サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. うっちーさんのレビュー一覧

うっちーさんのレビュー一覧

投稿者:うっちー

221 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本これ、もっていき

2012/05/17 17:46

エネルギーに満ちたおおらかさが心地よい

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

表紙からもうかがえるように、なんともおおらかな絵本。
やおやからの帰り道、「これ、もっていき」と、はたけからおっちゃんがかおをだして、きゅうりをくれる。「これ、もっていき」とおばあちゃんは、トマトをもいでくれる。とげとげのきゅうり、まっかなトマト、どれもおいしそう!
みちばたのおじぞうさんまで、おそなえを「これ、もっていき」。
そうするうちの「これ、もっていき」と声をかけたのは、にゅううどうぐも?!
くろいあまぐもと、ざーざーふりだすあめの場面が、絵本の山場をつくる。
そして、さいごは、ともだちのゆうくんに「これ、もっていき」とわたすのは、かぶとむし。終わり方も、子どもの夏のおおらかさにあふれていて、気持ちがいい!
起承転結のある物語運び、無駄のないせりふ。そしてなにより、エネルギーに満ち溢れた迫力のある絵が魅力だ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本川のうた

2012/01/29 23:07

時と空間を超えて流れる、静かで深い川の風景。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 表現手段としての絵本は、多彩な可能性を持っている。この「川のうた」は、ラングストンの詩に画家のルイスが、絵をつけて、絵本にしたものである。

「わたしは、たくさんの川を知っている。
 世界のなりたちとおなじくらい古く、人間の体をながれる血より古い川を。
 それで、わたしのたましいも、川のようにふかくなったのだ。」

 このように始まる詩を、ラングストンは、18歳のときに書いたのだという。
アメリカの黒人の苦難の歴史を思うとき、この詩の意味するところと、彼らの誇りが伝わる。
 アメリカの黒人が、もとは、アフリカの大地に住み、川の水のめぐみを受けて生き、暮らし、歴史を刻んできたこと。そして、今、アメリカの川の水を見て、生活している。そして、このことを、たくさんの川を知っているから、たましいも、川のようにふかくなったのだ、と詠う。

川は、水は、暮らしにはなくてはならないものだけれど、命を奪うこともある。そして、また育むこともする。苦しみには、うちのめされるけれど、それは、また、魂を強く深くもする。
 
 ルイスは、この詩に深く傾倒し、一旦心の中におさめ、その詩の表わしていることを絵にすることによって、より、この詩が、読む者の心に入るようにすることに成功している。
 それは、祈りにも似た作業だったのかもしれないし、この詩を「祈り」そのものだと感じたのかもしれない。絵本の中と、裏表紙にもなっている1枚の絵。その、川に包まれた祈る人物の絵は、ルイス自身だそうである。
 読後、時と空間を超えて満々流れる川や水の風景が、静かに心を満たす。大人のための詩の絵本だ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本地球をほる

2012/01/29 22:53

読み終わった時には、本が180度回転! しかけの面白さが物語の楽しさを倍増させる。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 家の庭先をどんどん掘っていけば、地球の裏側に突き抜けられるかも、なんて子どもの頃は思ったりした。 で、もう少し大きくなると、地球の真ん中にはマグマがあって、掘り進むことはできないのだ、と学習してしまう。
 じゃ、マグマにあたらないように、真っ直ぐではなくて、斜めに掘り進もう!と掘り進んでいっちゃうお話がこの絵本だ。日本から角度を計算して、アメリカまで。友人とそして英語の話せる姉と3人で掘り進む。もちろん、両親も賛成。上から食料を送ったりしてくれる。…と、妙に細部はリアルで、説得力ありそうな設定なので、よけいにとぼけた雰囲気があり、それがおかしい。
 何より、絵本としてのしかけが見事。始めは、縦書きで始まる。つまり右開き。斜めに掘り進むうちに、場面もだんだん斜めになるので、少しずつ回して読むことになる。そして、ついにアメリカに着いたところで、180度回転していることになる。だから、ここからは左開きでページが進む。アメリカでの会話は、英語で横書きなので、とても都合がいい。
 読み聞かせをしてもらうと、いつの間にか180度回転していることに気付かず、読み終わったときに、「あれっ?!」と驚く。地球を掘り進んで反対側に到着するというストーリーと、本のしかけが、ちょうどぴったりで、なんだか物語を体感したようで、より印象深い。とてもうまいしかけに楽しさ倍増の絵本だ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本わたしが明日殺されたら

