ブックキュレーター岩波書店 編集者 坂本政謙
恋をしたら男も女も、こんなに切ない・・・本。
むかしむかし、栞の裏に書いてあった或ることばをおぼろげに憶えています。本を読む者は二つにわけられる――何かを学ぼうとする者か、さもなくば何かを忘れようとする者か。これから紹介する5冊は、誰かを思うその切なさ、苦しさを忘れさせてくれるのか、それともさらなる苦悩に導くのか。「生まれ変わっても、あなたに会いに行く。何度でも」――そんな思いを感じさせる物語です。
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お伽草紙・新釈諸国噺
太宰 治(作)
太宰といえば、暗い?いえいえ、太宰は明るくて、突き抜けたユーモアあふれる作家なのです。ここでおススメするのは、『お伽草紙』のうちの1篇、「カチカチ山」。こんな話を戦時中、空襲の最中に書いていたなんて、とんでもない非国民?キャバ嬢にころがされているオッサンにだって、一片の純情はあるのです。それにくらべて、いまどきの女子の酷薄さといったら――そんなお話。いまわの際にタヌキが残した、その一言の切なさ、悲しさよ(涙)。高橋源一郎さんも「解説」で言っています、『お伽草紙』が『太宰治の生涯最高の傑作と信ずる』と。
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安吾の自伝的な小説集として、この1冊まるごと生きて在ることの切なさ、悲しさを語っています。その意味でもおススメですが、とくに「恋」といえば「二十七歳」「三十歳」の2篇。どんなに相手を思っていても、すれ違ってしまうから男も女も切ないのです。どうして男も女も素直に愛しあうことができないのでしょう。ケータイもメールもLINEもない、手紙だけがふたりをつないでいたころの、狂おしくも悲しい恋のゆくえです。
ブックキュレーター
岩波書店 編集者 坂本政謙石油会社をへて、現在は岩波書店の編集者です。編集・企画にかかわった書籍は、いつのまにか200を超えました。いまは岩波のPR誌『図書』の編集が中心。64頁という小冊子ですが、月刊誌なので毎月いろんなことに追われて四苦八苦しています。それでも成仏できず、未だに本もつくったりします。いろいろな。
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