かけだし読書レビュアーさんのレビュー一覧
投稿者:かけだし読書レビュアー
紙の本さくら日和
2002/01/09 18:53
マンネリと嫌味のとほほエッセイ
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相変わらずお茶漬けのようにさらさらと読み流せる軽妙洒脱なエッセイ。ただ旦那さんと離婚したらしくその旨が冒頭に書いてあったりもするのだけれど、「離婚して良かった。皆もおめでとうなんて言ってくれるし、わたしも幸せ」や「離婚をするための脱出に成功した」といった類の記述が幾度か書かれているところで引いてしまった。作家と違って相手は離婚しても自分の意見を出せない立場なのでフェアじゃない。その後も嫌味のようなものを感じて素直に笑えなかった。内容もマンネリ気味。
紙の本ぼくらは虚空に夜を視る
2002/03/30 08:57
中身もないし感動もない
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普段からこういった類の国産アニメを観ている人はさほど気にならないかもしれませんが、「危ないわね、VL型シンパサイザーの有効感応域ぎりぎりよ」といった、いかにもアニメ的な台詞などに違和感が。登場人物の造詣もいわゆるアニメ。全くリアリティが感じられないし魅力もない。一方で熾烈な戦い、一方で一見平和な仮想現実。そういった設定自体はありがちだけれど悪くはなかった。ただ細部の描写もなく、単にテンポよくぽんぽんと繰り出される目の前の状況を追っているだけで終わったような印象。エヴァンゲリオンの雰囲気と、マトリックス的な設定を足して仕上げたような物語。中身もないし感動もない。
紙の本だから読まずにいられない 5つのキーワードで読む児童文学の〈現在〉新セレクト53
2002/05/21 22:41
なんだかなぁ……
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ほんとうはこんな本が読みたかった! の続刊的存在。今回も何故か「児童文
学の現在」と書かれているのに国内の児童書は除外されています。というより
も後で知ったのだけれど第三弾の「暗くなるまで夢中で読んで」が日本編だそ
うですが、なんとなく小出しにされているような気が。今回は53冊ピックアッ
プしていますが、なんだかなぁ……。
ちなみに以前購入した他の出版社から発売されている「子供の本がおもしろい!
大人のための児童小説ガイドブック」は国内・国外の作品(既に絶版のモノ
もあるし、内容も古いけれど)全380作品をコメントつきで紹介して、しか
もはやみねかおるさんのインタビュー、何故か某有名人のインタビューも収録
するなどバラエティーに富んだ内容で値段は1200円。なのにこのシリーズ
は3冊合わせて5400円……。
前作を出してからそれほど間もないうちの第2弾。ならもっとじっくり取り組
んで本を出してほしかったぞ。紹介コメントなどは丁寧で良いんだけれど、こ
れ、内容うんぬんよりも出版の仕方がセコすぎです。
紙の本ほんとうはこんな本が読みたかった! 児童文学の〈現在〉セレクト57
2002/05/21 22:38
そりゃないよ
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出版不況がにわかに囁かれる中で、更に危機に瀕しているようなイメージが
強い児童文学関係。実際児童書を扱っていない書店なども結構あったりしま
す。といった訳で新刊が出ても気づくことすらなく消える本もありまして、
そういった時に頼りになるのが、こういったガイドブック。タイトルは「児
童文学の現在 セレクト57 ほんとうはこんな本が読みたかった!」
と、熱意を感じるタイトルに期待して本を開いてみると、何故か国内の作品
が一つもない。あれ? と思って序文を読んでみると「(紹介するのは)外
国の作品にかぎり、翻訳がきちんとしている本、なるべく手に入れやすい本
を選ぶことにした」とのこと。
って、それならタイトルに「海外編」と記載してほしかったぞ。あと、実際
にピックアップされている本の一覧を見てみると、クマのプーさん、メアリ
ーポピンズ、ムーミンなど、どう考えても新しい作品が少ない。タイトルが
「児童文学の現在」なのに紹介している本が古いとは何事?