2012/01/05 22:31

クーフィの勇気と使命感に感服。強烈な、心揺さぶられる半生記。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 次期大統領とも目されるフォージア・クーフィは、1975年生まれ。2005年、アフガニスタン下院議員に当選。下院副議長に就任した初めての女性である。
 アフガニスタンでは、40年続いた王政の後、クーデター、ソ連の侵攻、内戦、タリバン支配といった厳しい情勢が続いた。その内乱の間に、アフガニスタンの本来の人口の三分の一が失われたという。
 この本は、まさにその激動の時代に生きたクーフィの半生記である。自分の家族のこと、国の政治の乱れとともにどんな苦難があったのか、自分が何を思い、どう行動したのかが、きわめて率直に語られる。自らの失敗や弱点も。
 彼女の胆力、勇気、使命感は、どこから来るのか。混沌たる社会の中で、生き抜くことだけでも困難な中にあっても、それでも、前を向き、よりよき社会に、国民皆が幸福にと強く願えるのは、なぜか。

 娘たちへの手紙が章ごとに挟まれている。彼女は、二人の娘たちに語りかける。「空の高みを目指しなさい」と。そうすれば、もし失敗して落ちてしまっても、樹上でとどまるだろうと。母として、この人生をいかに生きぬくべきか、家族や国への強い愛と高い誇りを失わないようにと、祈りにも似た言葉と励ましが綴られ、娘たちへの深い愛情が感じられる。

「勇気を持ってね。人生のどんなものも恐れてはいけません。」
「何かをやり遂げずに死んではだめよ。人々を助け、この国とこの世界をよりよい場所にしようとつとめることに、どうぞ誇りをもってね。」
「あきらめるなんて、わたしたちのやることじゃない。わたしたちは戦う、生きる、そして生き抜く」
「このことを頭に入れておいてね。まわりの環境がどんなであれ、人生には何かしらお祝いすることがあるものなのよ」
「愛は義務を栄養にして大きく育つの。尊敬も同じよ」

 アフガニスタンといえば、「内戦」「タリバン」「テロ」「貧困」ということしか浮かばなかった。しかし、これを読むと、そこに生きる人たちの苦悩だけでなく、国や自然への愛と民族の誇りが強く感じられた。
 タリバンなどの行った残虐な行為と、その中にあっても親切と思いやりを失わない勇気ある人たちがいたことは、人間の複雑さを思うとともに、大きな希望を感じた。
 一人の女性の半生記というだけでなく、アフガニスタンの現代史であり、優れた教育書でもある。他国や民族を知るということだけでなく、今の日本を考える意味でも一読の価値がある。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

まっすぐに、思いっきり生きる姿に、勇気付けられる。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 相撲人気が低迷している。残念でならない。でも、相撲はおもしろい! それを内側から体験できるのがこの物語。
 主人公の大関治は、進路に悩む中学3年生。15才の誕生日に近所の中華料理屋で、ナゾの兄ちゃんに「力士になったら」と勧められる。この「ナゾ兄」が、力士がいかに魅力的かを懇々と説くので、相撲を知らない人にもそのシステムがよくわかる。
 あこがれの女の子三夏の存在や競馬の騎手をめざすという同級生絵島の影響もあり、力士になることにした治は、銀部屋に入門することに。
 もちろん、けいこは厳しい。“かわいがり”といって、しごきのようなこともある。八百長の誘いもある。でも、治は、真っ直ぐに突き進む。悩むけれど、自分で考え、工夫して、努力する。その姿に勇気付けられる。一瞬の勝負の為にどれほどのけいこがあるのか。あの四股には、どういう意味があるのか。
「なれると思えばなれる。なれないと思った人間には絶対になれない」
「四股を踏むと、散らばった気持ちがまとまってくる」
「力士は土俵で気合をみなぎらせる」
ひとつひとつのせりふに思わずうなずいてしまう。

