女性作家ならではの繊細な描写が光る。大切な人への愛おしさを強く感じる本

40歳目前のツキコさんは、ある日、高校の恩師であるセンセイと再会します。30歳以上離れた2人が、お酒を飲み花見や旅行をして過ごす日々が描かれた物語。慕っているのに年齢や立場のために、その想いを前面に出さないせつなさが漂います。それでもお互いを必要とし大切にするやさしさに、静かで深い愛情を感じます。

自殺した「ぼく」が再挑戦の権利を得て、自殺を図った中学生・真の体に憑依する物語。前世の記憶が消え、息を吹き返した真として生きる「ぼく」。真の境遇に自殺したのは当然と思いながらも、再挑戦で家族や友達と懸命に向き合い、彼らのよさにも気づいていきます。その細かな心境の変化が、大切な人に寄り添う気持ちを教えてくれます。

父親を中心に家族と生活を綴ったエッセイ。職場では平身低頭なのに家では亭主関白な父との思い出が、日常の些細なことから思い出されます。叱られてばかりの思い出なのに、父のちょっとした行動にやさしさや滑稽なさまがにじみ出てくる。叱られても止まない父への愛情が手に取るようにわかり、心をほっこりさせてくれます。

全力で恋をして全力で傷ついてきた過去をもつ32歳独身女性が、ある画家を好きになります。この恋は成就しない、傷つきぼろぼろになるとわかるのに好きな気持ちがあふれてくる。その純粋な気持ちと、それがもたらす苦しみが女性視点で詳細に描かれています。好きな人と一緒にいたい、その強い気持ちに感情移入してしまう恋愛小説です。

女性の身体的特徴に固執する主人公の姉と、女性への変化にとまどう姪との3日間を記した小説。狂気なまでに女性的であろうとする母親と、女性的な身体への変化に混乱する娘が対照的に描かれます。姪が心中を語る場面では、母親を理解できずに混乱する姿が口語的な文体で描かれ、母娘の間にある悲しみと愛おしさが印象づけられます。