まるで音が聴こえてくるかのよう！美しい音楽表現に心躍る本

ある事件で薬指を失ったピアニストの青年と両親を亡くした少女。やがて少女の音楽的才能を見いだした青年は、失ったものを補い合うように各地で演奏活動を行い始めます。そこで出会った女性と過ごす奇跡の四日間。ラストの演奏は終焉を迎える力強さと美しさにあふれ、強いカタルシスを伴った満足感が得られるでしょう。

『ポーの一族』の萩尾望都が描くSFファンタジーです。宇宙生命体と感応して感覚音楽を奏でるプレーヤーの演奏は、単なる「音」ではなく、聞く人に共鳴して怒りや喜び、禍々しさや神々しさすら表現します。決して現実世界にはないはずなのに、繊細な筆致で美しく描かれた絵の中から、たしかに音楽が感じられるから不思議です。

森に捨てられた、壊れて音の出ないピアノを弾き続ける少年・カイ。ただ楽しそうにピアノを弾く少年時代から、自分のピアノを模索しショパン・コンクールのコンテスタントとして演奏する青年時代まで、音楽の成長と変化まで伝わってきます。驚きのラストも素晴らしく、何度でも読み返し、聞き返したくなるコミックです。

ピアノコンクールを舞台に、コンテスタントや審査員、友人・家族などさまざまな人の「音楽」を表現した青春群像小説です。同じ課題曲でもそれぞれ解釈や表現方法が異なり、幾通りもの演奏が聞こえてきます。コンクールという性質上、最後は順位がつくのですがそれすらも清々しく、人生と音楽の豊かさを感じさせる傑作です。

将棋や落語、AIやアンドロイドなど、昭和と近未来をおもちゃ箱に突っ込んで、ジャズのリズムでひっくり返したような、にぎやかなエンタテインメント近未来小説です。ジャズピアニスト・木藤桐とアンドロイドの弾けるようなセッションの美しい描写もさることながら、物語全体もジャズのような軽妙さで心躍ること間違いなしです。