サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. 本田亮司さんのレビュー一覧

本田亮司さんのレビュー一覧

投稿者:本田亮司

23 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本わだつみの森

2003/01/07 18:17

過剰、そのギラギラとした情熱

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 前半部を読んでる間中、不安だった。
 まず第一に作者に対する不安である。それはある種自費出版とも言える作品であり、また未知の作家であることに起因している。そのあまりにペダンティックな作風に耐え得るだけの物語があるのか、もしや単なる夜郎自大な習作を読まされているのではないかという不安。
 正直に言うと濱岡稔は未知の作家というわけではない。作者自身のホームページで彼の文章に触れていたからだ。そのページで氏の書評を読んだとき、少なからず驚かされた。確かな分析力とその姿勢に。あくまで作者の意図を汲み取ろうとするその姿勢と卓越した分析が、危ういながらも相見えたその書評はネット書評の一つの理想型であろう。
 だが書評と創作は違う。本作のそこかしこに彼の書評でみた、対象に対する距離の近さが感じられた。書評ならば文章以前に対象との距離が保証されているが、創作となるとそれが極端に縮んでしまっているのではないか。
 その不安はほとんど杞憂だったといって良い。もちろん作品に対して絶妙の距離をとっているとは言いがたい。あまりに読者を選ぶペダントリの数々は楽屋落ちとも受け取られかねないだろう。だが少なくともそれを理解しなくとも決定的なマイナス要素ではないし、ニヤリとさせられる場面も少なくなかった。

 第二に作中から喚起される不安があった。複数の視点を用いながらその実、神の視点にたっているように思える、ある種の不安定さ。さらにあくまで本格ミステリを期待させながらどうしても本作が本格ミステリ的結末を迎えるとは思えなかった点である。
 本作を本格と受け取る読者は少なくないだろう。おそらくその読み方を裏切ることはないと思う。しかし結論から言うと私にとって本作は本格ミステリではない。
 矛盾するようだが本作を読んでいてまともな本格ミステリを期待する読者は少ないのではないだろうか。本格ミステリは形式的要素として先行作品を内在せざるを得ないが、本作ではそれがあまりにも過剰である。数々の引用、文学談義、美術談義、などなど。端的に顕れているのが作中でも言及される「黒死館殺人事件」であろう。もし言及されていなかったとしても本作から「黒死館」を連想することは難しくない(残念ながら作者があとがきで影響を受けたとしている内田善美「星の時計のLiddell」については全く知らない)。
 ここでは論理は紡がれない。あるのは符丁と符号。もちろん、「黒死館」ほどではないが、ここ滄溟館もまた意味の過剰な世界である。その世界ではや、といった数字までもが何を意味しているか断定される。「黒死館」同様、探偵役の解釈だけがこの物語を創造している。ここで純然たる本格ミステリである綾辻行人「霧越邸殺人事件」にも触れておきたい所だがネタバレの恐れがあるため避けておこう。
 ともあれ第二の不安も解消された。これでもかと詰め込まれる本格ミステリのガジェット。だがそれに本格で用いられるところの“論理的”に割り切られた解決を期待しなくなった時点で自動的に。といっても真犯人やトリックには非常にフェアな伏線が張られており好感が持てる。それだけにやや分かりやすかった感があり意外性こそ少なかったものの、不満のない仕上がりといってよいだろう。

 世界は並列に存在する。濱岡稔は世界を構築しようとしている。あまりに恣意的な視点を用い、様々な世界を引用し、そして意味に溢れた世界を。“ここではないどこか”で並列する世界の一つを。
 意外性を武器に世界を現実的幻想にまで解体しようとした新本格最初期。濱岡稔の過剰さはそれに似たギラギラとした情熱を思い起こさせる。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本タンブーラの人形つかい

