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ゴン狐さんのレビュー一覧

投稿者:ゴン狐

25 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本手ぶくろを買いに

2005/08/04 14:52

ふわふわ子狐に会いにおいで

18人中、18人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大人になってから自分のために最初に買った絵本です。黒井健氏の狐親子の表紙に惹かれて、衝動買いしました。話そのものは以前から知っていましたが、改めて読むと言葉の響きの優しさ、きらめきに大人でも十分楽しめることを実感しました。子狐の口から出る雪の眩しさや冷たさを表現した「眼に何か刺さった」「お手々がちんちんする」は、初めて雪を見る子狐の驚きと子供特有の想像力がほんわり伝わってきて、子供好きの人でなくても和んでしまいます。
子狐の寒くて赤くなった小さな手を見たら、どんなに意地悪な人間でも手袋を売ってしまいそうだけれども、狐だと気付きながらいきなり捕まえることはせず、ちゃんと子狐にお金を出させてから売る店主が、かえって信じることの大切さを教えてくれる気がします。
一匹で怖い人間の住む町まで買い物に来て、間違って狐の手を見せてしまったのに、素直にお金を差し出した子狐が本当にいじらしくて可愛い。母狐の「ほんとうに人間はいいものかしら」という最後の呟きに、「本当だよ」と答えてあげ切れない自分がなんだか寂しい。新美南吉が生涯のテーマにしたという『生存所属を異にするものの魂の流通共鳴』を、時を越えて問われているようです。
ふわふわとして雪に溶け込んでしまいそうな可憐な挿絵の狐は、購入して以来私の中で、絵本の中の狐のイメージに定着しました。絵本の魅力を十分堪能させてくれる一冊です。

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紙の本炎の蜃気楼メモリアル

2005/05/13 23:58

ひたすら直江と高耶

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本編の時間軸には無い超番外編。直江と高耶が出ずっぱりで、二人の話を読みたいファンには垂涎物です。サイキックファンタジーとしての戦闘などは出てこないので、闇戦国の信長や赤鯨衆達が好きな方はあてが外れるかも。
新たに書き下ろされたものではなく、本編を書きながら作者が直江と高耶を書きたくて仕方がなかったということで、「覇者の魔境」「わだつみの楊貴妃」を執筆していた当時に一緒に書かれたものです。本編のお互いを必要としながら、気持ちが通じ合えない二人の想いを埋めるように書かれた話は、やきもきする読者以上に、作者自身の辛さが垣間見えるようです。二人の濃厚な場面が続き、結ばれながらも苦悩に満ちた二人の想いを重く感じる人には辛いかもしれませんが、二人がひたすら一緒にいるということで救われます。ほのぼのとしたエピソードも入っていて、直江にぎこちなく心を開いていく初期の高耶を思い出しました。
描かれているモチーフが、本編のどの部分に生かされているか発見する楽しみもあります。「炎の蜃気楼」だけではなく、捨てられた仔猫、土砂降り雨の描写は、「赤の神紋」にも通じているようで、思いあたった人はにんまりしそう。懸賞CDのため書かれた笑えるドラマ脚本や、作者が選んだベストコンビ、私だけが知っている「あの人の秘密」なんていうのも「メモリアル」に相応しい。「高坂が知っている直江の秘密」もっと知りたかったなあ。作者からの期待させるようなコメントもあるので、とりあえず読んでみるのをお勧めしますが、二人の濃厚な場面にはちょっとドキドキものなので(私はですが…)、苦手な方は無理しない方がいいかな。本編の時間経過を想定すると混乱しそうですが、超番外編として、あまり気にしないで読んだ方が、楽しめます。

