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うりぼうさんのレビュー一覧

投稿者:うりぼう

13 件中 1 件~ 13 件を表示

紙の本

紙の本霧のむこうに住みたい

2017/07/30 10:14

旅先に持参したい本です

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

旅先に持参したくなるような本のひとつに、須賀敦子さんの『霧のむこうに住みたい』でがあります。須賀さんの代表作「ミラノ 霧の風景」を彷彿とさせるブックタイトルですが、単行本未収録の短いエッセイが詰まっています。生前、須賀さんはタイトルになった「霧のむこうに住みたい」というエッセイが一番好きだと語っていたそうです。馴染んだ街のなにげない日常のワンシーンを切り取ったようなエッセイからは、今にも溢れんばかりの風景との対話がこだましてきます。懐かしい過去への追想や未来への仄暗い予感が交錯し、縦横無尽に時間軸を行ったり来たりするところがいかにも須賀さんらしいところです。そして、その場の空気や匂いや手触りを的確になぞってみせるのです。ひと言で云えば<空気感>とでもいうべきものでしょうか。「なんともちぐはぐな贈り物」という一篇を読むと、トラブルに見舞われたイタリア人青年とヘルプを頼まれた須賀さんが直面した出来事をその漏らさず追体験できること請け合いです。その場に居合わせたような錯覚さえ読者にもたらすあたりが、須賀さんの魔法なのかも知れません。ガイドブックや地図を持たない旅にこそ、須賀さんのエッセイをお供させたいものです。

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紙の本

人工知能はどこまで進化するのか?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

人工知能をロボットに譬えるのは必ずしも適当ではありませんが、チェスにはじまり将棋、碁と立て続けにロボットに敗北したとあっては、棋士ならずとも心中も穏やかではいられません。ロボット(人工知能はさしずめロボットの脳にあたります)に譬えようがマシンに譬えようが、開発者は人間なのだから素直に喜べばいいという見方に与するわけにはいきません。なにしろ、AIはディープラーニング(深層学習)という高度な武器を身に着け絶えず進化しているからです。専門家曰く、ディープラーニングは人工知能研究における50年来のブレイクスルーだそうです。2015年3月に刊行された『人工知能は人間を超えるか』のなかで著者松尾豊氏は、<囲碁は、将棋よりもさらに盤面の組み合わせが厖大になるので、人工知能が人間に追いつくにはまだしばらく時間がかかりそうだ>と述べています。今年5月の「アルファ碁」の快挙(!?)は、時間軸において、あっさり専門家の予想を裏切った格好です。

ディープラーニングあるいは特徴表現学習によって武装した人工知能の未来は、ある意味、とても不気味です。2045年には人間の脳を超え自我を持って人類を支配する「シンギュラリティ(技術的特異点)に到達すると主張する専門家もいるわけですから、なおさらです。

意思決定のプロセスを可視化して人類が最終的にAIを制御できるのかどうか、人類の挑戦はこれからです。

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紙の本

『お金の大学』に書き切れていないことを補足します

10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者である両@リベラルアーツ大学学長氏は、高校在学中に起業、20年以上にわたって本業(?)で稼ぎながらリべ大を運営、SNSで熱狂的に支持されているようです。カラフルでイラスト付きの本書は、若い世代には格好のマネーテキストかも知れません。一番感心したのは、人生で最も高価な買い物のひとつ、車や家のリセールバリューに言及していることでした。

本書は、「生活費<資産所得」という状態を<経済的自由>と定義し、想定読者であるサラリーマンやOLに対して、資産所得(配当&利子所得や不動産所得)や事業所得の獲得をめざせと説いています。前者は昔から存在する伝統的な資産運用による所得、後者は所謂副業に相当します。IT革命によって、ネット環境を縦横に駆使したサイドビジネスには無限の可能性がもたらされ、得意分野で本業以外の収入源を確立することは<経済的自由>獲得への大いなる橋頭保となるでしょう。<経済的自由>というより<経済的自立>と呼んだ方が適切な気がします。かつて、moonlight jobと称された副業は今や本業に迫る勢いなのです。最近は、日本でも”FIRE”(Financial Independence, Retire Early=経済的に自立した早期退職)が盛んに叫ばれるようになり、米国のようにセミリタイアの目安となる「年間支出の25倍の資産」構築に励む人も着実に増えているような気がします。

