明治・大正時代の青春にどっぷりひたれる！夏目漱石が描く青年小説

主人公は、やや無鉄砲な青年。教師として東京から四国の中学校に赴任しますが、真っ直ぐすぎる性格から周囲とトラブルを起こしてばかりです。同僚とのほほえましい関係や納得できない上司など、今の若者の悩みと同じものが描かれています。坊ちゃんの筋を通したい性格は、強烈ですが清々しく読後は爽快です。

主人公の四郎は、大学で学ぶために熊本から上京しました。見るもの聞くものすべてが熊本とは違い、青春を謳歌するなか、都会的な女性と出会って恋をします。はじめての恋の相手は奔放な美禰子。彼女に振り回されつつ、友情をはぐくみ、自分の学問への不安を感じる主人公の姿は、時代を超越する清冽な青春像です。

まじめで誠実だが、内向的過ぎて行動力が伴わない主人公の須永。従妹の千代子を愛しつつも、理詰めで物事を考えすぎる須永は、行動的な千代子をひそかに恐れています。2人の恋愛を軸に、須永がライバルに対して抱く強烈な嫉妬心を掘り下げて、大正時代の自意識過剰な青年の悩みを浮き彫りにしています。

裕福で美貌の若き女性・藤尾は、前途有望な青年・小野と結婚したいのですが、彼には恩師の娘がいいなずけとして存在します。傲慢さが美貌に花を添える藤尾と、古風で物静かないいなずけの間で揺れる小野。絶妙なキャラを配した三角関係のもつれが、ストーリーを強く引っ張ります。明治時代の若者の恋愛事情を赤裸々に描いた小説です。

学問だけに打ち込む主人公は、結婚後も家族から孤立しています。ついに妻と弟の仲を疑うようになった主人公は、2人に旅に出て同じ宿に泊ってくれと頼みこみ・・・。孤独に悩みつつ、自我とプライドを捨てきれない主人公の姿は、現代の若者にとっても親近感がわくでしょう。追い詰められた主人公の行く末が気になる小説です。