ブックキュレーター楽工社 営業部 長至巳
「一人ではBARに入れたことがない自分」の処方箋になるといいな!の5冊
五十路も半ばになるけれど、未だ自分は「大人」という種族になり得ていない、と自覚します。おそらく同世代の連中も概ねが同類のようであり、昨今「大人」というのは極めてフィクショナルな種族に思えてきました。齢は重ね、そこそこ酒は呑むけれど「大人」ではない。しかし読書の世界では様々な「酒を呑む大人」を垣間見ることが出来るのです。
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あぶさん 7 (ビッグコミックス)
水島 新司(著)
『ドカベン』信奉者だった小学六年の僕が思い切り背伸びして初購入した、水島新司の青年誌掲載作品。確かに野球マンガではあるけれど『少年チャンピオン』より明らかに深淵な主題を除き見た気分で熟読しました。何とも男臭い往年のパリーグの「野武士」どもが、人生の先達として若きあぶさんに酒場の哲学を語り聞かせます。
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酔っぱらい読本 正
吉行 淳之介(編)
選書の過程で、恥ずかしながらも初めてこの本の存在を知りました。なかなかに高額な文庫本なのに第三弾に至るまで巻を重ねたのは、この書名、この編者、さらには丸谷、埴谷、井伏、檀、志賀、室生、太宰、安岡などなどのツワモノ・クセモノが絢爛豪華に名を連ねたことで、既に「品質保証」が成立しているからなのでしょう。
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デス・アンド・コー モダンクラシック・カクテル
デビッド・カプラン(著) , ニック・フォーチャルド(著) , アレックス・デイ(著) , 岸 久(日本語版監修) , 二階堂 行彦(訳)
五十路半ばにして「大人」という種族になり得ぬ自分は、バーという空間に自らの意思で足を運んだことは一度たりともありません。地上で最も高嶺の花かも知れぬNYの超人気店の全エッセンスが詰まったこの書を読み耽ると、そういう自分すら全面的に受け容れてくれる場がデス・アンド・コーではないかと夢想してしまいます。
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コンチネンタル・オプの事件簿
ダシール・ハメット(著) , 小鷹 信光(編訳)
すみません、最後は現在品切中です。ダシール・ハメットのオプ・シリーズの短編集で、「オプ最後の事件」として収録された短編小説が『死の会社』。前述の書籍『デス・アンド・コー』のNYのバーの店名の由来がこの『死の会社』であり、ハメットには映画化された『影なき男』というカクテルにまつわる傑作小説もあります。
ブックキュレーター
楽工社 営業部 長至巳1963年生まれ。出版と書店に関わる仕事を始めて四半世紀を超えました。ちょっと長い無職期間を抜け出し昨春(2017年)より業界復帰、現在は飲食に関わる翻訳書の出版社に勤めております。出身が茨城県で、大学が京都市で、地方出張も多い仕事のおかげで、日本の中で未踏の都道府県は宮崎県のみになりました。好きな作家・山田風太郎。別名で『1985』という小説を上梓したことがあります。あの『1Q84』より10年前に。
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