その昔、日本人の大半はお金のことについて語ることをはしたないと思っていたはずです。今もかかる風潮がないとは言い切れません。しかし、究極の文明の利器iPhoneや情報収集に欠かせないネット環境を自宅で調えるのに先立つものはお金です。至極真面目にお金のことを考えることは、21世紀を生きる上で是非とも習慣化したい事柄のひとつだと思うのです。

『お金の大学』でことさら強調していない点や書き切れていない点を補足しておきたいと思います。

1)「本業はかけがえのない大切なものだと思え」~自分というアセットで稼げる資本要らずの収入源だという認識を持とう~

2)「身体が資本」~本業を継続するために欠かせないものは肉体的・精神的健康です~

3)「お金を増やすことを自己目的化しない」~貯蓄と消費のバランスが大切です~

4)「不労所得とは働かずに得たお金のことではない」~絶えず社会金融情勢に関する情報収集を怠らないこと~

5)「予実管理の徹底」~予算と実績をエクセルなどで月次管理すべし~

6)「自分の得意分野で副業の可能性を探る」~好きこそものの上手なれ~

7)「少子高齢化が社会に及ぼす影響を常に考える習慣を身につける」~自分なりの未来予想図を描いてみることです~

8)「ブラックスワンは一定の周期で必ず訪れる」~想定外の事態が襲来することを忘れないことです~

9)「人生にとって一番高価な買物は<伴侶>、<家>、<車>の順だと心得よ」~買う前に熟慮が必要です~

10)「安物買いの銭失い」(”Penny wise, and pound foolish”)~長く使えるものにこそ愛着が宿る~

11)番外篇「日本は金利を喪失した国だと心得よ」~金利では暮らせない~

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電子書籍

Option B vs 因果応報

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

フェイスブックのCOOシェリル・サンドバーグが、夫デーブの急死からどのように立ち直ったかを克明に綴った『OPTION B』(共著者は心理学者アダム・グラント)を読んで、確かに人生はオプションBの連続だと再認識させられました。仕事上の挫折や失恋の痛手とは比較にならないインパクトをもたらすであろう家族の突然の死に直面して、彼女は何を考えどう行動したのでしょうか。

前作の全米ベストセラー『LEAN IN』も然り、彼女はブックタイトルだけで読者の関心を惹きつけてしまう才能があるようです。誰にでも降りかかる可能性のある人生を打ち砕きかねない不幸な出来事に遭遇したとき、オプションBという選択肢をポジティブに捉えて掴み取るという態度が状況を改善してくれる(ことがある)、著者のメッセージをそんな風に受け止めました。本書の腰巻にある「次善の策」という訳語は似つかわしくないと感じました。

本書の副題、"Facing Adversity, Building Resilience, And Finding Joy"にも立ち直りのヒントが隠されています。レジリエンスとは元の状態に戻そうとする復元力のことですから、置かれた逆境に応じて復元力を培う処方箋は自ずと違ってきます。本書には様々な逆境に身を置いた人々の体験談が紹介されていて、共感できる言葉が幾つもありました。「考え得る最悪の事態(今より悪い状況)が起こっていたら」と考えてみることは、自分の経験上も悲しみを和らげてくれる効果があるように思います。翻って、親しい人が不幸な出来事に遭遇した場合、どう接するべきか、どんな言葉をかけてあげるべきか再考を余儀なくされます。他人の痛みを理解し想像することは筆者が指摘するように至難です。一番心に突き刺さったのは、不幸な出来事をきっかけに周りから人が消えていくという現象です。そっとしておいてあげようという心配りが却って逆境にある人を疎外してしまうわけです。