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紙の本黄昏の岸暁の天

2005/07/21 00:08

小野さん、まだ続編出ませんか・・・また読み返してしまいました。

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

十二国記シリーズの中で一番好きな作品。アニメにはまり、原作を探して初刊と間違えて当時最新刊だったこの本を購入。途中で間違えたと気がついたものの、面白さに押され一気に読み、以後全シリーズを購入。
王驍宗と泰麒を失い崩壊した戴国を救うため、泰麒と同じ胎果である景王陽子を頼って、将軍李斉が満身創痍で慶国に辿り着くところから物語は始まる。
十二国記人気キャラ総動員という感じで、めったに出てこない各国の王や麒麟が集まるところは見逃せない。泰麒を救うために、各国の秘宝を用いあの手この手で王と麒麟、使令が奔走する様はドキドキわくわく。一歩間違えば慶国の運命が傾くかもしれないという緊迫した場面での、景王陽子と延王尚隆のやり取りが笑える。延麒六太の合いの手も、相変わらずおとぼけが効いてにんまり。シリアスに展開しながら、クスリと笑えるところがあるのが十二国記シリーズの魅力。王と麒麟、友人・臣下同士のやり取りは敬意や優しさ・厳しさあり、時には辛辣で猜疑心に満ちて見えるけれど、根底には相手に対する信頼感が流れている。誰もが見返りや互いの上下関係抜きで、必死で奔走する様が心底羨ましく感じる。
一番好きなのは、李斉と景麒が初めて会う場面。幼い泰麒がどんなに景麒を慕っていたかを、李斉が告げた時の景麒と陽子の反応が楽しく、景麒ファンとしては嬉しい。陽子と泰麒の対面は、初々しい高校生同士を思わせほんわかするが、二人が十二国へ来たことで失ったものへの苦さがにじみちょっと辛い。最後に厚意に甘んじることなく自分の道を選ぶ者、黙って見送る者の互いの静かな思いやりが痛い。
「十二国記」はシリーズ物ではあるけれど、それぞれ独立して読んでも分かり易く、登場人物が皆魅力的で、悪役も悪役に徹しきれていないところがいい。
講談社X文庫 White heart シリーズは上下2巻に分かれていて、山田章博氏の原作の雰囲気にピッタリなイラストつきだが、自分で膨らませた登場人物のイメージを大事にしたい方、一気読みしたい方は、こちらの講談社文庫の方が好みかも。字体はこちらの方が柔らかい感じで、イラスト無しでも読みやすい。
部分的にアニメ化されている「魔性の子」「華胥の幽夢」「図南の翼」と違い、唯一アニメ化されてないが、アニメ制作のNHKによると続編が出てないし、諸所の事情で今のところアニメ化の予定はないそうなので、アニメファンの方も原作で楽しむのがお勧め。

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紙の本ポテト・スープが大好きな猫

2005/12/21 23:41

ほのぼの・どきどき・ちょっとしんみり・・・きまぐれ猫と頑固じいさんがお好きな人は寄っといで

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「おじいさんは、この猫のことがけっこう気に入っているのですが、そんなそぶりは、ほとんど見せません。」読み始めてこの文章に差し掛かったとき思わず笑いそうになってしまいました。この文の隣には、猫の好物のポテト・スープを作るおじいさんを見上げる猫と、「できるのを待ってろよ」といわんばかりの微笑を猫に向ける、おじいさんの挿絵が描かれているからです。文章のひとつひとつや行間が見事に挿絵に表現されています。絵と文が同時に視界に入ってきて、正にこれぞ絵本、といった感じです。
 全体に黄色をオレンジがかった暖かい色調と青いトラックや空、魚模様の電気毛布(!)のコントラストが綺麗です。野球帽を被った口数少なそうなおじいさんと、愛らしい猫とは一味違う意思の強そうな瞳を持った雌猫の、日常とちょっとした事件の物語。歯切れのいい文章は子供でも飽きずにわくわくしながら読み進められそうです。冒険を終えた猫が、一生懸命おじいさんに語る話の詳細は、挿絵からしか想像できませんが、子供に読み聞かせてあげるお父さんお母さんの腕の見せ所でしょうか。でも、子供の方が楽しい物語を考えだしてくれそうかな。何も説明してないからこそ広がっていく絵本の世界を堪能できます。
 村上春樹が気に入って翻訳したというのにつられ、村上春樹の小説を読んだこともないのに手に取りました。挿絵のおじいさんと猫のように気取らずさばさばしていながら、優しさがにじむ文章は、『訳者あとがき』によると、うまく味が出なかったらしいですが、役者いわく『表現はいささかぶっきらぼうだけど、心根は優しい』というおじいさんの喋り方を十分感じさせます。『訳者あとがき』を読んで、村上春樹が読みたくなりました。

