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  3. 白井道也さんのレビュー一覧

白井道也さんのレビュー一覧

投稿者:白井道也

192 件中 16 件~ 30 件を表示

紙の本

紙の本中国行きのスロウ・ボート 改版

2001/03/12 09:40

美しくはかなく恐ろしい

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 『中国行きのスロウ・ボート』が最初に出版されたのが1983年、前年に長編第3作『羊をめぐる冒険』が出版されたばかり。この頃の村上春樹の文章は、硬いというかソリッド(その辺の文章の変化は、一連の『村上朝日堂』シリーズを読めばよく分かる)。よく切れるカミソリのように、美しさとはかなさと恐ろしさを併せ持っている。それがもっとも出ているのが、この村上春樹にとっての初短編だと思っている。
 やはり表題作「中国行きのスロウ・ボート」がいい。人生で出会った3人の中国人にまつわるエピソード。締めの一文は、「友よ、/友よ、中国はあまりにも遠い。」遠いのは中国であり、それぞれの中国人との距離であり、結局は人間と人間の距離だ。

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紙の本

紙の本アメリカン・サイコ 上

2001/02/19 09:34

映画よりダンゼン面白い原作

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書はクリスチャン・ベールが主演で映画化されたが、映画はブランド品で身を固めるヤッピーが裏では残虐な女殺しをする、というストーリーにまとめられ、「ファイト・クラブ」の二番煎じの印象を与える。でもそれは、この小説の大切なところを見逃している。大切なのは、物質主義の人間がドス黒い内面を抱えているという“テーマ”ではなく、主人公がファッションやオーディオ機器のブランド名をダラダラと羅列するのと全く同じように、女殺しの残虐な手口をダラダラと羅列するという“文体”にある。
 この上巻ではレストランやファッションについての主人公の独白がメインとなり、かれの残虐性を示す記述はとても微妙な形でしか現れない。フトした瞬間に洋服についた血に気付いたり、あるいは浮浪者をおちょくったりと、読者にジワリジワリと期待を持たせながら下巻に続く。

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紙の本

紙の本日出る国の工場

2001/02/19 09:26

変な工場ばっかり

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 春樹さんと水丸さんのコンビによる工場見学記。その工場も、人体標本を作るところとか、結婚式場とか、コム・デ・ギャルソンとか、小岩井農場とか、アデランスとか、変なところばっかり。それのチョイスがまず面白いのだけれど、冷めた視線ながらも変なものに好奇心を示す春樹さんの文章が面白い。
 内容でいうと、コム・デ・ギャルソンがまず面白かった。あんなハイ・ファッションが東京の下町でしこしこと作られているというそのギャップもそうだし、作っている人々のほのぼのとした空気も良く出ている。
 もうひとつはアデランス。「ねじまき鳥クロニクル」にはカツラ会社の話が出てくるが、たぶん春樹さんはこの工場見学で強い印象を持ったのかもしれない。辺鄙な土地で女性たちがズラリと並び、一人ひとりが植毛している光景は、やっぱり奇妙だと思う。

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紙の本

紙の本プロフェッショナル

2000/12/04 10:11

プロにしか知り得ないシブい世界

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 2000年のプロ野球ペナントレース。読売ジャアンツがセ・リーグ優勝を果たした時に、「企業努力以外のなにものでもない」と言い切った落合に評論家としての“正しさ”を見た。
 そんな落合が、現役生活中に出会った数々の“プロフェッショナル”たちについて綴ったのが本書である。その範囲は幅広い。一流のピッチャー、バッターはもちろん、監督、審判員、外国人助っ人、スカウト担当などなど。そこにあるのは、技術的にも心理的にも本当のプロフェッショナルしか知り得ないディープでハイレベルな世界。といってディープなファンしか楽しめないかというとそうではない。野球の奥深さがますます理解出来る、興味深い本だ。

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紙の本

紙の本私の個人主義

2002/06/20 20:52

そんな凄いかねぇ

5人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

確かに、漱石の語り口は素晴らしい。さすがは落語通である。謙遜する、洒落をかます、そしてしれっと本題に入る。
で、その本題。たいしたことを語っているとは、僕には思われない。有名な「私の個人主義」では、自由には責任がつきものであり他人の自由をも尊重すべきであるということ、「現代日本の開花」では、維新後の西洋化は内的要因ではなく外的要因から進んでおりそれはイビツであるということ、だいたいそんなことを言っているのだけど、それって21世紀に生きる人間が読んで「嗚呼! 確かにその通りだ!」って感嘆するものでもないでしょう。
ということでこの本は、内容は置いといて漱石の語りを味わうものではないか。漱石の小説が好きであれば、小説の原型とも言うべき彼の思想の一端がかいま見えて興味深いと思うが。