超一流のビジネスウーマン、シェリルが身を置くのは競争社会米国、周囲の友人知人も総じてインテリジェンスがあって理解力に富む人たちです。少しずつ時間が経つにつれて、彼女の内に秘めたレジリエンスの種が芽吹き、差し伸べられた救いの手でさらに大きく成長していったのでしょう。ある意味、彼女は逆境をバネに成長してもうひとつのサクセスストーリーを体現した格好です。

けれども、自分は本書が提示するような処方箋を受け容れることはできそうにありません。どんなに辛くてもその過酷な状況を独りで受け容れるしかないと思っています。不都合な真実である老病死と向き合うことこそ生きているということの実質なのですから。瀬戸内寂聴さんの言うように「孤独を生ききる」しかありません。本書で苦難からの立ち直りを妨げるとされる3つのPのひとつ、”Personalization(自責化)”は、仏教でいう因果応報や自業自得に他なりません。英訳すれば”What goes around comes back around”、本書を読んで人生観の彼我の違いに改めて気づかされます。

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紙の本

紙の本ライオンのおやつ

2020/04/13 10:30

『ライオンのおやつ』~祝2020年本屋大賞2位~

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『つばき文具店』が2017年の本屋大賞候補にノミネートされたとき、自分のなかでは一押しだったのですが、結果は残念ながら4位でした。今回の意欲作『ライオンのおやつ』こそ、大賞1位にと念じていましたが惜しくも2位、1位はBLの世界を取り上げた『流浪の月』で432点、『ライオンのおやつ』は380点、3位は327点だったので、叩かく評価されたことは間違いありません。

瀬戸内海に浮かぶ小島にあるホスピスを舞台にしたこの作品を読み進むにつれ、奇妙なブックタイトルに託した作者の思いがじんわりと伝わってきました。死を受け容れた者だけが受け入れられるホスピスという最期の居場所は、紛れもなく非日常の世界。余命数ヶ月をどう生きるかという難しいテーマに取り組んだ作者の目論見は、心温まる佳作に昇華されていて、読者に静かな感動をもたらしてくれます。

生きることは、詰まるところ、衣食住なかでも食に収斂するものなのだとつくづく思いました。余命宣告を受けた33歳の主人公海野雫は、自暴自棄になりそうな時期を克服して、クリスマスの日にスーツケースひとつでホスピス<ライオンの家>にやって来ます。暖かい場所で海を見ていたいという動機からでした。ホスピスの代表マドンナは、快く彼女を迎え入れます。

このホスピスのメインイベントは、毎週日曜日の15:00から始まる「おやつの時間」。くじ引きで選ばれたゲストのリクエストに従って、至福の思い出が詰まったおやつが振る舞われます。ゲストが何故そのおやつを選んだのか、マドンナがリクエストの理由を朗読で披露することになっています。登場するのは、カヌレ、牡丹餅、豆花、ミルクレープ・・・・・

ホスピスの朝食では様々なお粥が供されます。お粥には「粥有十利(しゅうゆうじり)」と呼ばれる10の効用があるのだとマドンナは諭します。こうして、ゲストは食べることに生きがいを感じるようになり、「おやつの時間」はゲストにとって希望の時間となるのです。

チューブやウィッグから解き放たれた海野雫は人生を味わい尽くそうと、<私、まだちゃんと生きている>という確かな手応えを感じながら、日々新しい出会いや発見に胸を躍らせます。ホスピスに来なければ実現しなかった六花という名前の犬との触れ合いや、島でワイン作りに励む同世代のタヒチ君との出会いが生きる上で大きな支えになっていきます。看護師でありカウンセラーでもあるマドンナは、優しい眼差しで海野雫を見守ります。

さりげない日常がかけがえのない貴重な時間だということを、ホスピスにやって来た海野雫を通して、痛いほど思い知らされます。そして、人は生きているかぎり変われるチャンスがあるのだということを、ホスピスのゲストが身を挺して教えてくれます。誰しもいずれ死と向き合わなければなりません。にもかかわらず、人は死を遠ざけるどころか忘却の彼方へと追いやりがちです。逆説的ではありますが、今日この日をどう過ごしたいのか、生と真っ直ぐ向き合うことの大切さを教えられた気がします。もう少し敷延するとすれば、スティーブ・ジョブズが2005年にスタンフォード大学の卒業式スピーチで語ったように、なすべきは「もし今日が最後の日だとしても、今からやろうとしていることをするだろうか」と自問自答してみることなのかも知れません。

