男と違う？女が罪を犯すとき・・・その裏に潜む心の闇をあぶり出す物語

息子に過剰な愛情を注ぐ静子は初夏のある日、彼の目の前である罪を犯してしまいます。圧倒的な筆力で執拗なまでに逐一描写される静子の表情の向こうに、彼女の深奥に潜む闇が浮かび上がります。静子が罪を犯したのは、母としての愛からだったのか？彼女の心の内を知りたくて、ページをめくる手が止まらなくなります。

主人公・啓子は1970年代、革命の名の下に仲間12人をリンチで殺害し、世間を震撼させた連合赤軍の兵士の1人でした。服役後、ひっそりと生きてきた彼女は連合赤軍を率いた永田洋子の獄中死をきっかけに自らの罪と向き合い・・・。女性視点で事件に切り込むことで、男女それぞれが抱えた闇とその相違が浮き上がってくる物語です。

主人公は17歳にして凄絶な美貌を持つ叶小夜子。名家である叶家の財産争いに利用されそうになりますが、彼女を陥れようとする男たちは次々と死を遂げ・・・。幼い頃から美しく、女だったがゆえに味わった辛苦を思うと、彼女にはこの生き方しかなかったのか・・・と、胸が締めつけられます。

服装、仕事、恋愛、結婚・・・すべてが無意識に値踏みされ、人間関係が左右されていく女同士のつき合い。そのなかで最も密なのが母親関係ともいえます。本書で描かれるのは、地方都市で誰かの娘のまま生きる女の息苦しさ。母を殺し逃亡したチエミの抱えた闇を、地元という呪縛から逃れた幼馴染みのみずほがひも解いていきます。

結婚詐欺の末、3人の男を殺害したという梶井真奈子。「ケアされたい」男たちの欲望を逆手に取って陥れ、欲望を叶えてきたはずの真奈子は取材に訪れた記者の里佳に、『女性の自立こそが女達を幸せから遠ざけるのだ』と自信たっぷりに言い放ちます。里佳は女性性に拘泥し、矛盾とウソに満ちた真奈子の核心に迫ろうとします。