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紙の本クレーの天使

2005/07/07 15:44

透明な言葉と天使らしくない天使たち

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 単純な線のみで描かれた、天使の姿が愛おしくも物悲しい。日頃思い描く愛らしい天使や荘厳な天使はここにはいません。妙に不恰好で人間くさい天使たちが、かえって人の痛みを感じてくれるように思えます。
 『泣いている天使』は、膝を抱えて泣いている天使。「てんしはわたしのためにないている そうおもうことだけが なぐさめだった」ここに描かれる天使は決して人間のためになんか泣かない。天使になりきれない自分を哀れむように、涙をこぼす。天使でも自分のために泣く。人なんか救えない。それがかえって不完全な人間の救いになる。谷川氏の言葉は、書いてある詩とは裏腹にそんな風に私には響く。このなかで一番好きな詩です。ここには引用しなかった最初の3行がことに印象的で、耳から離れませんでした。うん、そんなことってきっとある、素直にそう思わせてくれます。
 表紙にもなっている『忘れっぽい天使』。優しくて無邪気な微笑み。手のひらに何を持っているのか。自分だけの大切なもの。苦しいことはみんな忘れて、自分だけの幸せに微笑んでいる。ちょっと羨ましい。
 不機嫌だったり、おどけていたり、人間を気取ってみたり、笑っている目元に意地悪な視線を秘めていたり、まるで私たちそのもののクレーの描く天使たち。谷川俊太郎氏の平仮名と片仮名だけで綴られた詩が、優しく透き通った静かさで響いてきます。絵と詩の関連はあまり考えずに、それぞれを観て読んだほうが楽しめます。「クレーの絵本」と同様寝る前のひと時に、声を出して読む一冊になっています。

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山田氏のアニメ原画、…もっと見たい!小説もアニメも続編が出ないので、これで紛らわしています

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 NHKで放送されたアニメのあらすじや登場人物の紹介が主ですが、山田章博氏のアニメ原画が載っているところが最大の買い。原作に描かれているラフでありながら緻密な絵とはまた一味違った、よりアニメに近い滑らかな線でアニメ原画が描かれています。原作のホワイトハートシリーズとアニメ原画、アニメとそれぞれの違いを見比べてみるのも楽しい。時間の流れを凝縮して閉じ込めたような原作のイラストが好きで、ホワイトハートシリーズを買っていましたが、より躍動感のあるアニメの原画や今にも動き出して声が聞こえてきそうな下絵、ずっと見ていても厭きません。
 原画それぞれに山田氏のコメント付き。アニメ化にあたっての希望などが書かれていて、2度美味しい。小説には登場人物の容姿の描写があまりないので、山田氏がキャラデザインをする時に原作からイメージしたことがもう少し沢山書かれていると嬉しかったですが、本書の一言コメントでもかなり満足です。欲を言えば、小野不由美さんが完成したアニメを見ての感想なんか入っていると嬉しかった。ちなみに小林常夫監督、陽子役の声優久川綾さん、楽俊役の鈴村健一さんの写真入りインタビュー記事もあります。久川さんは祥瓊役でオーデションを受けたそうで、主役抜擢に本人も驚いたらしい。
他に監督のイメージボードやパイロット絵コンテなど、アニメ好きにはたまりません。最後に収録されているアニメ版十二国記資料集も、原作やアニメではお目にかかれない、ちょっとお茶目な陽子や杉本のイラストや人物像の細かな設定、各国の王宮のイラストも載っていて、小説の中に描かれている世界を視覚化するのがどんなに大変か実感できます。読んでから、またアニメと小説の世界に浸りたくなります。

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紙の本月の影影の海 上

2005/08/08 23:39

十二国記の世界へようこそ

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

女子高生陽子が、夢で正体不明の怪物にうなされるところから始まる物語に、すでにアニメでストーリーを知っていたにも関わらず、引き込まれました。真面目で目立つのが嫌いな陽子の前に突然現れた、陽子を『主人』と呼ぶ奇妙な風体の金髪の青年。教室を襲ういきなりガラス窓が割れる惨事、一人だけ怪我一つしない陽子。青年が陽子に投げかける謎の言葉、喋ることができる不思議な獣達。夢に現れた怪物が現実となって陽子と青年を襲い、逃れるべく陽子は青年にむりやり月の影の見知らぬ国へと連れて行かれます。悪夢の中でホラー然として始まった物語は次々と展開が変わり、目が離せません。
青年とはぐれ異国の地で一人ぼっちになった陽子が体験していく世界は、異人への憎しみと親切な仮面を被った人々の裏切り、生きるための戦いの悲惨さに溢れ、荒んで言動が変化していく陽子が悲しくつらい。陽子を守るものは、戦えるように青年が陽子の体に憑依させた得体の知れない生き物と、絶対無くさないように言われた剣一本。剣はその刃を鏡として、疾走した陽子の陰口をいう級友や陽子自身の隠された悪意をも映し出します。剣に映る日本の映像・幻の猿の囁きは、今私たちが住む世界の鏡像に他ならず、自分自身が責められているように感じます。
体力が尽きて剣さえ持ち上げられなくなった陽子に、止めを刺せという喋るオウムに従うべく剣を陽子に振り下ろす金髪の美女。いったいこの先どうなるの、といったところで下巻に続きます。暗い内容にめげる人もいそうですが、次を読まなきゃここまで読んだ甲斐がない。
アニメでは陽子の陰の心の代弁者として、原作にはない設定で同級生二人を配していますが、原作の陽子一人の凄惨な戦いを感じて欲しい。ストーリーの悲惨さを、華麗な挿絵が救います。シリーズが進むにつれ陽子が段々変貌していく様を、挿絵を通して実感していくのも楽しみです。山田章博氏の挿絵が見たくて、講談社文庫を持っているのに、ホワイトハート文庫まで買ってしまった巻もあります…。

