眠れなくても、眠たすぎてもつらい！安らかな眠りを求めるあなたに贈る小説

短編「夜の公園」のヒロインは、恋人と別れてから不眠症になり毎晩を公園で過ごします。そんな彼女の目の前を走っていく男性。ある夜、一緒に走った2人は、そのまま彼女のマンションで過ごします。自分を卑下して恋人のいうなりだったヒロインが、みずからを肯定して明るい昼間に出ていく姿に力をもらえる小説です。

アルバイト先の上司と不倫中のヒロインは、昼も夜も眠たくてたまらない。恋人からの電話にだけは目が覚めるが、あとはひたすら眠り続けます。ストーリーが進んでも、不倫の不安と親友の自殺のストレスから、ヒロインは深い眠りに落ち込んだまま。停滞した時間を破る不思議な体験の後の、ゆるやかな覚醒が感動的です。

最愛の妻と死別した絶望から再生する日々を描いた、自伝的小説です。主人公は、ギャンブルの神様と呼ばれた作家との旅を通して人間の強さ・大きさに触れて癒されていきます。タイトルの「いねむり先生」は、その作家の持病であるナルコレプシーからきたもの。眠れない主人公と突然眠りに落ちこむ作家の対比が鮮やかです。

老いた主人公は、怪しげな海辺の宿で、前後不覚に眠りこける若い女性と添い寝する楽しみを知ります。不眠に苦しむ老人はすこやかな眠りがほしいと思いつつ、眠っている女性を眺めて妄想にふける。この小説の連載当時は、著者自身も不眠に悩んだといいます。誰もが眠る夜に1人だけ寝付けない孤独と憂鬱が、リアルすぎるほど描き出されています。

実家の酒蔵を手伝い、自殺防止ボランティアをしていた妻は、なぜ死を選んだのか？妻を亡くした主人公は、悩んだあげく不眠症になります。長い夜をひたすら歩き、自分の肉体を疲れさせつつ死の真相を追う主人公。不眠は、彼が突き止めた妻の衝撃的な過去で終わります。眠れぬつらさと真実を知るつらさ、どちらも苦しい不眠小説です。