 また、この作者は、食べ物の描写がうまい。ちゃんこ描写の魅力的なこと! 「いかゴロちゃんこ」は、「するめいかの肝をふんだんに使った濃厚な鍋だ。バターをたっぷり入れている」そうだし、「酒粕鍋」は、「大鍋にごま油を注いで火にかける。ここにつぶしたにんにくとタカの爪を入れ、たまねぎ、豚肉を軽く炒め、酒、みりん、鶏がらスープ、酒粕、練りごま、白みそなどが入る」のだとか。
 治の心優しさと奮闘振りに胸が熱くなる。それでいてユーモラスで、ちょっとファンタジーだし、うるうると感動させてくれる、申し分のない青春物語だ。
 これを読めば、どうしたって、大相撲が見たくなる。がんばれ、力士たち。めざせ横綱!

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本サウスポー

2011/11/04 20:11

ジャネット、お見事!粋でユーモラスな、小さな恋のおはなし。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 なんともキュート。あちこちでニヤリとしてしまう実に微笑ましい物語。
 リチャードとジャネットは、仲良しのふたり。けれど、リチャードがキャプテンを務める野球チームに「女は入れない」と、ジャネットを拒否したことで、二人の仲はこじれる。腹を立てたジャネットは、手紙をだす。もう友だちじゃない!と。
 ジャネットから、リチャードへ。リチャードからジャネットへ。ふたりの手紙のやりとりが続く。売り言葉に買い言葉。意地の張り合い。お互い絶対に引かないつもりが、リチャードのチームのメンバーのケガで形勢が微妙に変化し…。
 ノートの切れ端に書かれていたり、紙ヒコーキにして渡されたりする実写の手紙と表情豊かな絵が、二人の状態を雄弁に語り、見るだけでも楽しい。本当は気になる相手なのに、うまくいかないもどかしさが、ユーモラスな文章と粋なイラストであらわされている。
 弱小チームがさらにガタガタになり、だんだん、ジャネットの思う方向にすすんでいく様子が愉快。最後の一場面で思わずニッコリさせられる。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本8月6日のこと

2011/11/04 19:49

静かな祈り

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 8月6日といえば、もちろん、ヒロシマへの原爆投下の日のことである。表紙の空は、青く美しく、ページを開いても、また、美しく穏やかな瀬戸内の海と空。そして、作者のおかあさんのおにいさん~つまり、おじさんのことが語られる。
 おかあさんが16歳のとき、おにいさんは兵隊として、広島にいた。そのおにいさんに差し入れに行くおかあさん。そして、あの日がやってくる…。
 8月6日のいつもどおりにおだやかな海。そして、落とされた瞬間の「ピカ」は真っ白な海で、次にやってきた「ドン」は真っ黒な背景と白い原爆雲で表わされる。次には、赤茶色の背景にばたばたと倒れる黒い人型。さらに赤黒い背景に黒い小さな人影が。ここまで淡々と語られてきた物語は、強い筆致のこの見開きの4場面で、見る者に大きな衝撃をもたらす。
 当たり前の生活と大切な人。それが急に失われたことを、「おかあさんは どんな きもちだったでしょう」とだけ問いかける。なにも声高には語らないし、説明もしない。でも、そのときの、少女だったおかあさんの悲しみは伝わり、大きな喪失感を共に感じる。そのおかあさんは、ことし82歳。今、しっかりと記憶に残さなければならないという作者の強い気持ちが、現れている。
 この絵本は、「きょうも せとないかいは おだやかなうみです。」と結ばれている。祈りの込められた一言だ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本若冲のまいごの象 絵本画集