『ライオンのおやつ』を読み終えて、真先に頭に浮かんだ言葉はメメント・モリでした。次にぼんやりと像を結んだのは家族で囲む食卓でした。作者は、いずれ訪れる死という確かな現実から目を背けるなと<ライオンの家>のゲストに託して、優しく語りかけてくれたのです。

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紙の本

紙の本泣くな研修医

2020/04/05 18:41

『泣くな研修医』研修医奮闘記Part1

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

主人公は25歳、心優しき研修医1年目の雨野隆治。通称アメちゃんの出身地は鹿児島県、勤務先は東京下町にある牛之町病という設定です。鹿児島大学医学部卒業後、都立駒込病院で研修した作者中山祐次郎さんの実体験が色濃く投影していることは間違いありません。

それだけに、「コード・ブルー」に代表される研修医にスポットを当てた医療ドラマ・映画より、本書は細部において圧倒的にリアリティが勝ります。医師国家試験に合格して晴れて研修医として働き始めたとき、一番キツイことは宿当直勤務が月に何度もあるということです。アメちゃんは寮住まいですが、病院のソファで仮眠するシーンが度々登場します。36時間前後の連続勤務は、心身共に健康な20〜30代の医師にとってさえ相当な負担のはずです。単行本の帯には<雨野隆治、25歳、外科研修中。今日も家には帰れない、帰らない。>とあります。一方、ドラマに登場する病院はおしなべて小綺麗で、お化粧した医師や看護婦を演じる俳優からは、過労死寸前の過酷な労働環境は決して伝わってきません。電子カルテになって以前より少しは負担が減ったのかも知れませんが、カルテ作成も外部からは見えてこない大きな事務負担です。最後の医療行為、死亡診断書の作成も然りです。カルテの記載内容を克明に描いた点が本作の特筆すべきところです。

リアリティはこんな場面でも発揮されます。腹痛で運び込まれた14歳の少女のお腹を見て、アメちゃんは「ー綺麗なお腹だ」と内心呟きます。病院は概ね高齢者ばかりだという現実を再認識させられます。サチュレーションが低下し患者さんの救命治療も限界に達したとき、アメちゃんが家族からCPR(CardioPulmonary Resuscitation=心肺蘇生法)を続けるべきかかどうか訊ねられて、逡巡しながらも否と答えるシーンは

そうした医療現場のリアリティに加え、確かな人物造形がストーリーに奥行きを与えています。指導医は強面の岩井先生、アメちゃんにとっては雲上人(上の先生)になります。4年次上の女医佐藤先生が直属の上司で厳しく実務を指導し、ベテラン看護師の吉川さんが温かい目でアメちゃんをサポートします。同期で私大医学部卒のシティボーイ川村先生は、合コンのアレンジなどプライベートでアメちゃんに接近、他愛ない会話でアメちゃんにひとときの安らぎを提供します。

読者は、ページを重ねるたびにアメちゃんと共に慣れない医学用語を学んでいくことになります。医学用語は歴史的にドイツ語だったので、ムンテラ(症状説明)やステる(sterben=死ぬ)という言葉も頻繁に登場します。最近はドイツ語よりも英語が一般的になったためでしょう、心肺停止はアレスト(cardiac arrest)と呼ばれています。末期癌のケースでQOLに着目したBSC(Best Supportive Care =症状緩和治療)も、最近よく耳にするようになりました。

これから医学部をめざす高校生や現役医学生に是非読んでほしい一冊です。

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紙の本

紙の本逃げるな新人外科医

2020/04/05 17:31

リアリティに富む研修医奮闘物語Part2

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今月刊行されたばかりの幻冬舎文庫『泣くな研修医2』は書き下ろしの続編にあたります。アメちゃんは3年目に突入。腹腔鏡手術に携わるようになり、型破りの新人研修医凛子の先輩としてあらたな日常を迎えます。同期の川村先生がセットしてくれた合コンで知り合ったOLとの恋話の進展もあって、少し救われます。続編は終幕で、ようやく休暇を取れたアメちゃんが郷里へ戻ると急転回します。

