手腕は見事です。
本格ミステリの王道をゆく佳作だと思います。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本僧正殺人事件

2019/07/21 21:33

「見立て殺人」ものの代表作

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

推理小説黄金期を代表するヴァンダインの傑作(1929年)。
 だあれが殺したコック・ロビン?
 「それは私』とスズメが言った
 「私の弓と矢でもって コック・ロビンを殺したの」
ニューヨークの高級住宅街で殺人事件が発生。胸に矢を突き立てられた被害者の名前はロビン。新聞社には「僧正」を名乗る人物から、英国の童謡マザーグースの一節をタイプしたメモが届けられる。そしてマザーグースの歌詞に導かれるかの様に、第2、第3の殺人事件が。緻密、狡猾かつ凶悪な犯人に翻弄される捜査陣。「僧正」と名探偵ファイロ・ヴァンスの息詰まる駆け引き。これといったトリックは出てきませんが、異様な雰囲気に引き込まれ、衝撃の結末に至るまで一気に読まされます。
所謂「見立て殺人」ものの嚆矢にして代表作。音楽、美術、最新の理論物理学からチェスの名手に至るまで様々な分野への夥しい言及がなされるペダンティックな語り口が特徴。当時としては相当スタイリッシュな作品だったと思われます。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

33 件中 1 件~ 15 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。