2011/10/01 14:44

若冲の描いた「象鯨図屏風」のミステリー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 私が若冲の絵に出会ったのは、2009年にMIHO MUSEUMで開かれた展覧会「若冲ワンダーランド」で、である。おもしろかった! その中でも特に印象に残ったのが「象鯨図屏風」。鯨と象の描かれた屏風絵なのだが、緻密でありながら悠々として、写実でありながら現実とは異なる、なんとも不思議な心魅かれる生きものの姿がそこにあった。
 この屏風絵にまつわる話もまた不思議で、そのときに公開されていた一対は、前年の2008年に見つかったもので、もう一対は80年以上前から行方がわからないのだそうだ。
 そのことを題名にしているこの本は、江戸時代に京都で生まれた伊藤若冲の生涯を、名画とともに紹介している。錦小路にある大きな青物問屋の長男として生まれた彼が、その家業を40歳で弟に譲り、絵に専念した経緯。どのように画家になり、どんな絵を描いたのか。
 また、数年絵を描いてない時期に、彼は何をしていたのか。それが、2008年に京都の大学に残っていた書類でわかる下りは、真実がこうして解き明かされるのかと興味深かった。それによって誤解されていた彼の人となりも判明したのだ。毅然として、まじめで、根気強く、優しい。この85歳で没した画家のことを知れば知るほど、彼の絵にますます興味が湧いてきた。
 「新おはなし名画シリーズ」の1冊なのだが、むしろ、伝記絵本としておもしろく読めた。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本おうさまジャックとドラゴン

2011/09/28 23:10

子どもの遊びの楽しさがいっぱい!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 王さま、将軍、王子に、お城とドラゴン! たのしい道具立てはそろった。
 見開きの画面いっぱいに、意気揚々と行進する3人。おうさまジャック、しょうぐんザック、チュッパおうじだ。お城づくりの場面は、つくる経過の楽しさを盛り込みながら、モノトーンでいくつもの小さいコマで表わしている。さぁ、お城ができあがり、いよいよドラゴンやかいじゅうとの戦いだ!この場面は、もちろん、見開きいっぱいの大迫力。3人それぞれの動きがなんともかわいい。
 が、きょじんがやってきて、一人、またひとりと連れ去られる。たったひとり残ったおうさまジャックは、急に不安になってきて…。

 子どもたちの冒険ごっこの“なりきり”の喜び、高揚感、想像が広がる楽しさが、余すところなく伝わる。絵の躍動感がすばらしい。ひとりになったときのドキドキする気持ち、恐怖感をあらわす場面もいい。文字の配置やデザインも絵の楽しさを損なわず、リズミカルな訳文がこのお話にぴったりだ。
 小さい頃の冒険は、家族がいるから、帰る場所があるからこその「冒険」だ。大人(きょじん)としては、子どもが子どもでいることができ、のびのび想像の翼を広げ、冒険できるようにしてあげたい。そのためには、子どもが安心して帰ることのできる温かい場所をつくってあげることに尽きる…とあらためて思わせてくれた。

 ほんのちょっと注文をつけたくなったのは、前半と後半で、視点が違うこと。その視点の違いで、想像と現実との区別をつけたのだろうが、両親の顔は描かなくてもよかったのでは。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

オットーがかわいい!すみずみまで楽しいイラスト。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 表紙には、本の上に座っているクマ。裏表紙には、かばんをかけたくまが、飛び出して行っている絵。淡い色合いと、柔らかな雰囲気の、このかわいいくまのオットーが主人公。
 表紙で分かるとおり、本より小さいサイズのくまなのだ。それもそのはず。オットーは、えほんの中に住むくまなのだ。しかも、誰も見ていないときには、絵本から出て行って、家の中を探検したり、本を読んだり、なんとも積極的!
 ところがあるとき、家の者がひっこしして、オットーは(というか、絵本は)置き去りにされてしまう。そこで嘆いてなんていないのが、オットーのいいところ。住みやすいところをさがしに飛び出していくのだ。
 
 ここ数年、国民読書年の影響か、本や図書館をテーマにした絵本が増えている。オットーがついに見つけたのも、「あたたかく、やさしいひかりがあふれるおおきないえ」「としょかん」! そこで出会ったのは、くまの「アーネスト」だし、本から出てきてくつろいでいる仲間は、なつかしの名作の主人公たちを思わせるし、本好きにはニッコリさせられる。
 何より、オットーの表情や動きのかわいらしさときたら!とにかく、イラストが魅力的。画面のすみずみまで温かさと楽しさがあふれている。また、文章が極力おさえられているのもいい。これにより、さらにイラストが活きている。絵本のめくりとオットーの動きもきちんと考えられていて、まったく違和感なくストーリー展開を楽しめた。うまい!

