長崎の歴史が沁み入る物語。はじめての青来有一

釘、石、虫、蜜、貝、鳥という漢字一文字をタイトルにした連作短編集です。6作品それぞれまったく異なるストーリーでありながら、どの作品にも被爆の歴史が組み込まれています。著者の他の作品を読み解くヒントにもなる、宝石箱のような一冊です。

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先輩小説家との対話や作品から、小説それ自体のあり方について主人公が思考を深める２編を収録した作品集です。戦争を体験しない戦争文学、売れる小説と売れない小説といった、小説好きにとって興味深いテーマが語られています。実在の小説家たちによる重い言葉にはギクリとさせられます。

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著者が敬愛する長崎出身の作家・林京子との交流と思いを描いた「愛撫、不和、和解、愛撫の日々」と、父親の死を通じて人間の生々しい暮らしを描き出した表題作の2編を収録。言葉を発すること、生きることの意味など、哲学的な思索が詰まっています。重い過去を乗り越えるための光を与えてくれるような物語です。

「てれんぱれんさん」が見える世界とそうでない世界の間を乗り越えてゆく、長崎を舞台にした物語です。「てれんぱれん」は、ぶらぶらとなまけている人を非難するときによく使われるという九州の北の方で使われる方言です。不登校の少年を通じ、過去と未来、死と生が入り混じる幻想的な小説です。

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戦場カメラマンの夫を持つ妻の視点から書かれた「人間のしわざ」、妻の不貞を知りつつ遠い地で仕事を続ける夫の視点から書かれた「神のみわざ」の二本立てで、仕事、家庭、宗教など読み手にも姿勢を問いかけるような一冊です。神と人間の関係、引きこもった息子との関係も読みどころです。