ブックキュレーター港の人 編集者 井上有紀
文系のための胞子入門
本も小説も大好きなのに、理系の言葉となると脳を素通りしてしまう、どうして?とおっしゃる文系人間の方々へ、科学界へのガイドとして胞子をおすすめします。目に見えぬ胞子によって命をつなぐものたちの存在は、とらえどころがないようでいて物語性に満ち、多くの文学的テーマをはらんでいます。文学と科学のあわい、胞子の世界へようこそ。
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たったひとつの冴えたやりかた
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア(著) , 浅倉 久志(訳)
SF名作のひとつに数えられるこの作品、胞子で増える不思議なエイリアンが登場します。このエイリアンはひとり宇宙を行く女の子コーティーの脳に寄生するのですが、ふたりは温かい友情で結ばれるようになります。勇敢で優しい性格、胞子の営みを見守る姿など、ナウシカともちょっと重なるコーティーです。
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昼の家、夜の家
オルガ・トカルチュク(著) , 小椋 彩(訳)
この小説をつくるのは、チェコとポーランドの境にある静かな町の日常を描く100以上の短いストーリーのかけらたち。そして、全体を通してキノコが重要なモチーフになっています。キノコは、現実と幻想、夢と記憶、生と死の間にいて両者をつなぐ存在。その存在感が旨味のようにしみこむ小説、しかもときどき、毒入りです。
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胞子文学名作選
永瀬 清子(ほか著) , 小川 洋子(ほか著) , 太宰 治(ほか著) , 田中 美穂(編)
コケ、シダ、カビ、キノコ、海藻など胞子で増えるものたちが登場する小説や詩を集めたアンソロジー。古書店店主であり苔研究家の編者は、前書きで胞子のことを「かすかでひそやかで、そして大胆不敵」と言います。作品ごとにデザインを変え、その不思議さと楽しさを余すところなく表現したブックデザインでも注目の本。
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元気なぬか床は、ほわっと温かく濃密な香りを放ちながら、めくるめる発酵の営みを教えてくれます。ぬか床から人が生まれるという突拍子もない話なのに、自分の内側深くを覗きこむような小説。粘菌、苔なども登場して、細胞ひとつひとつを見つめるようなミクロな視線で命の営みを物語に託す梨木香歩ならではの世界です。
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FUNGI 菌類小説選集 第1コロニー
オリン・グレイ(編) , シルヴィア・モレーノ=ガルシア(編) , 野村 芳夫(訳)
海外の作家たちによるキノコ小説のアンソロジー。SFホラーとファンタジーの風味が強めですが、すべての作品に菌類という存在がはらむ不思議さ、怪しさへの偏愛と執着がたっぷりと注ぎこまれています。なぜ人は、こんなにもキノコに魅きつけられるのかと思うころには菌糸に絡めとられている、とっても濃い小説集。
ブックキュレーター
港の人 編集者 井上有紀鎌倉の由比ガ浜にある出版社「港の人」勤務の編集者。手がけた本は、『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』(マーシャ・ブラウン)、『きのこ文学名作選』(飯沢耕太郎編)、『胞子文学名作選』(田中美穂編)、『世界 ポエマ・ナイヴネ』(チェスワフ・ミウォシュ)、『90度のまなざし』(合田佐和子)など。海を見ながら自転車で通勤する時間が、毎日のいちばんの贅沢です。本棚の隅っこにあるような本もふくめて、一冊一冊大切に紹介します。ホームページhttps://www.minatonohito.jp
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