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本わたし、まだねむたくないの!

2011/09/21 23:02

眠りにつく前の至福の時間!

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本当は眠いのに、「ねむたくない!」と言う子どもの気持ち。わかるわかる! 子どもの頃、眠るのがもったいなくて、こう思ったことは、みんなあるはず。
 そして、それといっしょに思い出すのは、あの眠りに着く前のひとときの幸せ感。一日遊んで、身体はクタクタ。でも、その、ちょっとぼうっとした中で、まだやりたいことが…。もっと起きていたいと、現実と想像のあわいの中を漂う幸せな気持ちときたら…!
 
 主人公の女の子は、想像の中で、海賊になったり、怪獣になったり、騎士になったり、バレリーナになったり。画面には、「あぁ、これって、もしかして、あの場面?!」と思えるおはなしの名シーンが出てきて楽しませてくれる。つまり、この女の子は、本を読んだあと、ひとりで物語の主人公になって遊べる豊かな時間を持っているということ。「まだねむたくないの!」という言葉は、この子が親に守られて幸せだからこそ、言えることなのだ。
 作者の、子どもが子どもとして過ごせる時間へのいとおしさが伝わってくる絵本だ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本もっとくらべる図鑑

2011/07/01 23:00

くらべることの楽しさを満喫させてくれる。

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

  「くらべる」と一口に言っても、何をどう比べるのか、それをどう見せるのかで、まったく違ったものになる。でも、この小学館のシリーズは、そこがうまい!見せ方に工夫があり、ビジュアル的に優れているのだ。
 たとえば、「大きさ」を比べるのでも、「空からくらべてみよう!」とあり、まずは、東京ドームを中心にさまざまなものを配し、そこには、地球上で最大の動物シロナガスクジラも並べられている。
 そして、ページをめくるごとに、どんどん空の高みから眺めて、小惑星イトカワ(こんなに小さいなんて!)や、バチカン市国、富士山の火口、さらには、地球上にある水の量(!)などの、大きさをさまざまにくらべて見せるのだ。視点でいえば、鳥になり、宇宙船になり、神(?)になったかのように。
 生き物を行動や能力でくらべているページも実におもしろい!地面を掘ったり、食べたりの能力を比較するのだが、読むだけでさまざまな発見がある。「時間のながれ」という本来見えないものを比べているページも、おもしろい。
 読んでいて飽きない。大人をも惹きつける図鑑だ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本ダレ・ダレ・ダレダ

2011/04/20 00:04

おしゃれで粋!美しくておもしろい。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 夜の闇に、月の光でほのかに浮かび上がるシルエット。あれは、いったいダレ?!
 青と黒が基調のモダンで美しいイラスト。ユーモラスな文章。とてもおしゃれで粋な絵本だ。2002年の「オレ・ダレ」の続編ともいえるものだが、今回の方が、工夫が凝らされ、絵も文もさらに芸術的に進化した。これを読むと、ふたりの才能がわかる。う~ん、まいりました。
 たとえば、ぎゅうぎゅうとかたまって寝ているセイウチのイラストには、こんな文が添えられている。(造形的にもいいけど、寝姿がキュート!)

「うみの なかなら いいけれど、りくに あがると うごけない。
 だから、ねるしか ないのです。みんな ぎゅうぎゅう おしあって、
 おもたいけれど かさなって、なかよしなのも、こまりものです。
 ふとめの ボクらは、ダレかしら。」

 見れば、なんの動物かはわかる。でも、わかるわからないではなくて、とにかく、作者の、素材の「解釈」が愉快なのだ。子どもはもちろん楽しむだろうけど、大人だって、存分に楽しめる。むしろ、この完成度の高さを、大人にも楽しんで欲しい。
 違いに迷う「ジャガー、トラ、チータ、ヒョウ」、白黒の割合がユーモラスな「パンダ、イルカ」、画面いっぱいの迫力ある「タコ」、ぎゅうぎゅうとたくさん固まっている「セイウチ」、一列並びの「ペンギン」など、画面構成がそれぞれ工夫されていて、全体としてのリズム感が絶妙。
 なによりとぼけたセリフに、ニヤリとさせられる。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本世界で一番美しい元素図鑑