それとこの本が原書房から出版されている為か、岩波の「ホビットの冒険」で
はなく、原書房版「ホビット」を勧めているけれど、指輪物語と合わせて読ん
だ時に固有名詞が異なること、登場人物の性格が違うので違和感があるかもし
れないことを少なくとも記載しておくべきだったのでは? それって逆に信用
なくすと思うんだけどな。
2002/03/22 08:17
新訳・ホビットの冒険
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これは岩波書店から出版されている「ホビットの冒険」と内容は同じだけれど、注釈付きの翻訳者が異なる新訳版。ただ新訳といっても誤訳があったり、肝心の物語を締め括る最後の部分で余韻をそぐような解釈をしていたりと、正直、あまりお勧めできません。また指輪物語とあわせて読むのだったら、同じ瀬田貞二氏が訳した岩波書店版を読んだ方がイメージも統一され、違和感もないと思います。
紙の本シキュロスの剣
2002/04/28 16:21
子供の今を描いた作品
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シキュロスの剣、といったファンタジーを思わせるようなタイトルだが、これは架空の物語に登場する剣の名前で、物語の方は今ドキの子供をリアルなタッチで描いたもの。
これが何というかストレスが溜まるような内容だった。特に主人公の少年周一の母親が超・過保護タイプで、読んでいるこっちまでイライラしてくる。塾の帰りに車で迎えに行くのだが、時間に遅れただけで「心配したじゃないの。何やってたの?」と問い詰めるようなタイプ。コンビニやゲームセンターなどの危険な場所には行かないように諭し、コンビニで売られている食品などは体に悪いから、と食べないようにと念を押す。徹底的に子供の自主性を排除して、肝心の子の意見には耳を貸そうとしない大人。
そういった母親の元でなかなか逆らえなかった少年が、突如現れた少年啓太との出会いで変わり始める様子を描いているのだが、あまりにも母親のアホっぷりが鬱陶しくて、子供二人の関係に集中できなかった。読んでいて猛烈に息苦しいのだ。果たして作者はどの辺をターゲットにこの物語を書いたのだろうか。
紙の本アドリア海の奇跡
2002/03/30 08:55
あっさりした物語
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修道院を訪れた練金術師から、3つの箱をアドリア海へ運んでほしいと頼まれた、みなしごの少年の物語。3つの箱の正体は一体なんなのか? そして孤児院にいた少年の生い立ちは? といった謎の部分やテンポ良く進む展開に序盤は引き込まれるものの、読み終えてみると手抜きとしか思えない作品。生きる気力をなくした少年の魂の再生といったテーマがあるようだけれど、深みがなく、登場する錬金術師も神秘的な雰囲気は皆無。哲学的な思想がある訳でもない、冒険モノとして心踊るような物語になっている訳でもない、ぼけっと読んでいたら感動もなく終わったような物語でした。淡白。
紙の本クライシスF
2002/03/20 05:32
謎の奇病の正体は?
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第1回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。「引き算が出来なくなる奇病」といった出だしは面白いけれど、国際スパイなどが登場する後半の展開が乱雑。扱っているネタは割とタイムリーなものなんだけれど、そこにリアリティが感じられない。世界中を震撼させるような大事件が発覚するのに、やたら物語の方がこじんまりとしてるんだよなぁ。なんだか思いつきだけで一気に書いたような印象。
紙の本サラシナ
2002/03/10 13:13
少女漫画のような物語
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なんというか、少女漫画のような物語。主人公のサキは大切にしていた瓢箪のつるをうっかり切ってしまう。それに乗って空を飛び、時空を超えて過去の世界に。そこで出会った不破麻呂と恋におちる。
文章が平坦で、少し読みづらかった。あと終盤追っ手から簡単に逃げ出せるなど、ご都合主義のような展開もちらほらと。時空は超えないけれども、同じように古代を舞台に運命の恋を描いた荻原規子さんの勾玉シリーズと比べるとかなり物足りない。なんだか手抜きっぽい作品に思えました。
紙の本ヴァン・ゴッホ・カフェ
2002/05/10 03:49
魔法に満ちた不思議なカフェ
