フィクションだからこそ書けるこの思い。「3.11」を描いた震災の物語

震災後、汚染の危険から立入禁止とされている海に潜るダイバー・舟作。違法と知りながらも、彼は依頼者のために海底から遺品を拾い集めます。自らも津波で両親と兄を失い、生き残ってしまった後ろめたさを抱えながらも、家族や依頼者とのつながりを通し、希望を見出していきます。心の復興の難しさについて向き合った一冊です。

震災の爪痕が癒えぬ東北地方の小学校に派遣された教師の徹平。彼自身もまた阪神・淡路大震災の被災者であり、子どもたちや保護者たちと本音で語り合い、心を通わせていきます。被災者は弱い存在なのか、東電だけが悪者なのか、ボランティアとは何なのか、など被災者を取り巻くタブーにあえて切り込んだ渾身の一冊です。

故郷・仙台を地震と大津波が襲った・・・。東京にいる作家の「私」はその現実に向き合いつつも、当事者になりきれない複雑な気持ちを抱えながら日々を過ごしていきます。直接大きな被害がなかった人でも何かしら傷を受けた「3.11」。作家として、1人の人間として前を向こうとする姿がとても丁寧に描かれた小説です。

ある出来事を通して人生が変わってしまった4人の物語です。原発事故を受けて、自主避難を検討した修人、実行したエリナ。「3.11」が主題の小説ではないものの、夫婦の意見の相違、幼子の死、義理の家族との軋轢、といった出来事と同列に語られるに至ってしまった放射能問題について、深く考えさせられます。

震災で親友・すみれを失った真奈。3年が経ち、すみれの恋人が遺品を整理すると言い出しますが、真奈は納得することができません。突然奪われてしまった命について、残された者は、死者は、どう受け止めたらよいのか。真奈の視点、すみれの視点から交互に語られる幻想的で美しい、死と再生の物語です。