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私的な話題から「社会」を浮き彫りに。はじめてのJ・M・クッツェー
南アフリカ出身のノーベル賞作家、J・M・クッツェーの小説と人物像を知るのにオススメの本をセレクトしました。よく練られた構成の小説には社会構造が投影され、新たな視野と教訓にも満ちていて、読者は共感以上のものを得られるでしょう。個人的かつ身近な視点から、集団や社会、常識がはらむ歪みをありありと描き出しています。
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遅い男
J.M.クッツェー(著) , 鴻巣 友季子(訳)
自転車事故で片足を失った男が夫と子どものいる介護士に恋をする物語です。何の希望も見いだせない状況に一筋の光が差したかと思いきや・・・という展開は、多かれ少なかれ誰もが身に覚えがあるでしょう。比較的身近な題材で、ぐいぐいと惹きつけられる小説です。
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マイケル・K
J.M.クッツェー(作) , くぼた のぞみ(訳)
障害を持ち神に見放されたかのような運命をたどる主人公が、紛争が頻発する土地で自由をつかもうと自然体で挑み続けます。社会の動きに翻弄されながらも大地の恩恵をどっぷり受けて生き延びる主人公のしぶとさから、人は社会的な存在である前に、野生に生きる生命体であるという単純な事実に気づかされます。不思議な崇高さの漂う傑作です。
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夷狄を待ちながら
J.M.クッツェー(著) , 土岐 恒二(訳)
辺境の町で民政官を務める初老の男のもとに、治安警察の大佐がやって来るところから物語が始まります。「夷狄」と呼ばれる遊牧民が攻めてくるという噂、夷狄と通じていると疑われ拷問にかけられる主人公・・・。不当な状況に置かれても最後まで正気を保ち続ける主人公の思考に、切なくも励まされるはずです。
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ヒア・アンド・ナウ 往復書簡2008−2011
ポール・オースター(著) , J.M.クッツェー(著) , くぼた のぞみ(訳) , 山崎 暁子(訳)
ポール・オースターとクッツェーの往復書簡集です。世界的な人気作家のふたりがどのような態度と姿勢で世の中を眺め、小説を捜索しているのかを覗き見ることができます。両者に共通する小説に対する真摯さだけでなく、意見の食い違いからも両者の思想は鮮明に明かされており、発見の多い贅沢な一冊です。
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