イライラした気分が爽快に!?悪人の悪行に目が離せない暗黒小説

新宿・歌舞伎町の中国裏社会で生きる健一。健一は、劉健一であり、高橋健一でもあります。日本人と台湾人のハーフ。中国社会、日本社会、どちらにもなじめない根無し草です。彼とその周りの悪人たちがくり広げる、悪の物語。善意という感情ををもたない人々のドラマが、すがすがしく感じます。

不夜城の著者・馳星周が影響を受けた、ジェイムズ・エルロイの代表作。主人公クラインは弁護士資格ももつ刑事。キレキレの頭脳で、裏社会の住人と共存共栄する悪徳警官です。事件捜査の過程で、彼が見いだしたのは警察組織の「巨悪」。吐き捨てるような文体で綴られる、「悪vs悪」の物語が爽快です。

禿富鷹秋（とくとみ・たかあき）、あだ名は「ハゲタカ（禿鷹）」。ヤクザにたかる悪徳警官です。暴力を平然とつかい、弱みにつけ込んで脅す。その「ワルさ」は、すがすがしささえ感じさせます。登場するヤクザたちのほうが善良な人々に思えてしまう、禿鷹の悪行が痛快な小説です。

東野圭吾の長編。ミステリーとしてカテゴライズされることが多いですが、暗黒小説でもあります。不幸な子ども時代を送った女と男。その遍歴は悪に満ち、幸せを求めようとして、幸せのために悪事を行う。日常の背後に犯罪が隣接し、救いのない結末へ向かう、魂をゆさぶられる物語です。

『白夜行』に連なる小説です。謎の女・美冬と、叔父を殺したばかりの男・雅也は、阪神大震災の直後に出会います。美冬が表社会で成功するために、裏で悪事を請け負う雅也。美冬に命令されて殺人を犯した後、肉が食べられなくなった雅也に、美冬が無理やり食べさせるシーンにゾクゾクします。