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紙の本クレーの絵本

2005/06/28 21:28

悲しいけど優しい、ひとりじゃないけど孤独・・・そんな気持ち

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

クレーの絵は、明るい色調で描かれていても、その中にどれも暗い悲しみと静けさを湛えている。谷川氏の詩とリフレインして、クレーの絵が暗い背景から浮かび上がってくるように頭から離れない。クレーの絵の中の言葉にならない思いをすくい取って、谷川氏の平仮名ばかりで書かれた詩が響いていく。
幾つか紹介すると、「階段の上の子供」は、明るい家の外に置き忘れられた人形のような子供の絵に添えられた、伝えられない想い。見えているのに手が届かない何か、自分の身近にもある気がする。
「黒い王様」、富んでいても、貧しさで飢えていても共通の悲しみは存在する。黒い王様の人には解らない悲しみを、クレーは暗い背景に溶け込んだどこか滑稽な王様で表している。
「選ばれた場所」は、一番好きな詩。『ことば』『たましい』『ゆめ』というありきたりな言葉が、なぜか心に沈むように残っていく。
「黄金の魚」は、表紙もなっている一見きらびやかな黄金の魚だが、深遠の蒼の海に泳ぐ姿は他の魚が皆背を向けて泳ぎ去っていき、ひどく孤独に思える。谷川氏の詩にある涙が海の泡に溶けて見えるような気がする。
クレーの世界に住むことができるのは、肉体でも精神でもなく、魂だと谷川氏は述べているが、私ごときは外から眺めているだけで精一杯という気がする。クレーに興味があるというより、谷川氏が詩を付けていることに惹かれ購入したが、クレーの絵に促されて詩を書いてきた、という谷川氏の透明なイメージとはかけ離れたように思えるクレーの絵が、読み進むうち次第に調和していく。
夜寝る前の一時、声を出して読んでいると、その世界に少しは近づける気がする。

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紙の本言葉の風景

2005/06/26 16:27

日本の言葉と風景が好きな方へ

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

四季毎に彩られた、何処かで観て感じた、懐かしい言葉と風景の写真。どの季節もそのまま体に染み渡っていきます。普段使っている言葉一つに、こんなに色々な表現があるのかと感嘆させられます。
読むというよりは、五感で感じて景色でも観るように眺めるといった感じでしょうか。疲れてしまった日常の息をつける一時にお勧めです。何気なくパラパラめくっているだけでも、言葉と風景がすっと気持ちの中に落ちて来ます。日本語ならではの言葉が持つ視覚的な美しさ、声に出した時の語感の響き優しさ厳しさ哀しさなどの様々な感情が読んでいて溢れてきます。日本人でよかったなあと思える一冊です。
私は冬の章がお気に入り。枯れた彩りのない殺風景な様を想像しがちですが、白一面の風景の中の光の眩しさ、凛とした言葉の中の春を待つ優しさが好きです。

