繊細で不器用、でも愛おしい！少年・少女だったあの頃を思い出してしまう本

バブル崩壊直後。東京という大都会で生きる少年たちを描いた短編集です。彼らは派手に遊んでいても夢中になり切れずに、どこか満たされず、ぼんやりとした欠落感を抱えながら過ごしています。あの感覚はいったい何だったのでしょうか？同じ年代だったあの頃の自分を思い返しながら読みたい一冊です。

主人公は高校1年の女子。たった2カ月でクラスの「相関図」から外れていることを自覚しています。中学からの友達もいますが、「相関図」の内側に溶け込みたいその友達と、ずっと一緒にはいられません。一方、はじめて気楽に話せたアイドルオタクの男子に対しては不思議な感情を抱きます。登場人物の繊細さに胸が痛くなる物語です。

冴えない大学生の「先輩」と、無邪気で純真無垢な後輩「黒髪の乙女」。京都の街を舞台に、2人のちぐはぐな恋模様が展開されます。そのうち、2人は個性的な曲者たちによって、珍事件に巻き込まれていきます。どこかかみ合わない2人のやり取りを読みながら、思わず微笑んでしまう本です。「若いって素敵だな」と感じられます。

幼い頃から「私」の自由を束縛する「親友」。「私」は彼女の呪縛から逃れるため、ある少年と恋をします。彼の身体を知ることで、「親友」より先に少女期に別れを告げるのです。女同士の友情は、子どもの頃から複雑。友情という感情に、妬み、嫉み、独占欲が同居します。少女期のそんな複雑な友情を見事に描いています。

高校生活最後の大イベント、歩行祭。80キロという長距離を歩きながら、同級生たちは過去の思い出話をしたり、卒業後について語ったりします。主人公の女子は、「3年間、誰にも話せなかった秘密を精算する」という決意に胸を焦がして歩きます。あの頃にしか味わえない感覚や、イベントでの高揚感などを思い出す一冊です。