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  3. 本田亮司さんのレビュー一覧

本田亮司さんのレビュー一覧

投稿者:本田亮司

23 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本彼方より

2001/11/23 23:28

上質の幻想

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 篠田真由美は本格ミステリの書き手としても良く知られているが、女史の才能は幻想文学においも驚くべき成果をあげている。本作では歴史という幻想の宝庫を舞台に神をめぐる芝居が繰り広げられる。
 惜しむらくは第2章終盤において描かれる救済がいささか類型的に過ぎ、過剰なエンターテイメントとなっている点だ。出版にあたってかなりの加筆修正が加えられたそうだが、著者20代の時に書かれた原型にこそ高らかなる飛翔が見られたのではないか、と夢想させられる。
 しかしながら、本作で達成される幻想は期待に違わず上質である。読了後、胸に去来するのは幻想と明かされた第2章『フレンチェスコの手記』ではなく、確かな現実である主人公達の黄金色の少年時代である。読了後に思い描くその時代は何と甘美で遠いことか。何と儚く朧に在ることか。わずか20ページ足らず、全体の15分の1に過ぎない一節が結末を迎えた後に放つこの輝きは、女史の幻視者としての確かな証に他ならない。
 幻想と現実の鮮やかな、黄昏色の反転がここにある。

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紙の本

紙の本世紀末サーカス

2001/12/28 00:38

シリーズ中、一二を争うアンソロジー

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 サーカスという言葉には妖かしや幻想が詰め込まれている。異形のものを幻視する作家たちによるシリーズ中でも、本作は「グランドホテル」に次いでレベルが高い。その中でも秀逸なのが『青い奈落』と『朋類』である。
 西澤保彦「青い奈落」
 何よりイメージが素晴らしい。言葉どおり上下逆さまの世界。眼下に広がる空はより青いだろうと思わせる。その世界で幻視される逆転の風景と時間。巧みな構成である。再度逆転の訪れた世界で見上げる夜空はさらに暗く美しいに違いない。
 北原尚彦「朋類」
 その眼差しの何たる夢幻なることか。井上雅彦の前書きに何ら付け加えることはないが、著者が幻視する贈り物にはロンドンの薄闇こそがふさわしい。集中随一の傑作である。

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紙の本

紙の本ステーシー 少女ゾンビ再殺談

2001/12/28 00:19

昏き妄想の…

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 傑作短編集「くるぐる使い」で見せた僅かな理性は本作では感じられない。ここにあるのは、狂人の祈りにも似た何かだ。「くるぐる使い」では曲がりなりにも結末への完結性を目指していたように思うが、本作では完成度には全くこだわっていない。しかし、それが瑕となっていない。むしろ昏き妄想の追求こそが、本作の何よりの魅力となっている。

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紙の本

紙の本名探偵の呪縛

2001/11/27 02:00

ファンには読み逃せない実験作

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 「名探偵の掟」において、本格ミステリの高次元でのパロディをやってのけた作者だが、その続編たる本作においては「掟」にあった、おかしみが感じられない。もちろん、自虐的なブラックジョークとして書かれた前作とそれを主たる目的としていない本作では自ずとその愉しみ方も違ってくるだろう。だが、本作にはどこにも愉しみを見出すことができないのだ。確かに本格への愛情は強く感じられるものの、それを作品として表現できているとは思えなかった。
 元来パロディとしての側面を持つ本格ミステリをパロディにすれば、畢竟その作品はメタミステリに行き着かざるを得ない。ではメタミステリとしての本作はというと実験精神に溢れた秀作といえるかもしれない。殊に本格ミステリの登場人物として造形されながら、事件の起こらない世界の住人となってしまうという設定には唸らされる。ただ、その登場人物たちの悲哀が描ききれていないところが本作の最大の瑕ともなっている。
 本作と前後して「どちらかが彼女を殺した」「私が彼を殺した」のこれ以上ない本格ミステリを発表した作者だが、いずれ本作に描かれるところの古色蒼然とした本格探偵小説を物してもらいたいものである。