2001/12/28 00:51

ファンなら読み逃すべきではない作品

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 パーミリオンの猫シリーズの第2弾。このシリーズはミステリ的な要素がふんだんに盛り込まれている。本書はその中でも、特にその傾向が強い作品らしい。確かに操りをテーマにミステリ的な構成をとっているが、本作をミステリとして読むには無理がある。伏線がほとんどないし、意外性もない。ただ、それはこの作品の欠点でもなんでもない。
 そもそも本作はミステリをして書かれたのではないし、竹本健治という作家を特定のジャンルの枠にはめることは不毛な作業である。文句なしに面白いし、プロットも素晴らしい。エンターテイメントとして完成された傑作である。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本世紀末サーカス

2001/12/28 00:38

シリーズ中、一二を争うアンソロジー

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 サーカスという言葉には妖かしや幻想が詰め込まれている。異形のものを幻視する作家たちによるシリーズ中でも、本作は「グランドホテル」に次いでレベルが高い。その中でも秀逸なのが『青い奈落』と『朋類』である。
 西澤保彦「青い奈落」
 何よりイメージが素晴らしい。言葉どおり上下逆さまの世界。眼下に広がる空はより青いだろうと思わせる。その世界で幻視される逆転の風景と時間。巧みな構成である。再度逆転の訪れた世界で見上げる夜空はさらに暗く美しいに違いない。
 北原尚彦「朋類」
 その眼差しの何たる夢幻なることか。井上雅彦の前書きに何ら付け加えることはないが、著者が幻視する贈り物にはロンドンの薄闇こそがふさわしい。集中随一の傑作である。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本エロス

2001/12/28 00:31

意外性の作家

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 アイディア自体は単純なものであるが、処理の仕方は巧妙で絶大な効果を挙げている。小松左京は解説に措いて、執拗なまでに描かれる「歴史としての“生活”ディテイル」を再構成することが本作の主眼であると指摘している。そういう読み方は可能であるし、間違ってもいないのであろうが、それでも私はそれを意外性の演出のための戦略と捉えたい。構成・ディテイル・人物造形・献辞に至るまでもが意外性に奉仕しているという読みかたは、決して突飛なものではないはずだ。焦点をずらすことで意外性を演出するという手法が、これほど鮮やかに着地を成功させている作品を他に思い出すのは困難である。
 思えば広瀬正という才能は、意外性に拘り続けた作家ではなかっただろうか。都会ッ子の著者が選択した「凝る」ものとは「時間もの」でもオーディオでも歴史でもなく、意外性ではなかったか、そんな思いを抱かせる傑作だ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本ステーシー 少女ゾンビ再殺談

2001/12/28 00:19

昏き妄想の…

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 傑作短編集「くるぐる使い」で見せた僅かな理性は本作では感じられない。ここにあるのは、狂人の祈りにも似た何かだ。「くるぐる使い」では曲がりなりにも結末への完結性を目指していたように思うが、本作では完成度には全くこだわっていない。しかし、それが瑕となっていない。むしろ昏き妄想の追求こそが、本作の何よりの魅力となっている。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本密室・殺人

2001/12/28 00:11

純然たるミステリ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 新本格とホラーの合体と謳われているそうだが、本作は純然たる本格ミステリに他ならない。確かに、ホラー的な要素はあるが、それは本格に加えられたエッセンスに過ぎない。
 本作に描かれる“密室・殺人”はよくできてはいるが、意外性を与えるほどには至っていない。しかし、それは瑕でもなんでもない。というのも、本作の主眼は密室におかれているわけではないからである。ある設定こそが、この作品のすべてだ。密室すらもその伏線に過ぎない。この前代未聞の設定を作品内で説明することなく、読者を驚愕に導いた手腕には驚嘆するほかない。本格ミステリ以外の何物でもない力作だ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本妖奇切断譜