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紙の本海馬 脳は疲れない

2005/08/26 23:50

手軽に読めて、ちょっと明日に希望が持てます・・・年をとっても賢くなれる

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「海馬」という脳の一部の名前としてはあまり馴染みのない、でも妙に愛嬌のある響きは、この本の題名としてはぴったり。海馬についての働き・活用方法については、目から鱗の新鮮なものからどこかで聞いたことがあるなあというものまで色々ありますが、あまり難しく考えないで、軽い読み物として時間が空いたときにお手軽に読むのに適しています。近頃物忘れが激しく、日々脳細胞は壊れていくばかりと落ち込んでいる身には、嬉しいものがあります。
対談形式で、学問的に突っ込んでいるわけではないので、すいすい飽きずに読み進められます。専門的な言葉を使わず解り易い表現で脳の働きを説明していく池谷さんと、日常や仕事の接点から池谷さんの話を自分の言葉で納得させていく糸井さんの、二人の会話の面白さがポイント。文庫化に際して、単行本が出てからの二人の生活の変化などが追加対談として収録されていて、これを読んだらいいことあるかもと思わせてくれてお得な気分です。

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大切だから言えない、解ってもらえなくても守りたい・・・誠人男前!必死の時任痺れます

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 誠人が殺人現場にアルバイトの届け物をしたことが発端になって起こる、誠人と時任のすれ違い。時任が、自分が知らない誠人の過去に理由も分からずイラつき、落ち込み拗ねる様が新鮮で可愛い。いつもの甘えた単なる我儘や、誠人以外の人間に対する怒りとは別の冷えて荒んだ表情が、時任の中の誠人の重みを感じさせます。自分のことさえ何も分からない、何もないと気づいた時任の沈んだ表情より胸に痛い。
 誠人を助けようと必死の時任と、時任を巻き込まないよう携帯を壊してまで連絡を断つ誠人。動と静に潜む互いを思う真情が、何だか切ないけど暖かい。
 フリーライターの亮司さんのおとぼけ顔とドジな刑事の新木さんが、シリアスな展開のなかほっと和ませてくれます。葛西刑事、相変わらず渋いですね。時任に話しかける言葉がぶっきら棒だけど、いつも思いやりが感じられて好きです。
 一人の時じゃなくて、一緒にいるべき人の所に戻ってきた時に初めて気付くその人の温もり。嘘になるから言葉にできない、言葉を信じない誠人が見つけた『言霊(しんじつ)』。誠人が時任に言う「ゴメンね?」時任が再会した誠人に言う「おかえり」ひとつひとつの台詞に込められた二人の想いをかみしめたい。

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紙の本猫路地

2006/06/03 16:29

猫が不思議なのか、こんな話を書いちゃう猫を好きな人間の方がもっと不思議

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 仔猫を飼い始めたものだからつい、購入。物語が怖いとか不思議というよりも、自分と猫のいる現実が揺らいで見える、そんなお話。
 話の一つ一つは、ファンタジーではあるのだけれども、その世界に浸りきれない中途半端な浮遊感がある。猫の不思議と、猫のいる空間の不思議、猫と猫の空間に取り込まれてしまった人間の不思議。それらが妙に突拍子もない感じで、何だか物語の中に入って行けない。そのくせ覚めた目線で「猫路地」に入って行けない自分が、猫好きの範疇から阻害されたような、奇妙な寂しさが残った。
 話に夢中になって「猫路地」に迷い込むというよりも、その後に会った猫が何だか違った生き物に見える。それがこの本の中の猫の魔法かも。

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紙の本宙の名前 新装版

2005/10/27 00:59

ソラと見上げて・・・東京の夜空も捨てたものじゃない、そんな気にさせてくれます

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 夏の夜空はいつもどんよりとした感じで、星も月も何だか影が薄かったけれど、秋が深まり空気が澄んだ切れ味を取り戻してくるにつれ、また空を見上げてじっくり星々や月を探してみたくなって、この本を開きました。
 『月ノ章』『天ノ章』『夜ノ章』『春ノ星ノ章』『夏ノ星ノ章』『秋ノ星ノ章』『冬ノ星ノ章』に分けられた各章には、見ているだけで落ち着いて和んでくる綺麗な写真が散りばめられ、月や星に秘められた物語が何だか懐かしくてほっとさせてくれます。
 お気に入りは、優しくて雅な語感の星たちの和名や中国名が色々載っているところです。シリウスと呼ぶのもかっこいいけれど、「天狼星」と呟く方が狼の光る目のごとく青く輝くためそう呼ばれた天空一明るい星に相応しい気がします。怖いばかりに青白く暗い夜空に光る星に対する人々の畏敬の想いが伝わってきます。
 「夜の帳」や「小夜時雨」「月の剣」「月の雫」、ダイヤモンドダストは「星のささやき・天使のささやき」知っているようで知らない言葉や名前の意味が分かることで、もっとその言葉もソラも好きになる。青や濃紺、朱のような夕焼けからエメラルド色と、同じ夜空とは思えないほど異なった色の空の写真が、一層言葉の響きを綺麗に感じさせてくれます。