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舞台はカンザス州フラワーズの町、昔劇場だった建物の片隅にあるヴァン・
ゴッホ・カフェ。レジの上に「愛犬、大歓迎」といった札のかかったその場
所は、不思議な魔法に包まれていた。かみなりがぴかっと光った時から、料
理がひとりでに出来上がったり、木の枝にぶらさがるオポッサムが現れたの
が原因で、連鎖的にさまざまな出来事が起きたり。この素敵なカフェの持ち
主はマークという若い男と、その娘のクララ。
この物語はそんなヴァン・ゴッホ・カフェを舞台にしたさまざまな奇跡の物
語です。特に劇的なドラマはありませんが、漂う雰囲気が素敵な作品でした。
2002/05/08 18:50
ちいさなウサギのお嫁さん探し
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子沢山で知られるエスターハージー家のうさぎたち。が、食生活の変化が原因か、最近は生まれてくる子供の体がどんどん小さくなっていた。これではいけない。危機感を募らせた伯爵は、家族全員を集め、よその土地で大きなお嫁さんを見つけるように命じた。これはその中の一匹、小さなエスターハージーうさぎの冒険物語。
ストーリーの方はシンプルな冒険もので、旅先(ベルリン)で様々なハプニングなどに出会いながらも、お嫁サンを見つけようと奮闘する主人公の物語となっています。ただ、読みやすく綺麗にまとまってはいるのですが、目新しさに欠ける部分は否めません。反面、文章に添えられた幾つかの油絵調のカラーの挿し絵は素晴らしい出来映えでした。どちらかといえば絵物語といった作品ですね。
2002/04/10 19:24
二十歳の少女と七十二歳の老人の恋それを見守る一人の男性
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最近売れているらしい川上弘美の「センセイの鞄」。七十代のセンセイと、三十七歳のツキコの恋を描いた物語らしいが、この陸奥A子の表題作「記憶のダリア」にもそれに似た恋が出てくる。二十歳の少女ミチルと七十二歳の老人の恋。孫と娘と呼ばれてもおかしくはなさそうな二人の関係。それを見守るちょっと冴えない漫画家の立吉。揺れ動く気持ちと相手を思いやる優しさが織り成す恋物語だ。陸奥A子の描く男性は朴訥として垢抜けないものの何処かあたたかいのが特徴。
2002/03/22 08:19
手塚独自のピカレスクロマン
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満月の光を浴びると狼に変貌する少年トッペイと、彼を利用しようと企む悪の申し子ロック、この二人を中心に繰り広げられる手塚独自のピカレスクロマン。これは確か実写かアニメになっていたと思いますが、やはり漫画の方が良いです。本筋とは関係ないけれど、虫プロや手塚自身も漫画の中に登場してます。勧善懲悪で簡単に割り切れない独特の世界が魅力的。
紙の本新宝島
2002/03/18 00:49
戦後漫画界の記念碑とも呼べるような作品
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実質上、手塚のデビュー作にあたる作品。父が残した地図を手がかりに、主人公の少年ピートや船長が宝さがしに出かけるという冒険もの。当時、主人公の少年が車に乗ってひた走る冒頭の躍動的な場面が話題になったそうだが、この漫画から衝撃を受けた少年の中には満賀と才野、後の藤子不二雄も含まれていた。戦後漫画界の記念碑とも呼べるような作品。
2002/01/20 22:46
嘆きの一冊
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問答形式で書かれた本書は口調もやわらかで表向きは読みやすいが、その裏に著者の静かな憤りを感じる。本を「消耗品」として扱うブックオフの姿勢が気に食わないのだろう。本が人に大切にされていた古き良き時代に憶いを馳せ、大量消費時代の今を嘆く。
ブックオフに対する痛烈な批判本になっているが、実際は書物に対する著者の美学を書き綴った内容のように感じられた。大衆に安易に迎合した本の出版には走らず、良心的な本作りをする。そこには消費者ではなく本当に本を愛する読者が存在し、文化を体現する書籍と読み手の信頼関係が築かれている。それが著者の理想とする書物と人の関係なのだろう。
「本も、人間だと思えばよい。いや本は人間なんですよ。ごらんなさい、この本の輝き。光り。私に見い出されて喜んでいる」と出久根達郎の『佃島ふたり書房』の一節を抜き出したところに著書の現状に対するやりきれない想いが窺える。