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紙の本

紙の本世界の十大小説 上

2001/12/12 12:40

とりあえず基の小説を読んでから

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ちなみに十大小説とは、フォールディング「トム・ジョウンズ」、オースティン「高慢と偏見」、スタンダール「赤と黒」、バルザック「ゴリオ爺さん」、チャールズ・ディケンズ「デイヴィッド・コパーフィールド」、フローベール「ボヴァリー夫人」、メルヴィル「白鯨」、ブロンテ「嵐が丘」、ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」、トルストイ「戦争と平和」。
 各著者の生い立ちと、その作品についての評論が載っている。それぞれの小説がどのように素晴らしいか、という点についての記述が少ないので、それぞれの小説を読んでからこの本を読んだほうがいいのではないかと思った。

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紙の本

紙の本レキシントンの幽霊

2001/01/22 10:59

村上春樹のさまざまな試み

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 7つの短編が収録されている。
 表題作である『レキシントンの幽霊』は、村上がアメリカに住んでいた時に実際に経験したことを綴ったもの。だからといってただのエッセイではなく、確かな物語として綴られている。ストーリーテリング技術の妙と言えよう。内容は、ボストン郊外・レキシントンにある友人の家の留守番をすることになった「僕」が、幽霊たちのパーティーの物音を聞いたというもの。音を聞いただけでその実態は明らかにならない。
 『緑色の獣』の主人公は、主婦である「私」。「私」の心を読むことが出来る緑色の獣に対して、「私」はあらんかぎりの残酷な想像をしてその獣をいたぶる。それはやはり、“女ならではの冷酷さ”と言えるのだろうか。いずれにしろ、村上春樹の小説で主人公が女性なのはめずらしい。
 『沈黙』は、青木という同級生に傷つけられた大沢という男が、ある形でそれを克服する物語。これも記述は3人称ではなく、大沢が「僕」に対して過去を回想するという形をとっている。大沢が語る、「でも僕が本当に恐いと思うのは、青木のような人間の言い分を無批判に受け入れて、そのまま信じてしまう連中です。」という台詞は、村上春樹には珍しい、社会的な発言と受け止めることも出来よう。
 『氷男』の主人公も、女性である「私」。氷男と結婚した「私」が、氷の世界に閉じ込められる一種のファンタジー。これも、さまざまな解釈が可能だろう。
 『トニー滝谷』は、滝谷トニーという男と、彼の父と、彼の妻に関する物語。記述は3人称。孤独な男が孤独ではなくなったが、結局孤独になったという話。
 『七番目の男』は、七番目に話すことになっていた男が、高波に飲み込まれたKという友人にまつわる過去のトラウマを語るというもの。
 『めくらやなぎと、眠る女』は、『蛍・納屋を焼く・その他の短編』に収められていた短編『めくらやなぎと眠る女』を短くしたもの。
 全体的には、奇妙な話をそのまま提示するという形をとっている。芥川龍之介的な短編と言えようか。

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紙の本

紙の本ケン・ローチ

2000/11/27 10:46

ファンなら興味深く読める

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 スペイン内戦を描いた『大地と自由』や、ハヤブサと少年の絆を描いた『ケス』などで知られるイギリスの映画監督ケン・ローチと言えば、英国労働者階級の人々を温かい視線で見守り、かつ、ただのアジテーションではない上質のエンタテインメント作品を作り出す良識派の監督。本書では、編者グレアム・フラーのインタビューにより、彼の生い立ちから目下の最新作『マイ・ネーム・イズ・ジョー』までの作品についてが詳細に語られている。もちろん、すべてが興味深いというわけではないけれど、彼の映画を知る上で注目すべき箇所は多々ある。
 非政治的だった父親に反発心を持っていたこと、映画は共同制作から生まれるものであり、作家主義的映画には与しないということ、ヌーベル・バーグよりはネオリアリスモに多くの影響を受けたこと、批評家は映画の形式に拘るだけで内容には注目していないということ、などなど。社会的問題を多くの人の目に触れさせようとして創作をしている彼の真摯な姿勢が、全編から伝わって来る。
 全篇がインタビューという構成なので、彼の作品をまったく知らない人向けではない。彼の作品に関心がある人間ならば、非常に興味深く読めると思う。
 装丁は上品だが、各章の冒頭に置かれる長めの導入文の太明朝体が読みにくい。作品のスチール写真も多く掲載されているが、不鮮明なのが残念。ビデオリリースされてる作品一覧と、テレビ時代からのフィルモグラフィ、そして作品題名検索が附されている。