2001/11/30 00:22

新本格の香気漂う快作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 前作「鬼流殺生祭」に続く明詞シリーズの第2弾。本作で使われているトリックに久しぶりに驚いた。巧妙に盲点を突いたこのトリックは、意外性にのみ重点をおいていた新本格初期の作品群が持っていた、残夢の陶酔感のような魅力を放っている。惜しむらくは結末部分にたるまで推理らしい推理が展開されない点であり、すなわち読者に対して作者が隠しているであろう真犯人の影を描いていない点である。一匹でもそのようなレッドへリングが泳がされていれば、本作はさらにその輝きを増したであろう。
 また、本作とは無関係に見える事件が描かれている点も気にかかる。おそらく次作以降で密接にかかわってくるであろうから現時点での判断は難しいが、本作だけを見れば作品の完成度を落としているといわざるを得ない。
 とはいえ、デビュー作以来、意外性に拘りつづけてきた作者の面目躍如たる快作である。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本鬼流殺生祭

2001/11/30 00:21

真っ向から本格に挑んだ力作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 デビュー以来、貫井徳郎の卓越した構成力と筆力には目を見張るものがあった。その貫井が真っ向から本格に挑んできたのが本作である。旧家の武家屋敷で起こる連続殺人、雪に残された足跡、交錯する血縁関係と横溝正史的なコードを多用している。
 その分、或いはその割にトリックや構成に目新しいところはない。だが、注目すべきはその旧家という閉ざされた世界に、血の結束以上の理由付けをし得た点である。事件全体を貫くその理由は、明詞という時代背景とあいまって絶大な効果をあげている。
 そしてさらに注目すべきは、量子力学の不確定性理論を功名かつ完全に取り入れている点だ。名探偵ものの本格が持つジレンマを意識しつつ、それを確かに乗り越えている。そのスタンスと巧さは京極に匹敵する。
 著者の本格に対する想いが伝わってくる力作だ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本名探偵の呪縛

2001/11/27 02:00

ファンには読み逃せない実験作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「名探偵の掟」において、本格ミステリの高次元でのパロディをやってのけた作者だが、その続編たる本作においては「掟」にあった、おかしみが感じられない。もちろん、自虐的なブラックジョークとして書かれた前作とそれを主たる目的としていない本作では自ずとその愉しみ方も違ってくるだろう。だが、本作にはどこにも愉しみを見出すことができないのだ。確かに本格への愛情は強く感じられるものの、それを作品として表現できているとは思えなかった。
 元来パロディとしての側面を持つ本格ミステリをパロディにすれば、畢竟その作品はメタミステリに行き着かざるを得ない。ではメタミステリとしての本作はというと実験精神に溢れた秀作といえるかもしれない。殊に本格ミステリの登場人物として造形されながら、事件の起こらない世界の住人となってしまうという設定には唸らされる。ただ、その登場人物たちの悲哀が描ききれていないところが本作の最大の瑕ともなっている。
 本作と前後して「どちらかが彼女を殺した」「私が彼を殺した」のこれ以上ない本格ミステリを発表した作者だが、いずれ本作に描かれるところの古色蒼然とした本格探偵小説を物してもらいたいものである。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本名探偵は密航中

2001/11/27 01:54

軽めのオムニバス・ミステリー

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 常に良質の作品を提供しつづけている作者だが、本作は息抜きといった感があり、さほどの面白みは覚えなかった。登場人物が多く、入り混じっており、なかなかキャラクターとしての魅力を引き出すところまでは達していない。各短編の解決も急いでいるように思われ、出来の悪いホームズ譚といった印象を免れ得ない。そもそも、若竹七海お得意の連作長編としても付け足しに過ぎず、興味を感じさせないのだから意外性も何もあったものではない。
 唯一、『船上の悪女』は新味の叙述トリックに挑戦している点で評価できる。しかし、全く効果を挙げておらず、作者が自覚的なのか無自覚なのかも定かではないのが残念だ。子どもを書かせたら本当に巧いのは確かだが。
 本作はオムニバスミステリーと銘打たれているが、その効果は定かではない。オムニバスに徹しきれておらず、また連作長編としても中途半端になってしまっており、効果を相殺してしまっていると思う。設定自体は興味深いものがあり一本の長編として書かれていればと考えると惜しい作品である。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本13

