ブックキュレーター小説家 若竹千佐子
東北弁で書かれた本たち。手に取ろう、声に出して読んでみよう。
東北弁は飾らない言葉です。正直な言葉です。力強い言葉です。すっとぼけたユーモアもあります。「つま先立づな、無理すんな、おめはおめのままで上等でねが」と言ってくれる言葉です。その東北弁で書かれた本を紹介します。声に出して読んでみると音楽が聞こえてくるから不思議です。
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晩年 改版
太宰 治(著)
「雀こ」(『晩年』所収)
太宰は反発嫌悪しながらも故郷のにぎやかな大家族のもとで生きたい人だったと思います。帰りたいのに帰れない寂しさが全ての作品の基調にあると思うのです。この作品を書いているとき太宰はきっとよだれを垂らしながら泣いています。 -
東北おんば訳石川啄木のうた
新井 高子(編著)
石川啄木の短歌を岩手のばっちゃんたちが訳した本です。これが文句なく面白いのです。
『ふるさどの山さ向がって 言うごだァねァ ふるさどの山ァ貴(とー)でァなぁ
人だればえっとう深(ふ)げァ悲すみァ これがぁ ふっと目(まなぐ)ばひっくったぁ』
訳す過程でのばっちゃんたちの様子も楽しいのです。 -
イエスの言葉 ケセン語訳
山浦 玄嗣(著)
ケセン語とは岩手県気仙地方、ちょうど陸前高田市周辺の言葉です。津波で流されても魂までは流されない。その心ひとつで聖書の言葉を訳したのです。もひとつピンとこなかった聖書が一気に具体性を持って目の前に迫ります。
『頼りなぐ、望みなぐ、心細い人ァ 幸せだ。神様の懐(ふとごろ)に抱がさんのァその人(ひ)達(たぢ)だ』
ブックキュレーター
小説家 若竹千佐子1954年、岩手県遠野市生まれ。岩手大学教育学部卒業後、臨時採用教員として働きながら教員採用試験を受けるが、毎年ことごとく失敗。落ち込む中で夫と出会い、結婚。30歳で上京し、息子と娘の二児に恵まれる。都心近郊の住宅地で子育てをしながら、深沢七郎、石牟礼道子、町田康、河合隼雄、上野千鶴子の本を愛読していた。55歳の時、夫が突然、脳梗塞で死去。悲しみに暮れ自宅に籠る日々を送っていると、息子から「どこにいても寂しいんだから、外に出たら」と小説講座を勧められ、通いはじめる。主婦業の傍ら『おらおらでひとりいぐも』を執筆し、2017年、第54回文藝賞を受賞しデビュー。翌年(2018年)1月、同作で第158回芥川賞を受賞する。
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