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紙の本

紙の本名探偵は密航中

2001/11/27 01:54

軽めのオムニバス・ミステリー

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 常に良質の作品を提供しつづけている作者だが、本作は息抜きといった感があり、さほどの面白みは覚えなかった。登場人物が多く、入り混じっており、なかなかキャラクターとしての魅力を引き出すところまでは達していない。各短編の解決も急いでいるように思われ、出来の悪いホームズ譚といった印象を免れ得ない。そもそも、若竹七海お得意の連作長編としても付け足しに過ぎず、興味を感じさせないのだから意外性も何もあったものではない。
 唯一、『船上の悪女』は新味の叙述トリックに挑戦している点で評価できる。しかし、全く効果を挙げておらず、作者が自覚的なのか無自覚なのかも定かではないのが残念だ。子どもを書かせたら本当に巧いのは確かだが。
 本作はオムニバスミステリーと銘打たれているが、その効果は定かではない。オムニバスに徹しきれておらず、また連作長編としても中途半端になってしまっており、効果を相殺してしまっていると思う。設定自体は興味深いものがあり一本の長編として書かれていればと考えると惜しい作品である。

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紙の本

紙の本冥府神の産声

2001/11/23 00:06

鮎川哲也賞作家の受賞第一作

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 北森鴻の筆力には感心させられる。受賞後一作にしてこれだけ、読者をあきさせない文章を身につけている作家はそういないだろう。ともすれば、骨董無形な作品になりかねない驚愕の真相を危ういながらも、現実内に留まらせることができたのはひとえに北森の筆力ゆえだろう。ただし、本格としては弱く彼の才能が十分に発揮されているとは言いがたい。あまり印象に残らない作品ではあるが、北森の才能の一端を窺い知ることはできる。

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紙の本

紙の本タンブーラの人形つかい

2001/12/28 00:51

ファンなら読み逃すべきではない作品

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 パーミリオンの猫シリーズの第2弾。このシリーズはミステリ的な要素がふんだんに盛り込まれている。本書はその中でも、特にその傾向が強い作品らしい。確かに操りをテーマにミステリ的な構成をとっているが、本作をミステリとして読むには無理がある。伏線がほとんどないし、意外性もない。ただ、それはこの作品の欠点でもなんでもない。
 そもそも本作はミステリをして書かれたのではないし、竹本健治という作家を特定のジャンルの枠にはめることは不毛な作業である。文句なしに面白いし、プロットも素晴らしい。エンターテイメントとして完成された傑作である。

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紙の本

紙の本鬼流殺生祭

2001/11/30 00:21

真っ向から本格に挑んだ力作

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 デビュー以来、貫井徳郎の卓越した構成力と筆力には目を見張るものがあった。その貫井が真っ向から本格に挑んできたのが本作である。旧家の武家屋敷で起こる連続殺人、雪に残された足跡、交錯する血縁関係と横溝正史的なコードを多用している。
 その分、或いはその割にトリックや構成に目新しいところはない。だが、注目すべきはその旧家という閉ざされた世界に、血の結束以上の理由付けをし得た点である。事件全体を貫くその理由は、明詞という時代背景とあいまって絶大な効果をあげている。
 そしてさらに注目すべきは、量子力学の不確定性理論を功名かつ完全に取り入れている点だ。名探偵ものの本格が持つジレンマを意識しつつ、それを確かに乗り越えている。そのスタンスと巧さは京極に匹敵する。
 著者の本格に対する想いが伝わってくる力作だ。

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紙の本

紙の本暗闇の教室

2001/11/23 00:04

恐怖とトリックの二重奏

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 叙述トリックの名手として評価の高い折原一の傑作「沈黙の教室」に続く教室シリーズ第2弾。叙述トリックはそれが仕掛けられていることを読者に悟られないことが、意外性を演出する前提となる。しかし、折原一という作家はそれを悟られてもなお読者を欺くことのできる、稀有の才能の持ち主である。
 しかし、本書ではその才能が十分に発揮されているとは言いがたい。細かいところでの叙述トリックはさすがであるが、全篇に渡っての仕掛けがなかったのは、拍子抜けしてしまうし、真犯人もヒントがあからさま過ぎて容易に推測できてしまう。だが、前半部分での百物語において、現実と幻想の境を曖昧にしていく手法は高く評価できる。恐怖の演出という点では、素晴らしい効果を挙げている。

