レズ・SM・変態!?通俗性を芸術にした文豪・谷崎潤一郎の名作文学

大正モダニズムの時代。「私」（河合譲治）は、浅草のカフェの給仕をしていたナオミという西洋風なルックスの少女に目をつけます。彼女を引き取り自分の理想の西洋風な女に育てようとしますが、自由奔放なナオミは譲治の思惑どおりにはいかず、とんでもない悪女へと成長し・・・。女に翻弄されるマゾヒズムの精神を描いた小説です。

関西の有閑夫人の園子が知人の作家に自分の体験を相談するという体裁で、関西弁の独白で全編が綴られています。園子は絵画教室で知り合った美女・光子に魅了され、同性愛の関係に陥ります。しかし光子には愛人の男もおり、光子の魔性に翻弄される園子。やがて園子の夫もからんできて、異常な事態に・・・。倒錯的で官能的な同性愛小説の傑作です。

「鵙屋春琴伝」という書物をもとに書いた、という体裁の小説です。9才で失明した春琴と使用人の佐助。わがままな春琴に折檻されながらも佐助は喜んで仕えます。SMをテーマにした中編ですが、句読点も改行もない独特の文体は斬新かつ魅力的です。耽美主義、谷崎の最高傑作といわれています。

谷崎が自分の妻とその姉妹たちをモデルにした昭和初期を舞台にした小説で、船場の旧家・蒔岡家の四姉妹を描いた物語です。次女・幸子の視点を中心に、美人なのに縁遠い三女・雪子の見合いと、奔放な四女・妙子が引き起こす問題が描かれています。阪神間モダニズム時代の生活文化を描き、戦争で失われる最後の輝きをとどめた、美しくも切ないお話です。

「鍵」で描かれるのは、初老の学者と美しい妻、さらにその娘です。だけどその学者が、娘の縁談相手と妻が不倫関係になるように画策し、嫉妬で性的興奮を得ようとするのです。この小説がすごいのは、お互いが読んでいることを意識して書いている学者と妻の日記、という体裁で全編が叙述されていること。読者も盗み読みしているような、ゾクゾクを覚えます。