3年目を迎えたアメちゃんは「泣くな」から現場から「逃げない」医者へと日々成長します。ポニーテールの佐藤先生が折節改まった態度で告げる一言は、アメちゃんの心に深く刻まれます。

「いい、雨野先生、外科医は一分を大切にするんじゃない。一秒を大切にするんだ。一秒でも手術が早く終わるよう、どんな医者よりも一番、時間を大切にする。だから、外科医ならどんな時でも時間を守るようにね」

本書は、これから医師を志す高校生や現役医学生、そして過酷な現場で働く研修医を息子や娘に持つ両親に特に読んで欲しいと思います。新型コロナウイルスの世界的蔓延で医療崩壊リスクが昂まるなか、最前線で奮闘する医師の姿を重ねながら読了しました。

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紙の本

紙の本信楽・伊賀

2017/05/14 14:08

信楽・伊賀焼を知る基本書

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写真がふんだんに使われた日本のやきものシリーズのなかの一冊。歴史紹介で現代に至るまでのやきものの変遷を知ることが出来るのが本書の基本的効用です。さらに製作工程が写真で詳しく紹介されているので、作品がどのように産み出されるのかを垣間見ることができます。個人的にはこの製作工程が本書の魅力だと思っています。体系的に陶器を俯瞰する上で格好の書ではないでしょうか。

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紙の本

括弧つきの<リベラル派>

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民進党が看板を投げ捨てて<希望の党>に合流するとは、さすが魑魅魍魎が棲むという永田町、ただ看板を掛け替えたにすぎないように思うのは自分だけでしょうか。朝日新聞あたりが<野合だ>と批判するかと思いきや今回は沈黙、むしろ論評は好意的ですらあります。自民党御用達の読売新聞の向こうを張って、朝日新聞はあくまで安倍叩きに徹する構えに見えます。早速、橋下徹前大阪市長が朝日のこうした論調に疑問を呈しています。確かに、橋下氏の言うとおり、メディアへの信頼が一層低下することは間違いないでしょう。

昨日今日、小池代表が民進党の議員バッジをつけた<リベラル派>は受け容れられないと、高飛車な発言を繰り返しています。例えば、こんな具合です。

<span class="deco" style="color:#00FFFF;">新党「希望の党」代表の小池百合子東京都知事は29日の記者会見で、希望の党からの出馬を望む民進党の立候補予定者の絞り込みについて、「リベラル派を『大量虐殺』するのか」と問われ、「(リベラル派が)排除されないということはない。排除する」と言い切った。その上で、小池氏は「安全保障、憲法観といった根幹部分で一致していることが、政党構成員としての必要最低限」と重ねて強調した。
</span>

保守派に対する<リベラル派>という対抗軸で使われているようですが、本来の「リベラル(自由主義)」とはずいぶんかけ離れた意味合いで語られています。護憲を旗印に掲げ自衛隊を憲法9条に明記することにやみくもに反対する勢力=<リベラル派>ということになっています。Webster'sには、Liberalismとはa political and social philosophy advocating individual freedomとあります。

括弧つき<リベラル派>に対するこうした違和感を紐解いた本があります。橘玲氏の『「リベラル」がうさんくさいのには理由がある』です。政治的立場がリベラルだと主張することは、本来ネガティブなことではありません。メディア報道によって変容してしまったリベラルという言葉が本来の語義を取り戻すことはあり得ないのでしょうか。そうだとすれば、メディアは、あくまで括弧つき<リベラル>として取り扱うべきでしょう。

