ほろりと涙を流さずにはいられない、乾いた心を潤す感動小説

主人公の健太郎と姉・慶子は、祖母がなくなったことがきっかけに、実の祖父が戦争で亡くなったことを知ります。その死の謎について迫ってく物語です。戦時中に「生きて家族の元へ戻る」という意思とは裏腹に、目の前で生徒や仲間が死んでいくさまを目にした男の選んだ最期の答えは、きっと心に熱く響くでしょう。

会社社長だったが落ちぶれてしまった城所安男が、心臓の病気で入院している母親を助けようと百マイル離れた病院に車で運ぶという物語です。母を思う安男の想いや母からの安男に対する想い、旅路の果てに1人だと思い込んでいた安男が、実はたくさんの人々から支えられていたのだと気づきます。人と人の思いが胸を温かくします。

いじめにあい学校に通えなくなった少女が、祖母がいる田舎で暮らすという物語です。祖母との会話には、おばあちゃんから孫娘に向けられた、あふれるほどの愛でいっぱいです。そのおかげで、再び前を向いて歩き出す少女。その姿は読み手にも勇気を与え、立ち止まりそうな心をやさしく後押してくれます。

主人公が脳腫瘍になり、余命が残りわずかな状態で悪魔と出会うところから物語がはじまります。「世界からものを消せば自分の命をつなげる」という契約を交わした主人公。さまざまなものを消して生きながらえるなかで、すべてのもの、すべての命に意味があると気づき、自分の運命についても考えます。その姿勢に心が揺さぶられる一冊です。

こよなく数学を愛し、80分しか記憶が持たない元数学者である「博士」の家に、主人公が家政婦として派遣されます。数学を通じて絆を深めていく、博士と主人公、そして主人公の息子。80分しか持たない記憶のなかでも、人と人はこんなにも温かくてやさしい世界を築けるのだと、胸に熱いものを残します。