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紙の本

紙の本不変の神の事件

2001/11/23 00:04

黄金期の佳作

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 1936年に出版された本書は黄金期の一翼を担っていたらしいR・キングの手腕が遺憾なく発揮されている。古びていることは否めないが、その古び方が黄金期特有の心地よい雰囲気に包まれており、マイナス材料ではなくむしろよい効果をもたらしている。
 意外性はさほどあるわけではないが、伏線の張り方が絶妙で思わずニヤリとさせられる。また、計算し尽くされたプロットも賞賛に値するだろう。黄金期の懐の広さを再認識させられる佳作である。

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紙の本

紙の本沙羅は和子の名を呼ぶ

2001/11/23 00:01

ほのぼのとした雰囲気が愉しい好短編集

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 初期の短編二編はさすがに文章がぎこちないが年を経ていくごとに上手くなっている。それにしても加納朋子の描く人物は大人と子どもの区別がつきにくい。しかしそれが決してマイナスポイントになっていないのは、女史の怜悧かつ暖かな眼差しゆえだろう。『フリージングサマー』以降の作品はどれも上質のファンタジックミステリに仕上がっているが、
 殊に『オレンジの半分』は傑作である。トリックや、叙述はどちらかといえば小粒で、それのみを見ればたいした作品ではない。しかし、それらが加納朋子の持ち味であるほのぼのとした雰囲気と高次元で融合している本編は、そのタイトルの秀逸さとも相まって美しいと形容しうる作品となっている。

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紙の本

紙の本屋上物語

2001/11/23 00:00

屋上に出現した楽園

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 北森鴻の創り出すキャラクターは常に魅力的だ。本作もその例に漏れず、軽くはあるがどこか物悲しい愛すべき探偵たちが魅力を放っている。
 本作は本格と呼べるほどの骨格は備えていないが、どの作品も質の高いユーモアミステリに仕上がっている。語り手の設定が大した効果を挙げていないのは残念だが、屋上という楽園を描き上げた手腕は買いたい。読み終えるのがほんの少し惜しく思えるような佳作である。

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紙の本

紙の本殺意の爪

2001/11/21 23:58

豊かな眼差し

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 小池真理子の著作はミステリ、幻想小説、ホラーと多岐にわたるが、どれを書かせても超一流の書き手である。本作もサスペンス小説として第一級のレベルを誇っている。付け加えることのない解説を寄せている宮部みゆきが指摘するように、人間を見る眼差しと流麗な語り口が女史の作品を外れのない高い質に保っているのだろう。
 本作にはさして目新しいアイディアが使われているわけではない。むしろ、サスペンス小説としてオーソドックスな構成・展開だといえるだろう。だが、それでも凡百の作家よりも何倍も面白い。細やかな、それでいてさり気ない描写はごく自然に読者の頭に流れ込み、澱むことなくページを捲らせる。自由に描き出される登場人物たちは誰もが好ましく、誰もが怪しい。その読者を不安に陥らせる手腕は高く評価できる。
 それにしても、女史の作品に登場する女性たちは格好いい。決して単純なステレオタイプな格好よさではなく、複雑な、時に矛盾を孕みながらも、一本筋が通った不思議な潔さがこの上ない魅力を醸し出している。それもまた、女史の夢幻たる眼差し故だろうか。磐石の信頼を寄せ得る数少ない作家の一人である。