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紙の本月の影影の海 下

2005/08/14 19:57

ライトノベルじゃもったいない!陽子とともに泣いて、笑って下さい

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 訳も解らずケイキという不思議な青年に連れてこられた異国の地で、妖魔という怪物に襲われ瀕死の陽子を助けたのは人の言葉を話すネズミの楽俊。人間の母をもち人の姿にも獣の姿にもなれる半獣。楽俊と旅する陽子の経験と共に十二国の世界が徐々に明らかになってきますが、卵果(卵から人が生まれる!)と半獣の設定は秀逸です。
 人語を話す獣はありきたりに思えますが、半獣の楽俊を取り巻く環境は、いまだに差別に溢れる現代をも示すようで身につまされます。そんな境遇にもめげずに、飄々として自分を語る楽俊がかっこいい。 ただのお人好しからくる優しさや純粋な善意からだけではなく、陽子を助けて旅を共にする楽俊だけれど、その言葉の一つ一つに溢れる誠実さと強い意思に、陽子ならずとも頭が下がる想いです。
楽俊を見捨てて逃げた陽子が、後悔に苛まれ自分自身に問いかける言葉。自分を置き去りにした陽子に、再会した楽俊が言う言葉。日常の中でふと人間関係につまずきそうになった時、私はこの台詞を想いだします。小説の中でじっくり味わって欲しい。「楽俊はすごい」とつぶやく陽子の心情に共感しました。 延王尚隆の登場場面は颯爽としていて、血なまぐさい場面にも関わらず爽快です。延王尚隆・延麒六太の、五百年続く大国延の王と麒麟らしからぬ軽妙なやり取りがほっとさせ笑わせてくれます。ほんと好きです、この二人!人物設定の上手さを感じます。
 日本で普通の女子高生だったとは思えないほど、思慮深く成長していく陽子には多少違和感がありましたが、最後に選んだ道を思えば納得させられるかな。つい走り読みしたくなる展開ですが、登場人物の台詞をゆっくりかみ締めて読みたい。
 表紙の陽子が勇ましくてかっこいい。凛々しく戦う姿が浮かんできます。陽子を看病する楽俊とのツーショットも綺麗で、異邦人の心細さと猜疑心が現れていて、行間の陽子の気持ちを代弁するよう。優しくて人の良い楽俊が初お目見えのカットですが、陽子の額に乗せた小さな手(前足?)が可愛くて、気に入っているイラストです。

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ケイと響生…二人の真の想い

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ワタルの友人に地下室に閉じ込められ、誰も来ないであろう絶望の中、響生にワタルではなく自分を選んで欲しいという切実な想いに気づくケイ。自分の心の痛みから、響生の痛みを全身で思い知り、その果ての別れを予感するケイの心情が切ない。
ワタルの演じた「剣」を観て、響生の出した「答え」は。助け出された榛原邸で雨降る中、冷たいガラス越しの二人の声なき対面に、月並みですが胸がきゅんとなります。(榛原いわくロミオとジュリエット…うーん)榛原の言いつけを破って響生の家に帰ったケイに、響生が直接「答え」を告げる場面が、静かな夜に優しく流れます。ケイに対する心が壊れんばかりの気持ちを、過激な方法でしか伝えることができなかった響生の真の想いが溢れていて、受け止めるケイでなくともその腕を伸ばして、響生を抱きしめたくなりそう。お互い求める愛が違う、でも必要としている想いの強さと、それを受け入れ前に進もうという決意が熱くて痛い。
榛原と響生の距離もどんどん接近してきて、眼が離せない。自分の心情は語らず、謎かけのような言葉しか投げかけない榛原に、頭を抱えるのは響生だけではないはず。ケイと響生よりも、この二人の関係の方が気になります。
ケイの演技に耐え切れず潰れた主役の代役として、ワタルがついにケイと同じ舞台に。
一つの舞台を互いに成功させようという、二人の共演者ぶりが見ものです。健気にケイをフォローするワタルが結構可愛いです。芝居中の二人の心の声の描写が、ちょっとうるさい感じがしますが。
「赤の神紋」のオーギュスト選考への最終対決に向けて、ケイと響生がどんな形で榛原とワタルに挑むのか、響生の意味深な言葉から続編が気になります。ついにあの人の登場か…と邪推するのは私だけでしょうか。

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