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紙の本

紙の本日の名残り

2017/10/07 00:08

"The Remains of the Day"(『日の名残り』):祝ノーベル文学賞受賞

8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

昨夜、PCに向かっていたら日経電子版のヘッドラインに<カズオ・イシグロ ノーベル文学賞受賞>とポップが現れ、一瞬、手が止まりました。『日の名残り』を読んで以来、ひそかに愛読していた作家の受賞だったからです。普遍的な文学性と緻密な文体を評価した今年の選考は、とても納得感があります。英国のオッズではケニアの作家が有力視されていたようですが、英語圏の作者の方が日本人にとって触れる機会が多く、受賞を身近に感じることができます。短編の名手アリス・マンローが受賞したとき以来のお気に入り作家の受賞となりました。

映画化もされた”The Remains od the Day”(邦題『日の名残り』)で、一躍、カズオ・イシグロは世界的名声を獲得しました。三作目となるこの作品は英国で最も権威のあるブッカー賞を受賞しています。この作品を読んだとき静かな衝撃に襲われました。貴族邸に忠実に仕える老執事スティーヴンスの回想を綴ったもので、作者の最高傑作といえるのではないでしょうか。ノスタルジックな風景や人々の無垢な記憶を丹念にたどる作風が作品世界の魅力のひとつです。

結末シーンは夕暮れ時の桟橋です。主人公スティーヴンスが年輩男性に"The evening's the best part of the day"(夕方こそ一日でいちばんいい時間だ)と話しかけられるシーンが強く印象に残っています。父の死、女中頭ミス・ケントンへの想い、過去の同僚との友情、政治情勢に対する私見、それらすべてを押し殺して最後まで執事としての職務を全うしたスティーヴンス、老境を迎えた彼の姿は黄昏時の桟橋風景と重なり合います。抑制(の効いた人生)という言葉は彼のためにあるのかも知れません。静かに終幕を迎えるかに見えたスティーヴンスは、人生の残照を眺めながらも、ユーモアを交えた決意を胸に第二の人生に立ち向かいます。胸中をときおり去来するに違いない落胆や失意を、執事としての矜持が堰き止めるそんな生き様に、読者は深い感銘を覚えるのです。

カズオ・イシグロのノーベル賞受賞を機に、1989年に出版された原作を再読してみようと思います。自分も年を重ねて、『日の名残り』の主人公の思いにより共感できるような気がします。35歳のときにこの傑作を完成させてしまうカズオ・イシグロ(の才能)は只者ではなかった。

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紙の本

紙の本ツバキ文具店

2017/05/26 10:24

本屋大賞を逃すも素敵な小説

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2017年の本屋大賞は恩田陸の『蜜蜂と遠雷』でした。打倒直木賞を謳い文句に2004年にスタートした本屋大賞も今年で14回目。同作品が直木賞とW受賞したため、知られていない本を発掘するという本来の意義が失われたと揶揄する声も聞こえています。直木賞へのアンチテーゼとしての役割に徹して欲しいと自分も思います。

密かに本年度の本屋大賞受賞を期待していたのが昨年4月に上梓された小川糸さんの『ツバキ文具店』でした。結果は惜しくも4位でした。『ツバキ文具店』はぶらっと本屋に立ち寄ったときに買い求めた小説です。選書の決め手はずばり装丁の美しさでした。昭和レトロ風のタイトル書体とペン書きの表紙イラストだけでも衝動買いに値すると思いました。さらに頁をパラパラめくると、薄墨で書かれた手紙や万年筆書きの原稿用紙が目に飛び込んできます。風変わりな構成に興味をそそられました。

手に取って読み始めると、鳩子さん(通称ポッポちゃん)という主人公の女性が先代の跡目を継いで店番をする傍ら、代書屋を営むという筋書きでした。舞台は鎌倉、目次の裏には素敵なイラストマップまで添えてあります。妻に先立たれたカフェの店主とその幼娘、隣家のバーバラ婦人、正体不明の男爵というあだ名の先代の茶飲み友達といった脇役たちが新米代書屋ポッポちゃんを優しく見守ります。