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紙の本

紙の本わだつみの森

2003/01/07 18:17

過剰、そのギラギラとした情熱

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 前半部を読んでる間中、不安だった。
 まず第一に作者に対する不安である。それはある種自費出版とも言える作品であり、また未知の作家であることに起因している。そのあまりにペダンティックな作風に耐え得るだけの物語があるのか、もしや単なる夜郎自大な習作を読まされているのではないかという不安。
 正直に言うと濱岡稔は未知の作家というわけではない。作者自身のホームページで彼の文章に触れていたからだ。そのページで氏の書評を読んだとき、少なからず驚かされた。確かな分析力とその姿勢に。あくまで作者の意図を汲み取ろうとするその姿勢と卓越した分析が、危ういながらも相見えたその書評はネット書評の一つの理想型であろう。
 だが書評と創作は違う。本作のそこかしこに彼の書評でみた、対象に対する距離の近さが感じられた。書評ならば文章以前に対象との距離が保証されているが、創作となるとそれが極端に縮んでしまっているのではないか。
 その不安はほとんど杞憂だったといって良い。もちろん作品に対して絶妙の距離をとっているとは言いがたい。あまりに読者を選ぶペダントリの数々は楽屋落ちとも受け取られかねないだろう。だが少なくともそれを理解しなくとも決定的なマイナス要素ではないし、ニヤリとさせられる場面も少なくなかった。

 第二に作中から喚起される不安があった。複数の視点を用いながらその実、神の視点にたっているように思える、ある種の不安定さ。さらにあくまで本格ミステリを期待させながらどうしても本作が本格ミステリ的結末を迎えるとは思えなかった点である。
 本作を本格と受け取る読者は少なくないだろう。おそらくその読み方を裏切ることはないと思う。しかし結論から言うと私にとって本作は本格ミステリではない。
 矛盾するようだが本作を読んでいてまともな本格ミステリを期待する読者は少ないのではないだろうか。本格ミステリは形式的要素として先行作品を内在せざるを得ないが、本作ではそれがあまりにも過剰である。数々の引用、文学談義、美術談義、などなど。端的に顕れているのが作中でも言及される「黒死館殺人事件」であろう。もし言及されていなかったとしても本作から「黒死館」を連想することは難しくない(残念ながら作者があとがきで影響を受けたとしている内田善美「星の時計のLiddell」については全く知らない)。
 ここでは論理は紡がれない。あるのは符丁と符号。もちろん、「黒死館」ほどではないが、ここ滄溟館もまた意味の過剰な世界である。その世界ではや、といった数字までもが何を意味しているか断定される。「黒死館」同様、探偵役の解釈だけがこの物語を創造している。ここで純然たる本格ミステリである綾辻行人「霧越邸殺人事件」にも触れておきたい所だがネタバレの恐れがあるため避けておこう。
 ともあれ第二の不安も解消された。これでもかと詰め込まれる本格ミステリのガジェット。だがそれに本格で用いられるところの“論理的”に割り切られた解決を期待しなくなった時点で自動的に。といっても真犯人やトリックには非常にフェアな伏線が張られており好感が持てる。それだけにやや分かりやすかった感があり意外性こそ少なかったものの、不満のない仕上がりといってよいだろう。

 世界は並列に存在する。濱岡稔は世界を構築しようとしている。あまりに恣意的な視点を用い、様々な世界を引用し、そして意味に溢れた世界を。“ここではないどこか”で並列する世界の一つを。
 意外性を武器に世界を現実的幻想にまで解体しようとした新本格最初期。濱岡稔の過剰さはそれに似たギラギラとした情熱を思い起こさせる。

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紙の本

紙の本密室・殺人

2001/12/28 00:11

純然たるミステリ

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 新本格とホラーの合体と謳われているそうだが、本作は純然たる本格ミステリに他ならない。確かに、ホラー的な要素はあるが、それは本格に加えられたエッセンスに過ぎない。
 本作に描かれる“密室・殺人”はよくできてはいるが、意外性を与えるほどには至っていない。しかし、それは瑕でもなんでもない。というのも、本作の主眼は密室におかれているわけではないからである。ある設定こそが、この作品のすべてだ。密室すらもその伏線に過ぎない。この前代未聞の設定を作品内で説明することなく、読者を驚愕に導いた手腕には驚嘆するほかない。本格ミステリ以外の何物でもない力作だ。

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