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紙の本夜間飛行 改版

2002/07/16 11:04

堀口大学の訳について

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「夜間飛行」の内容やその面白さについては僕が述べる必要もないと思うので、ここでは堀口大学の訳について書く。彼の訳文は、原文に引っ張られすぎている。例えば、

やがて彼らは、雷雨の、または平静な空から、この大都会の方へと静かに降りて来ることだろう、山から降りて来る風変わりな農夫たちのような格好で。

というように。参考までに、別の箇所の工藤庸一郎訳(みすず書房)と堀口訳を列挙する。アンドレ・ジッドの序文。

A:わたしは作者にたいして、わたしにとってかなりの心理学的重要性を有するつぎの逆説的真理を明らかにしてくれたことをとくに感謝している。それは、人間の幸福は自由のなかにではなく、義務の受諾のなかにあるということだ。この書物の登場人物のひとりひとりは、おのれがなすべきこと、その危険な任務に、情熱的かつ全面的に身を捧げ、それを遂行したあとにはじめて、幸福の安らぎを見出す。

B:僕は特に作者に対し、自分にとって極めて重大な心理学的重要性を持つ逆説的な真理、——すなわち人間の幸福は、自由の名かに存在するのではなく、義務の甘受の中に存在するのだという事実を、明らかにしてうれた点に感謝する者だ。この小説中の人物は、みながそれぞれ、その義務とする危険な役割に、全身的、献身的に熱中し、それを成就したうえでのみ、彼らは幸福な安息を持ち得るのだ。

容易に判断できると思うけど、Aが工藤訳、Bが堀口訳。せっかく良い物語を読むのなら、自分にあった訳文で読みたいものですよね。

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紙の本

指示表出と自己表出

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「文学の作品や、そのほかの言葉で表現された文章や音声による語りは、一口にいえば指示表出と自己表出で織り出された織物だといっていい。わたしはやっと今頃になって表現された言葉は指示表出と自己表出の織物だ、と簡単に言えるようになった」。これは文庫版まえがきにある一節だが、この切れ味鋭い文を読むだけでもこの本を読んだ価値はあったと思ってる。

 第1巻では、「言語の本質」「言語の属性」「韻律・選択・転換・喩」「表現転移論」「現代表出史論」「戦後表出史論」が語られる。内容は高度で理解は容易ではないが、読む価値があるということだけは感じ取れる。

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紙の本

塩野の人生訓

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

“歴史”というものにまるで興味のなかった僕でも非常に面白く読める、ということは、ローマ帝国の歴史が物語として面白いということもさることながら、その面白さを理知的に書ける塩野の文才が絶大だということだ。
バルザックは小説のなかでしばしば人生訓を語るが、塩野も負けていない。例えば、
「敗けっぷりに良いも悪いもない。敗北は敗北にすぎない。ただ、敗北からどう起ち上がるかが重要なのだ」
といったようなもの。こういった含蓄あるひとことが興味深い。

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紙の本

評判どおり

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

“バルザック年の最高傑作”ということは聞いていたが、読んだら納得。
登場人物の多さもちょうどいい。彼らの関係網が面白い。冗長な話が少なくて、話がどんどん深まっていく。文句なしに面白い。

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紙の本

バルザックの面白さを痛感

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毎日新聞の書評にも載っていたけど、これは面白い本。三話からなるオムニバスで、それぞれの登場人物が密接に絡み合い、パワフルな登場人物がいて、ストーリーがどんどん展開していく。バルザックおなじみの無駄話も面白い。

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紙の本

紙の本プルーストによる人生改善法

2002/04/16 13:27

胡散臭いタイトルだが中身は秀逸

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胡散臭いタイトルの本だけど、中身は秀逸。あのじれったい「失われた時を求めて」をいかにして読むか(あるいはなぜプルーストはあのようなじれったい文章を書いたのか)ということが、プルースト自身の姿をあわせて書かれている。

長々とした喩えやディテールへの執着などを楽しめるようになれば「失われた時」は克服できるし、日々生きていても“幸せ”を感じることが多くなる。少なくとも僕はそうだ。

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紙の本

紙の本野球人

2002/04/02 10:17

4番とは、タイトルとは、等々

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 第1部は日ハム時代の回想。第2部は落合の記憶に残る10勝負の回想。ここでは、長年4番を張ってきた者にしか分からない「4番」の意味、“アーティスト”と“スラッガー”の違い、3度三冠王を獲った者ならではのタイトルの取り方・タイトルの意味などなど、含蓄のある話題が読める。
 落合は別に「プロフェッショナル」という書を著しているけど、落合こそはプロフェッショナルであり、そのプロでしか分からない“極意”が読めるというこで、僕は落合の文章が好きだ。

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