メールやLINEの普及で手紙を書く機会は減る一方です。お世話になった人に贈り物をするとき、一筆箋を添えるくらいが関の山です。そんなご時世に、ポッポちゃんのもとには次々と代書の依頼が舞い込みます。お悔やみの手紙、離婚を伝える手紙、借金お断りの手紙などなど、ポッポちゃんは、その都度、居住まいを正して沈思熟考、文机に向かいます。手にする筆記具や用箋も手紙の内容にふさわしいものを選んで、投函まで依頼人の気持ちに寄り添って工夫を重ねます。このあたりが文房具好きには堪らない描写です。誰にも何度か訪れる人生の転機にこんな手紙を認めることが出来たなら、送り手も届いた手紙を受け取った人も心が豊かになること請け合いです。

NHKがドラマ化(全8回)したので毎週楽しみに視聴させて貰っています。配役といい古都鎌倉の風情といい、ドラマの方も出色の出来栄えです。

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紙の本

紙の本季題別中村草田男全句

2017/05/26 10:45

季題別中村草田男全句を読む

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長谷川櫂の『俳句の宇宙』(花神社)以来でしょうか、久しぶりに俳諧に関する書籍を購入しました。大型書店に出向かないかぎり、句集や歌集なんて手に入りません。中村草田男の全句集が刊行されたことを知り、早速買い求めました。

昭和の俳人で誰が好きかと問われれば、真っ先に中村草田男の名を挙げるでしょう。きっかけは彼の代表作のひとつ、

<萬緑の中や吾子の歯生え初むる>

に触れたときに遡ります。これほど鮮烈に生命の息吹を詠んだ句を他に知りません。萌え出ずる新緑と透き通るような我が子の生え初めし乳歯との色彩のコントラストも見事です。初めてこの句を玩味したとき、乳歯で一番最初に生える歯は何だろうとふと思ったものです(答えは下顎に生える「切歯」です)。この句によって王安石の「石榴詩」に登場した「萬緑(万緑)」という言葉が広く知られるようになり、新しい季語として定着したのだそうです。さきの長谷川櫂も<万緑やどの道をどう行かうとも>と詠んでいます。

中村草田男とは浅からぬ縁を感じています。毎年、初詣に訪れる深大寺境内には萬緑の句碑があり、中村草田男は我が家から徒歩圏にある成蹊大学で定年まで教鞭を執っていました。全11614句を所収した本書を手にして、成蹊学園にも句碑があることを知りました。学園創立100周年記念行事の一環で2011年11月に同園西側の美しいケヤキ並木沿いに建立されたものです。

<空は太初の青さ妻より林檎受く>

という句が刻まれています。

終戦後の食料の乏しい時期、学校の寮に家族と共に身を寄せていた頃に詠まれたそうです。物資の乏しい時代にありながら、宙を見上げれば太初から変わらぬ青空が拡がり、そっと妻が差し出した真紅のリンゴに作者は妻の愛情と共に生命の躍動を感じたのでしょう。戦後、作者が再出発を心に誓った瞬間に生まれた句ではないでしょうか。研ぎ澄まされた五感がなければ成立しない作品です。

俳句の大前提、季題について中村草田男を次のように述べています。

「日本人にとって、季題は、共通の符牒のようなものであって、それに接すれば誰でもいろいろな連想を鮮やかに豊かに心の中に繰り展べずにはいられないのです」

「俳句は季題というモノによってコトを表す日本独特の象徴詩です・・・」

季題2540余りを収めた本書をときどき紐解いて季節感を新たにしたいものです。数ある句作のなかからとりわけ心に響いた句を書き添えておきます。教え子が学徒出陣するに際して、詠まれた句だそうです。

<勇氣こそ血の塩なれや梅眞白>

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紙の本

初めて受験するITパスポート試験

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店頭で悩んだ末に購入したのでが本書です。実用書の基本は新しいこと。先ず、奥付で発行日を確認しましょう。本資格試験の基本テキストとしては最良の部類に入るのではないでしょうか。イラストや吹き出しを使った類似書とも比較しましたが、基本テキストはオーソドックスなスタイルが一番です。章立てやレイアウトも見やすく、基本事項の反復学習にうってつけです。

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