人の残酷さとやさしさを巧みに描く多彩な作家。はじめての向田邦子

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人間の深みをえぐり出すミステリー仕立ての「かわうそ」をはじめ、無駄のない描写で心の闇を描き出す味わい深いお話がそろった短編集です。状況や心情を巧みに比喩するかのようなソーダ水やピンポン玉、林檎など小道具の使いかたの秀逸さにも、「さすが名脚本家！」とシビレるはずです。

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晩年のエッセイ集です。いかにして向田邦子が向田邦子になったかを示しているかのような「手袋をさがす」は、人生の岐路に立つ人の心の支えとなるでしょう。脚本や小説のヒントになったであろう逸話あり、そのまま作ってみたくなるレシピあり、人間観察眼の鋭さが伺える人物評ありの、贅沢な一冊です。

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多彩な人と見える著者が同じく多彩なレオナルド・ダ・ヴィンチへの嫌悪を表明したかと思えば、一番でなければ気が済まない姿勢に疑いを差しはさんでみせます。『女が地図を描けないということは、女は戦争が出来ないということである』と、価値を転換する視点は頼もしく、歯切れのよさも爽快なエッセイ集です。

向田邦子の得意料理を多数のレシピを妹の和子氏が再現し、写真とともに紹介した一冊です。食に限らず単行本では読めないエッセイや向田邦子についてのコメントも多数盛り込まれ、彼女の人となりがはっきりと浮び上がってきます。板前さんになりたかったというだけあって食にまつわる向田邦子のうんちくぶりには、舌を巻くこと請け合いです。

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一筋縄ではいかない人生の綾を巧みに描いた短編集です。悪気はなくても人は人を傷つけたり、求めて得られぬ幸福が思いがけなく手に入ったりと、日常に根差した波乱万丈なストーリーには、ハッピーエンドとは言い難いのに不思議と爽やかな読後感があります。まさに向田マジックです。