森見登美彦ワールドに浸れる本～入門編～

第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した森見登美彦のデビュー作。振られた彼女を追いかける主人公の独りよがりな思考や行動にもどかしさを感じながらも、節々に現れるまじめさ、おちゃめさにくすっと笑ってしまうこと間違いなし。森見ワールドに興味を持った方へ、まずオススメしたい一冊です。

『太陽の塔』が気に入った方に読んでもらいたいのが本書です。設定は『太陽の塔』と似ているもののこちらは四部構成になっており、主人公がもしも別の選択をしていたら、という並行世界を描いています。流れるような美しい文章とともに濃厚な森見ワールドに浸れるはずです。

森見作品に多く共通していたテーマ「不毛な恋愛」や「青春」にファンタジーの要素が加わった本作は、100万部を超えるベストセラーとなりました。思いもよらない奇妙な世界に足を踏み入れていく主人公「先輩」と、凛とした態度でそれに向き合っていく黒髪の乙女。個性が豊かすぎる登場人物たちにも注目です。

本作の主人公は京都の糺の森に住む狸の四兄弟の三男・下鴨矢三郎。狸が主人公？と驚く方も多いかもしれませんが、化け力を活かして人間に変身し、京の街で展開する疾走感あふれるストーリーは圧巻です。笑えて肩の力が抜けるとともに、読み終えた後は爽快感でいっぱいになるでしょう。

著者がこれまでにさまざまな媒体で書いてきた文章をまとめたエッセイ集です。しばらく小説が書けなくなった日々のことや、デビュー当時の日記などが森見節で淡々と、ときにチャーミングに描かれています。森見作品の世界からにじみ出るまじめさ、滑稽さ、愛おしさの源をきっと感じられるはずです。