「人体」を究め「人間」に向かい合う。「医師の世界」が覗けるコミック

病理医は患者から採取した組織などを顕微鏡でみて、病名の診断や治療効果の検証をします。極めて有能だけど人当たりは最悪な病理医の岸先生が、新米病理医や検査技師、ほかの科の医師とシニカルに、ときに熱くやり取りする日々を読んでいると、病気の治療における病理医の存在の重要性に驚かされることでしょう。

手術の最初に麻酔をかけるだけではなく、終了時まで患者の生命状態を維持管理しているのが麻酔医であることが、若き女性麻酔科医の日常を通して詳細に描かています。麻酔技術を向上させることの難しさや食事をとる時間もない激務の様子など厳しい場面もありますが、主人公の元気さに助けられてどんどん読み進めることができます。

院長命令で災害派遣医療チーム、通称「DMAT」の隊員となった内科医・八雲響。血が苦手でいかにも頼りなさげな主人公が、想像を絶する過酷な現場に何度も赴くうちに精神的・技術的に鍛えられ、災害医療のスペシャリストへと成長していくさまを描いています。死に最も近い現場の医師の判断や選択の重さは、読む者にとっても衝撃です。

「ムショ医」とは刑務所内で働く医師のこと。弱冠28歳で女子刑務所の非常勤医師となった粂川晶は、赴任日に受刑者同士のケンカに遭遇するなど受刑者の現実に衝撃を受ける日々ですが、決して逃げません。刑務所内という特殊な医療現場であっても、患者と真摯に向かい合う医師の姿に「医は仁術」という言葉が重なります。

主人公は女性では珍しく消化器外科を選んだ研修医。激務のなかで医療技術を習熟していかなくてはならない研修医時代のハラハラドキドキの日々が、コミカルに描かれています。発表が1997年なので登場する機器や技術などは現状と異なる部分もありますが、医師という仕事の普遍的な本質の部分が描かれたコミックです。