『人間失格』だけじゃない！太宰治のみずみずしい青春小説

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表題作は「健康道場」という結核療養所で療養中の青年が、友人に宛てた手紙という形式で進む小説です。ともすれば暗くなりそうなテーマですが、思いやりに満ちた人々との交流を糧に、病に負けず明るくのびやかに過ごす青年の様子がとてもさわやか。思い悩む手紙も初々しく、青春のみずみずしさに満ちた小説です。「正義と微笑」を併録。

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女性一人称を得意とする太宰作品の中でも出色の「女生徒」。読点を多くした細切れの文体は移り気な女生徒の気分そのものです。色んなことに興味があり不満がある女生徒の独白は、大人が読むとずいぶん可愛らしく感じられます。本書収録「恥」も青春の恥ずかしい思い出が描かれていて、思わず共感してしまう人も多いでしょう。

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美しい友情の物語として有名な「走れメロス」も、大人になってから読むと一味違います。ただ買い物に行くだけの町なのに義憤にかられて暴君に直談判に行くメロスは青臭く、身代わりを引き受けるセリヌンティウスも人がよすぎじゃないか、と心配になる人も多いことでしょう。夢見がちだからこそ美しい、ということなのかもしれません。

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表題作もおもしろいのですが、青春小説としては「親友交歓」「トカトントン」がオススメです。「親友交歓」は郷里に戻った「私」が押しかけ親友と酒を酌み交わす話で、友人の変節がほろ苦く感じられます。「トカトントン」は何かに挑戦しようとすると「トカトントン」という奇妙な音が聞こえてしまう青年の話。某作家の言葉が痛快です。

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少し変わったところでオススメは「乞食学生」です。小説家の「私」は醜作を書き上げた後悔から、家に帰る気力もなく川べりを歩いていると、ひょんなことで学生と出会い行動をともにすることに。若さゆえの無軌道な行動につられて、学生時代を取り戻すかのように見えたのですが・・・。過ぎてしまった青春時代に感傷を覚える1編です。