2001/11/24 23:32

限りない才能を予感させる佳作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 濃密、この言葉こそが本書を形容するに相応しい。第一部において作者が達成した幻想性は、確かに限りない才能を予感させる。特に冒頭で見せる、片目だけが色盲の主人公と言うアイディアはすばらしい幻想に満ちている。
 未開のジャングルで暮らす部族は紛れもない現実でありながら、上質の幻想となりうる。むしろ、現実であるが故に、より純粋な幻想の高みを見せてくれるのかもしれない。無論、それは著者の類稀な筆力なしには成立しない。随所に見られる稚拙とも表現できる文章も、それに奉仕しているのではないかと思えるほど、確固たる世界を構築している。
 しかし、作中の映画「ブラッドビフォア」と相似形を描くように、第2部は商業ベースに乗せるためか、ありきたりな結末に収束していく。作者が自覚的に書いていることは明らかだが、読者に訴えかけるだけの場面は第二部では描ききれていない。それが惜しまれる作品である。しかし、第一部の高みは確かな物語として読者に届いたであろう。今後、必ず化けるであろう新人の登場である。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本金のゆりかご

2001/11/24 23:29

意外性、説得力ともに十分の力作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 北川歩実がついにその本領を発揮した。特に構成力という面においての成長ぶりには目を見張るものがある。本作を本格ミステリとは言いがたいが、意外性は十分である。二転三転する解決部分は、この構成力がなければ全く説得力を持たなかったであろう。また、北川作品に共通して言えることだが、最先端科学を取り込んだテーマは実に興味深い。
 惜しむらくは冒頭での強烈な謎の提示がないことと、伏線の少ないことだ。しかし、後者は天才を描くことへの代償なのかもしれない。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本少女達がいた街

2001/11/24 23:26

新本格の王道

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 柴田氏の作品は初めて読んだが、本当に感心させられた。並外れた才能をもっているのは疑いない。特に、前半部における人物造形、ストーリー展開、センスなどどれも素晴らしく、その青春小説としての完成度は、「異邦の騎士」などの青春本格推理の傑作群にも決して引けを取らない。
 また、後半部のパズラーとしての完成度もかなり高い。前半でしっかりと描かれた登場人物たちは、21年後の後半でも見事に浮き上がっている。緻密に計算されたどんでん返しの連続には驚きとともに感動を味わわせてくれる。
 唯一、動機が平凡だったのが残念だが、女史の筆力の前ではさほど気にならない。全体としての完成度は名作群に一歩届かないものの、新本格の王道をゆく力作であることは間違いない。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本ifの迷宮

2001/11/23 23:40

奇想溢れる本格ミステリ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 柄刀一は初めて読んだが、評判どおり奇想溢れる作家だ。文章も読み易く一気に読ますだけの筆力がある。まず、設定が素晴らしい。著者にしてある仕掛けの一点のみのためだけに十数年先の時代にしたという設定は見事な効果を挙げている。それも全く無理なく物語に取り込まれており、感動的なエピソードが語られる。
 謎解きという面では偶然が多すぎる感がないでもないが、著者の奇想の前では余り気にならない。めくるめく謎と整合性のある綺麗な解決、そして謎の生まれた必然性など並々ならぬ才気を感じさせる。
 非常に力強い快作である。柄刀は本作で本格の最前線に踊り出た。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

ひたすら心地よい物語

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 強烈である。スティーヴン・キングがデリーを異化せしめたかのごとくローザックは映画を異化することに完全に成功している。現実世界と虚構を巧妙に織り交ぜることによって生み出される幻惑感はひたすら心地良い。一直線の骨太なプロットだが偏執的なまでのペダントリが読者を迷宮へと誘う。終盤には壮大な陰謀小説へと変貌するがありきたりな勧善懲悪にはならず、結末で主人公が体験する風景は幻想に満ちこの物語にふさわしいといえるだろう。傑作である。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

23 件中 1 件~ 15 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。