2011/03/09 23:32

美しくておもしろい! 読めば自分のものにしたくなる図鑑。

17人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本当に美しい!ひとつの元素に見開き1ページ。左には、純元素の大きな写真、右には、その化合物や応用製品の写真がある。「元素」に対してぼんやりとしかイメージしていなかったので、元素がこんな風に目に見える形で掲載されるなんて、とても新鮮で驚いた。「炭素」のページには、純元素として、ダイヤモンドの大きな写真。そうか、ダイヤモンドって、炭素なんだ。しかも、「燃やすと二酸化炭素になる」とある。なるほど。
 見るだけでも楽しいのだけれど、実は、この本の真価は、文章にもある。その説明文のおもしろいこと!
 たとえば、キュリー夫人が発見した「ポロニウム」は、猛毒なのだとか。そのポロニウムが、2006年ロンドンで、元KGB職員の暗殺に使われ、「核兵器製造の政府でもなければ入手できない量のポロニウム」だったとあり、「やっぱり」などと否が応でも想像させられてしまう。学術的かつ具体的で、興味深い周辺情報も書かれているのだ。しかも、センスがよくて、ウィットに富んでいる。
 著者の知識と情熱に圧倒されるのがとても心地良い、という体験をさせてもらえた。元素は、この世界を形作っているもの。わからないながらも、「元素」というものの一端に触れさせてもらえた喜びさえ湧いてくる図鑑だ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本ピーティ

2011/03/06 23:03

ピーティの心と生き方が胸をうつ。この温かさ、すがすがしさ。読んでよかった!

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 読み終えたとき、人が生きていくということに感謝せずにはいられなかった。生きていく価値と言うものは、簡単に目に見えるものではなく、どんな人生もかけがえがないということ。そして、人は一人では生きていけない、誰かとつながることで生きていけるということも、あらためて心に突きつけられる。
 この物語の主人公は、ピーティ。1922年に生まれたピーティは、脳性まひのため、体はねじれ、動かせず、強い知的障害もあるとされた。そのため、生まれたモンタナ州ボーズマンから、親からも離され、ウォームスプリングズ精神病患者収容施設に送られる。ピーティはその病棟の中で子ども時代を過ごす事になる。
 正常な精神と知能があるのに、言葉をうまく発したり、身体を動かすことが出来ないがため、なにも構われず放っておかれたピーティに、12歳の時、カルビンという9歳の友達ができる。彼は、軽い障害があっただけで、親に捨てられ、この病院に収容されることになったのだ。カルビンは、ピーティがきちんと考えることができることに気づき、気持ちを伝え合うすべを考え、二人はかけがえのない友だちになる。
 物語は、1部と2部に分かれているが、1部は、ピーティのウォームスプリングでの生活が描かれる。ピーティに知性があることに気づき、温かく接した者は、彼の精神の輝きに惹かれ、信頼関係ができる。けれど、それもつかの間。カルビンとも別れ、ピーティは、生まれた町ボーズマンの介護ホームにやられる。
 2部は、1990年春、年老いたピーティが、ボーズマン介護ホームの前で、8年生のトレバーと出会うところから始まる。親にも友人にも理解されず、思い通りにならなくて、心の中に孤独と怒りを抱えていたが、本当は繊細でとても優しいトレバー。彼は、ピーティの心を知るうちにどんどん魅かれ、何か彼の為にできないかと奔走する。二人の友情と、支えあい分かり合おうとする気持ちに感動する。
 過酷な人生を与えられながらも、決してめげたりせず、常に感謝と、すばらしい好奇心と、喜びを受け止める心を持っていたピーティ。彼の本質に触れることの出来た人たちは、必ずピーティを好きになり影響を受ける。生きていくということの大切さといとおしさに心が揺さぶられる。
 身体の障害により外に向けて意思表示できないために、知性がないと決め付けられ、家族とも離され、人として生きられなかったなど、当時の人々の障害に対する無理解、政策の誤りなどから来る偏見と嫌悪感など、とても重くて暗いテーマだ。けれども、また、こんなに温かくてすがすがしい物語もなかなかないだろう。とても気持ちよく存分に泣かされた。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

221 件中 1 件~ 15 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。